76 次鋒戦
砦の門を飛び出し、炎の球を10個単位でグルグル回して炎の輪を作り、さらにその輪を4つ体の周りに展開する浩二。
「ヒャッハーー! 前座、ご苦労! 俺の出番だぁー!」
「浩二、、後でぶっ飛ばす、、」
咲夜の呟きに、身震いするラフェリア陣営の面々、、彼らは勝っても負けても浩二の未来は決まったことを確信していた。
◇◆◇◆◇
白いテントの中では、シュルマイアーとマクダイン将軍が目を細めて戦場の浩二を見ていた。
「ほう、敵は魔法使いですか」
「フン、かなりの使い手であろうが、、先に自分の手の内をみせるとはアホウが! ツバイル卿! 行けるか?」
テントの前に控えている大きな盾を持った兵士に、マクダイン将軍が声を掛ける。
「もちろんじゃとも! マクダイン将軍!」
「初戦は落としてしまったが、彼奴らを調子づかせるわけにはいかぬ! 幸い相手は手の内を見せるアホウだ! 其方の力、存分に発揮して来い!」
「ははっ!!」
◇◆◇◆◇
「ガッハッハ、待たせた! 威勢がいいな、魔法使いよ! 我が名はツバイル! かかってこい!!」
奇妙な模様で覆われた全身鎧と、これまた見たこともない複雑な模様で覆われた大きなタワーシールドを持つがっしりとした体型の背の低い老人が浩二の前に現れた。
「は、ジジイ! 3秒でおわらせてやんよォ!」
ヒュボボボボボボ!!!
浩二がツバイルを指さすと、浩二の周りで回っていた炎の輪からガトリング砲のように炎の玉が飛び出す! 空中を走る幾筋もの赤い光!
ズドドドドドドドド!!
炎の玉はタワーシールドを構えるツバイルの元へとまっすぐに飛んでいき、次々と着弾、あっという間に土煙に覆われ、ツバイルの姿が見えなくなる!
「ヒャッハァー! まだまだぁ!」
さらに両脇に炎の輪を追加し、打ち続ける浩二、十数秒間の斉射の後、、
「ふう、やった、k?!」
ボフゥッ!!
浩二が言い終わらないうちに土煙の中から飛び出してくるツバイル!
「はぁぁあああ!」
ツバイルの鎧の背中には、四角い穴が二つ付いており、そこから青白い光を後ろに噴射して前方へと飛んできた! そしてハンマーを右肩へと振りかぶる!
「!! 『アイスシールド』!」
眼前に氷の壁を即座に展開する浩二!
「フンッ!!」
バギャァァアアン!!
「ぐわっ!!」
ツバイルのハンマーはやすやすと氷の壁を破壊し、浩二を吹き飛ばした!
「フン、ワシの盾は魔法による攻撃を無効化し、ワシのハンマーは魔法防御を吹き飛ばす! 『マジシャンズキラーのツバイル』とはワシの事よ! 氷の壁も魔力で強化しておったようじゃが、ワシにとってみればただの氷の板にすぎん!」
「ぐっ、、」
浩二はぼたぼたと鼻血を出しながら立ち上がった。
「ごんのヤロ”ォ! 『ア”イズジャベリン』!!」
そして頭上に直径3メートル、長さ10メートルほどの特大の氷の槍を作り出して、
「じねぇ!! づぶれろぉ!!」
ツバイルへとまっすぐ発射した!
「ふん、さすがに避けるわい」
またもや背中のスラスターから青白い光を噴射して、巨大な氷の槍を避けるツバイル、そしてその軌道を浩二の方へと変え突っ込む!
バギャン!!
ツバイルのハンマーを喰らい、地面をバウンドしながら飛んでいく浩二、
そして、、倒れた浩二にトドメを刺すべく、再度背中のスラスターを全開にしてツバイルが走る!
「どおおぉぉりゃあああ!」
青い光を纏って大上段から振り下ろされるハンマー!
ドッガァァアアア!
凄まじい破壊音が鳴り響き、衝撃波が円状に広がる! 巻き上がる土煙!
