79 副将戦
「お疲れ、照夫」
「おう太郎、勝ったぜ」
パシッ!
中堅戦を勝利して帰ってくる照夫を砦の門の下で迎える、そして俺と照夫は小気味良い音を立ててハイタッチを交わした。
ここまで三戦、二勝一敗か、、次勝てば勝ち越し決定だな、、
そんなことを考えていたら、、
敵陣から一人の獣人が走り出してきた。焦げ茶色の犬の獣人の青年だ。首には奴隷の証である鉄の輪、手には粗末な一本の棒、あれはサビでボロボロになった剣か? 上半身は鎧もつけず裸だ、そして腰には、、、ラワ草で雑に作った腰蓑のようなものをつけていて必死の形相でこちらへと走ってくる。次の対戦相手かと思ったら様子がおかしい、、
一体なんだ?
訝しんでいると、こちらからも幹宏が俺の脇を抜け、180cmの大柄な体をかがめて敵陣に向けて猛然と走り出した。
おいおい、まだ副将決めてねーぞ、、
パンッ!
「はあっ!!」
腰蓑をつけた獣人の青年が50mほど走った所で、敵陣から一騎の騎馬が鞭を入れ、駆け出した!
ヤロウ!!! そういうことか!!
ドンッ!!
俺も一気に朱雀の翼を広げて砦の門を飛び出す!
低空飛行で幹宏を追い越し、獣人の元へと飛ぶ!
だが、くっ、なんだあの馬! 早い! 後方に青い光を放ちながらロケットのように突っ込んでくる!
クソ! 間に合え!!
「う、うわぁぁあああ!!」
獣人の青年は必死に走るが、その後ろにはもう騎馬が迫って来ていた。走りながら肩越しに後ろを見て恐怖の表情を浮かべる。
「やめろぉお!」
俺の叫び声が聞こえたのか、チラリとこちらを見た後、ギリシャ彫刻のように整った白い顔を醜く歪めて笑う騎士。
ザシュッ、、、
「あが、ぁ」
奴の真っ赤な槍が瞬時に伸び、10メートルほど離れた青年の胸を背後から貫いた!
ボウッ!
「ガヒュッ、ウ、、」
背中から胸に突き抜けた槍から炎が吹き出す! そして奴は槍を横へ降り、獣人の青年を俺へと投げつけた。すかさず抱きとめたが、、すでに青年の息は無かった。
「くっ! 『救急救命』!!」
獣人の青年を地面に寝かせて彼の胸に両手のひらを当ててスキルを発動!
光の柱が立ち上り、空に白い魔法陣が現れる!!
「ほう、」
馬上から感心したようにこちらを見る騎士、だが、、それよりも、、クソっ、魔法陣が霧散する!
ダメだ、、内臓が焼かれてしまっている、、
蘇生できねぇ、、
「うぉぉぉおおおお!!」
ガキィィイイン!!
俺の後ろで幹宏が大剣で騎士に切り掛かった! 幹宏の大剣をいとも簡単に槍ではじく騎士、
赤い槍を携え、幹宏以上に大柄で堂々とした体躯に白銀の鎧を纏い、白馬の上にまたがった真っ白な肌の金髪の男、、
こいつがシュルマイアーか!
このやろう、俺への当てつけに、奴隷に腰蓑をつけさせ、逃げる所を刺し殺しやがった!
ダンダンダダン!!
「「「シュルマイアー!!」」」
ダンダンダダン!!
「「「シュルマイアー!!」」」
ダンダンダダン!!
「「「シュルマイアー!!」」」
ダンダンダダン……
シュルマイアーが青年を突き刺したところでサウザーラ軍からワッと歓声が上がり、その後、太鼓や盾を叩く音に続いて数万の兵による『シュルマイアー』コールが戦場を震わせ続ける。
……ウルセェよ、、、
どいつもこいつもクソ野郎どもが!!
シュルマイアーの正面では一合を交わした幹宏が大剣を前に突き出すようにして構えていた。
「コンのクソ外道がぁぁぁあああ!!」
息絶えた青年の治療を諦め、シュルマイアーへと振り返った俺は叫んでいた。
「太郎、こいつだけは俺にやらせてくれ。頼む、先に戦場に出たのは俺だ! そうだろ?!」
油断なく大剣を構えたまま、後ろにいる俺に肩越しに訴えかける幹宏、
こいつ、、
「幹宏!」
「おうっ!」
「家臣への最初の命令だ!
そのド外道、きっちりブッ殺せ!!」
「御意っ!!」
◇◆◇◆◇
「仕方がない、殿下の好きなようにさせるか、、」
サウザーラ軍のテントの中で、マクダイン将軍は顔をしかめながら、戦場のシュルマイアーを見つめていた。大将として出てもらおうと考えていたが、2敗した時点で、
「ドライダーが負けた今、次を確実に任せられる者が居るのか! 負けが決まった大将戦の消化試合を私にさせるつもりか!」
と言って飛び出していったのだ。
「あの殿下が負けることなど考えにくいが、、」
マクダインは珍しく弱気になっていた。
◇◆◇◆◇
「フン、、そっちのハネの生えた黒い鎧の男の方が楽しめそうだったのだがな、、
仕方あるまい、蛮族の戦士よ、このシュルマイアーが相手をしてやろう」
「澤田幹宏! テメェをぶっ殺す男の名だ! アドリアさん達の仇、討たせてもらう!!」
「フン、、駆けろ! シルフェール!」
『ヒヒィーン!!』
シュルマイアーの掛け声で白馬が駆け出し、幹宏から離れていく、そして十分距離を取ったところでUターンをして幹宏に正対すると、、
ゴウッ!
白馬の尻の左右と上に付いている四角い金属製の箱から青白い光が後方へと吹き出し、ロケットのように突っ込んで来る! サウザーラの次鋒ツバイルの背中に付いていたスラスターと同じ機構の物だ! ただし大きさも出力もこちらの方がはるかに上だ。
「オオオォォラァアッ!!」
突っ込んで来る騎馬に対し、2メートルはある大剣を横薙ぎに振る幹宏。
ガァギィインン、、、
戦場に不快な金属の衝突音が響き渡る!
シュルマイアーはあのすれ違いの一瞬に三度の突きを放っていた。幹宏は、1つは躱し1つは剣で弾いたが、、
「ぐっ、、」
膝をがくりとさせる
「まずは片足、、」
ニヤリと笑ったシュルマイアーの目には、、筋肉が大きく抉られ、流血する幹宏の太い右足が映っていた。
ダンダンダダン!!
「「「シュルマイアー!!」」」
ダンダンダダン!!
「「「シュルマイアー!!」」」
ダンダンダダン、、、
サウザーラ軍によるシュルマイアーコールはより大きくなり、戦場を震わせ続けていた。
ミキヒロ サワダ
レベル55
職業:狂戦の勇者
HP:3046/3258
MP:753/753
攻撃:S
防御:A
魔力:D
素早さ:C
ユニーク武器:狂戦士の大剣+(プラス)
スキル:鑑定C 狂戦士化 大剣術 風魔法D 氷魔法C
狂戦士の大剣:
持ち主の意思により、ある程度大きさや長さが変化する大剣。持ち主の狂気を反映し、禍々しく形を変えることがある。
お読みいただきありがとうございます。




