73 討伐軍
「なんだ! あの文字は!」
城壁いっぱいに書かれた馬鹿でかい『ラフェリア軍 サウザーラ攻略基地』の文字を見て叫ぶシュルマイアー
「バカな! 昨日まではあんな文字はなかったぞ!」
「一晩であれだけの文字を書くとは!」
実際には太郎がサラサラっと壁の表面をスコップで撫でて数分で書いた文字を見て驚愕するサウザーラの兵士たち。
「爺、昨日入った部隊は?」
「誰一人、帰ってきておりません」
「…そうか、、全滅したか」
そこへ、ビュオオオ、と遠くから風切り音が聞こえてきた。
「?」
シュルマイアーが音のする方へと目線を上げると、、
「なっ!!」
ズドドドドォーン!!
ひと抱えほどもある大きさの石が、何十、何百と飛んできて陣地の手前に着弾した!!
「投石機だと!!」
「殿下! お下がりください!」
「くっ、全軍急いで200メルタ後退しろ! 物資の回収はしなくていい!」
「「「ははっ!!」」」
◇◆◇◆◇
バッ、ババッ、バッ!
塔の5階の窓から、芝犬獣人の少年シウバが両手に握った赤と白の旗を振る。
俺は城壁の内側にいて、敵陣が見えないから、高いところにいるシウバに観測をしてもらっていた。
『ツギ、100メルタ、サキ』
よしわかった、シウバに手を降った後、再度構えて、、てぇりゃ!
10mほどに伸ばしたスコップを、後方から上へ振り上げながら『ネコ』から数トンの土砂を出して真上で止める!
ビュオオオオ!!
数秒たってから、ズドドドドド、と着弾音が聞こえた。
バッ、ババッ!
『メイチュウ、パニック』
よし、これでサウザーラ軍が集まってくるだろう。
◇◆◇◆◇
ズドドドド、、
広範囲に広がった土砂が、サウザーラ軍迷宮攻略隊の上へと降り注ぐ!
「ぐわっ!」「いてぇ、いてーよー」
土煙の中、運悪く石が当たったり土砂に押しつぶされた兵士が悲鳴をあげる。
「うわああ! うわああ!」
土煙の中を喚きながら逃げ惑う兵士たち。
やがて土煙が収まり、破壊された陣地の惨状があらわになった。
「…奴隷兵に命じて、負傷者と物資の回収を行わせろ」
シュルマイアーは被害にあうことなく後退し、丘の上から先ほどまで陣地があった地点を睨んで、兵達に命令していた。
「「ははっ!!」」
シュルマイアーに命じられ、機敏に動く兵士たち。やがて、命令された奴隷兵達がノロノロと旧陣地へと入り、救助活動を始める。
「おのれ、蛮族め、、爺、敵の戦力をどう見る?」
「そうですな、、あれだけの大型投石機を動かすには50名は必要ですな。それが2機、周りの兵も考えると一個大隊の数百名はいるかと、」
「やつら全軍で出てきたか。あの『基地』とやらに籠られると、『攻撃3倍の法則』以上の比率になりそうだな、、厄介な、」
「はい、ここは陛下に上奏し、圧倒的な兵力で潰すのが良いかと」
「そうだな、テルジール!!」
「はっ!」
シュルマイアーのもとへ赤い髪の細面の騎士が走り寄ってきて跪く。
「王都へ走り、次のように上奏せよ! 白い塔と壁は蛮族の砦であった! 大型の投石機を複数持って王都を狙っており、これに当たった当攻略隊の被害は甚大! 王都周辺の全軍を可及的速やかに動員し討伐すべし!」
「はっ!!」
テルジールは愛馬にまたがり鞭を入れ、王都へと走りだした。
シュルマイアーは眉間にしわを寄せ、白い塔を睨みつける。
「蛮族め、、わざわざサウザーラまでやってくるとは手間が省ける。叩き潰してやるわ!」
◇◆◇◆◇
2日後、、
「第五師団、敵砦の背面に布陣完了しました!」
一人の兵士が大型のテントに駆け込み、入り口で跪いて報告をしていた。
「これで全ての師団の布陣が完了いたしましたな、シュルマイアー殿下」