数秒後、土煙が収まり、中から現れたのは、、浩二の手前に立ち、ツバイルのハンマーを片手で受け止めている太郎の姿だった。
「あー、悪いね、うちの浩二、もう気絶してるしこっちの負けという事で引いてもらえんかね? サウザーラのツバイルさん」
「……キサマ、一騎打ちの邪魔をしおって、、何もんじゃ?」
ハンマーを下ろそうと、ギリギリと両手に力を入れるが、、片手で抑えられているハンマーのヘッドはびくともしない。
「おれはタロー・タナカ、ラフェリアの主だ」
「!! キサマが! …腰ミノなぞ付けておらんのォ、、」
「まあ、戦場だしな。鎧をつけることもあるさ。で、あんたの勝ちってことで引いてくれないかな? 頼むよ」
「キサマの頼みを聞いて、ワシになんの益がある?」
「…そうだな、、一騎打ちが終わったら、俺がサウザーラ軍を壊滅させる予定だが、あんたを見かけたら見逃してやろう」
太郎の言葉と共に発せられた強烈な殺気に目を大きく見開くツバイル、太郎に片手で掴まれている特殊金属でできたハンマーのヘッドが、ぐにゃりと歪み始める。
「…断れば?」
「一騎打ちを反故にして、今から皆殺す」
太郎から膨れ上がる気配に戦慄するツバイル
「…本気のようじゃな、、わかった、退こう」
「ありがとう、感謝するよ、ツバイルさん、じゃあこいつは俺が連れて行くね」
そう言って太郎は、左手のスコップを右手に持ち替え、空いた左手で浩二をひょいと抱えた。
「フ、ン、、化け物じゃな、、」
ヘッドが手の形に歪んだハンマーを肩に担ぎ、サウザーラの陣へと引き上げるツバイル、彼の鎧の内側は冷たい汗でぐっしょりと濡れていた。
「マクダイン将軍、勝ったぞ」
「おお! 流石は歴戦の英雄、ツバイル卿!! 敵の魔法使いもかなりの者だったようだが流石だ! この後の我が軍に与える損害を考えれば、ツバイル卿があ奴を倒してくれた功績は大きい! ガハハ!」
「ツバイル卿、して、途中の乱入者は何者ですかな?」
目を細めてツバイルを見下ろすシュルマイアー
「シュルマイアー殿下、、あ奴が『腰ミノの悪魔』らしい、『ラフェリアの主』と言っておった」
「ほお!! して、ツバイル卿は何を話されておったのかな?」
「魔術師の命乞いをされてな、、そのまま渡してきたわい」
「む、敵の言いなりになったと?」
「ワシは言いなりになったわけではない、敵の大将が負けを認めたのじゃ。殺したいならこの後の合戦で殺せばよかろう」
「うむ、ツバイル卿の一勝は大きい、一騎打ちをスムーズに進めるためにもその判断は良かろうて! ガッハッハ!」
「そうですな。『腰ミノの悪魔』の首を残しておいてくれたことに感謝すべきですかな、はっはっは」
(あのバケモノの首を獲る? 冗談じゃない、、ワシの一族郎党をどう救うべきか、本気で考えねばなるまい。ここで貸しを作ったことが良い目に出ると良いのじゃが、、、)
ツバイルの冷や汗はまだ止まらなかった。
◇◆◇◆◇
「こんの馬鹿浩二! 飛び出した挙句に負けてきて!」
砦の門の内側に入ると、みんながすっ飛んできて、花蓮が罵声をあびせた。
「ま、まだ気絶してるから説教は後でな、、」
そう言って俺が浩二をそっと地面に下ろすと、花蓮と咲夜が浩二の黒いローブの裾に手をかけ、スパーーンと頭の方へとまくり上げる!
ゴスッと音を立てて地面に落ちる浩二の頭、そしてタテジマのトランクス一丁に、、
「お、おまえら、もうちょっと優しくだな、、」
「だーいじょうぶ! 白のローブはHP自動回復付きだから!」
そう言って黒から裏返して白にしたローブを頭から浩二に着せる花蓮
「あとで折檻だな、、」
咲夜のつぶやきに浩二が一瞬ビクッとしたように見えたのは気のせいだろうか、、
◇◆◇◆◇
一方その頃、雫たちが守るラフェリア城では、、、
「師団長、全軍配置に着きましたぜ!!」
「うっし、じゃあ始めっか! サウザーラ軍第6師団! 暴れまわれ!」
「「「ウォォォオオオ!!!」」」
サウザーラ軍の別動隊である第6師団が、ラフェリア城に対する攻城戦を開始していた!!
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