56 四神降臨
実りの季節の昼と夜の長さが同じになる日、ラフェリアの城内に朝日が差し込んでくる。
みんなで準備を進め、待ちに待った、祭りの日が来た!
この日、城内北側に建てられた四神神社の周りには、ラフェリアに住む千人余りの人たちが早くから集まっていた。
エルフの一団は綺麗に2列で並び、片膝をつき、こうべを垂れている。小さな子供たちまで徹底してビシッと座らせるところは相変わらずだな。もっと緩くてもいいと思うんだけど。
ドワーフとホビットの一団は正方形のような形で並び、右足を前に出してあぐらをかく立膝の座り方で頭を下げている、サムライっぽい座り方だな。
獣人達はというと、一般の家族達は特にまとまった様子はなく、種族もバラバラに混じり合って思い思いに座っている。
中には正座を崩した斜め座りのお母さんと抱きつく子供たちも見えた。うん、ほほえましくっていい。そこだけ見るとピクニックみたいだ。役がある一部の者達以外には、特にかしこまらなくていいと言っておいたしね。
「さ、行こうか、雫」
「はい、太郎さん」
白いビルのような建物をでて、四神神社へと続く石畳で舗装された短い道を雫と二人で静々と歩く。
俺はあいも変わらずのスコップを背負った腰ミノ一丁の姿、
だって玄武様がこれでいいと言ったし!
いつもと違うのは、緑の大きな葉を沢山つけた枝を一振り、両手で恭しく持って歩く。
雫は玄武様の加護を受けた黒いメイド服姿だ。今日は一段と綺麗だと思ったら、いつもより5割増しぐらいで金色の光の粉が舞っている。座っている獣人の子供達が大きく口を開けながら雫を見上げて、「うわぁ〜」「しずくさま、きれ〜」と口にしていた。
鳥居をくぐり、神社の中へと入る。そして、深く一礼し緑の葉がついた枝を振る。
「東の青龍様、南の朱雀様、西の白虎様、北の玄武様、ここ、ラフェリアの地に四神神社を建立させていただきました事、誠に有難うございます。どうか、どうかこの地と住まう者達を末永くお守りくださいませ」
祝詞は自分の思うままに述べよと言われたため、簡潔に、真心を込めて言葉を紡ぎ、雫と二人、腰を90度に曲げて拝礼をする。
すると、、、神社の中より五色の光が溢れ、神々しい気が辺り一面に広がる!
社殿の中に圧倒的な存在感をもった何かが複数現れるのを感じた。
「おお、、久方ぶりの現世じゃ、なんと良き日か、妾は感無量であるぞ」
「朱雀ぅ〜、相変わらず固いね〜、でもお久〜」
「うむ、朱雀に白虎よ、ここが我らの神社じゃ、そしてそこにおるのが、我らの神官と巫女じゃ」
「太郎! 大義である!」
神社より神々しい光と波動が広がっていく!
神社の内側は、御簾越しに見ることになり外からはよく見えないはずだが、みんなにも四神が降臨されたことがわかるみたいだ。
ラフェリアの人たちは、
「「「ははぁー!!」」」
と傅く者達と
「「「うわぁ〜」」」
と感嘆の声を上げて社を見上げる者達に別れた。
「玄武様、今日までこの地をお守りいただきましたこと、誠に感謝致します。青龍様、先日はご助力いただきましたこと、誠に感謝致します。そして朱雀様、白虎様、本日お迎え出来ましたこと、誠に嬉しく思っております」
「ふぉっ、ふぉっ、よくぞこの地をここまで切り開いた、見事じゃぞ、太郎」
玄武様が笑いながら褒めてくださる。
「うむ! 良いぞ太郎! 立派な社殿に多くの信者、大義である!!」
ビカビカバッシャーーン!!!
…晴天なのにすごい雷が鳴ってるよ、、
みんなビビってるし、もちっと手加減してくんないかな? 青龍様?
「ふむ、そなたが神官の太郎か、いい男ではないか」
真っ赤な羽飾りの衣装を着た長身の美女が、細い指をこちらに差し出しながら微笑む。うん、年末の歌合戦に出てくるような衣装だな、、ちょっと派手な感じのこれが朱雀様か。
「おっ、お前が太郎か! 爺やが世話になってんな!」
爺やって、、玄武様の事だろうな。
白い耳をピョコピョコさせながら、俺の胸ほどの身長の少女がピンクの肉球のついた手を振りながら挨拶をしてくる。白地に黒のタイガーストライプが入った着物と袴を着た小さな少女だが、、青龍様に勝るとも劣らない強力な波動を感じる、、白虎様か。
「いえ、私どもの方こそ玄武様、青龍様に守られてばかりです」
「青龍がぁ〜? 役に立ってんの? この呑んだくれオヤジ?」
「ぐっ! 白虎、キサマ!」
「お? やんのか?」
二人の間で青と白の波動が渦を巻きだした!
ひぃぃ、、新築の社がギシギシと悲鳴を上げている!
「あ、あの、、青龍様、白虎様その辺で、、神社が壊れてしまいます!」
「二人とも、いい加減にしや! 妾たちは祝いに来たのであるぞ」
朱雀様がぴしゃりと言ってジロリと睨むと、二人とも大人しくなった。
「う、うむ」
「わ、わかったよ朱雀ぅ〜」
ふう、作って即、ぶっ壊されるところだったよ、、、
「はい、それでは宴のほうに移らせて頂きます、どうぞこちらのお席におつき下さい」
俺がそう言って神様たちを席へと案内すると、モニカさん、ジルさん、トリシャちゃん、テトラちゃん4人のメイドが用意していた膳を持って来てくれた。
ドワーフ達が作ってくれた銀のゴブレットを四神の方々が手に取ると、青龍様にはモニカさんが、朱雀様にはジルさんが、玄武様にはトリシャちゃんがそれぞれワインを注ぐ。白虎様にはテトラちゃんがオレンジジュースを注いでいた。玄武様情報によると、白虎様はあまりお酒が好きではないらしい。
「おおー、お前ちっこくってかわい〜な〜。名前は?」
「てとらです〜」
白虎様、テトラより少しだけ背が高いぐらいなんだが、、まいっか、
「お粗末ですが、酒と肴を用意させていただきました。青龍様、朱雀様、白虎様、玄武様、どうぞご賞味ください」
「うむ、有り難く頂くぞ、我らの神官と巫女、そしてこの地に祝福を!」
「「「祝福を!!」」」
玄武様の合図で四神の方々が祝福した瞬間、神殿より赤、白、青、金の光があふれて広がっていく!
城と感覚を共有している俺は、祝福の光の波動が2キロ先の第2城壁まで届いたことがわかった。
「「ははあー!」」
腰を90度に曲げて礼をする俺と雫、神社の外にいたラフェリアの人々も、一斉にお辞儀をした。
そんな厳粛な雰囲気の中、
「うむ!」
「ど、どうぞ、、」
「うむ、美味い!」
青龍様だけはカパカパと杯を開け、横についたモニカさんがデキャンタでワインをどんどん注いでいた、、、
モニカさん、大変だけど頑張って!
お読みいただきありがとうございます。