「マクダイン大将軍閣下、流石です、わずか2日での6万の兵の動員、そしてこの完璧な布陣、蛮族どもはもはや袋の中のネズミ、一匹たりとも逃れることは叶いますまい」
現在、太郎たちの籠る『ラフェリア軍 サウザーラ攻略基地』の周りはサウザーラ王国の誇る5個師団に包囲されていた。
「なんの、私ごときなど、魔槍『アミー』を使いこなす英雄シュルマイアー殿下に比べれば、ただの老兵に過ぎませぬ、ガッハッハッ!」
傷だらけの顔で大きく口を開いて笑う大将軍と呼ばれた白髪白髭の大柄な老人。2mを超える大きな体は、金銀が煌めく豪華な装飾が施された分厚いプレートメイルに覆われており、背にはビロードの真っ赤なマントを羽織っていた。
「では、次の手ですが、大将軍に進言したき事があります」
「何ですかな? 殿下、これだけの兵力差、いかな作戦でも遂行できますぞ」
「ひと思いに全軍でもみつぶしてしまうのも良いですが、それでは面白くない。奴らの中にも腕が立つ者がいるようだ、サウザーラの戦士達との一騎打ちをさせていただきたい」
「なんと! 流石はサウザーラ1の勇者、シュルマイアー殿下! 蛮族相手にも正々堂々と戦われようとは!」
「今まで煮え湯を飲まされ続けた『腰ミノの悪魔』 奴らの散り際をしっかり見るためでもありますがね」
シュルマイアーが顔を歪めて笑う。
「ハッハッハ! それは良いですな。後で物言わぬ首だけ届けられ、それを眺めるのもつまらんですからな。やはり戦士は動かぬ首だけよりも戦っている姿を見るのが一番ですわ、ガッハッハ!」
「流石一兵卒から武勲で大将軍の地位まで上り詰められたマクダイン大将軍です」
「ガッハッハ! クルークよ!」
「はい、大将軍閣下」
テントの中で、脇に控えていた文官の中から、一人の男が一歩前に出て返事をする。
「おぬしは腰ミノの悪魔のもとへ一度言ったことがあると聞くが?」
「はい、うわさ通り腰ミノ一枚を身に着け、後は素っ裸の男でした。言葉使いや振る舞いも粗雑極まりなく、まさに蛮族と呼ぶにふさわしい男でした」
「そうかそうか、それはなかなか骨がありそうだな。して、今一度奴の元へ行ってまいれ。双方の軍より戦士を出しての一騎打ちをやらないかと。代表の戦士の人数は、、そうだな5名でどうだ? シュルマイアー殿下?」
「いいですな。わが軍は優秀な騎士が多いので5名を選抜するのに苦労しそうですよ」
「ハッハッハ、では軍使として行ってまいれ! クルークよ!」
「はは!」
赤いジャケットに白いズボンといった、武器も鎧もつけない戦場に似つかわしくない格好のクルークはサウザーラ軍の陣地内の自分のテントへと入り、使いのための準備を進めていた。
「さて、あの蛮族と再び会うことになるのか、、おい、ミュリスとリューア! わしについてこい!」
「は、はい! クルーク様」「…仕事か?」
「ああそうだ、仕事だ! これから軍使として『腰ミノの悪魔』の元へ行く!
ミュリス、お前はどんな高レベルの相手でも鑑定できる『精霊眼』を持っていたな! 『腰ミノの悪魔』を鑑定しろ!
リューア! お前は俺の護衛だ。万一の時はその『アサシン』の技術で『腰ミノの悪魔』を暗殺しろ! 合図はこの帽子を手に持ちかえ地面に落とした時、だ」
「は、はい!! がんばります!」「…やれやれ、暗殺の報酬は金貨100枚でお願いしますよ」
「わかっとる!」
こうしてサウザーラの軍使、クルーク・ルノ・ゲーヒは、精霊眼を持つ薄い水色のローブを着た青年と、暗殺者であるこげ茶色のぶ厚いローブを着た小男を連れ、3人で白い城壁の門をくぐっていった。
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