51 勇者達の凱旋
デザートドラゴンの最期のブレスは雫の廻し受けであっさりと防がれてしまった。
ピロリロリーン♪
ピロリロリーン♪
直後、頭の中で鳴り続けるレベルアップのメロディ、
地上を見ると、空中にいる俺に向かって雫がぶんぶん手を振っていた。肩の高さで軽く右手を振って応えると、雫が笑顔で応えるのがわかった。
正直しんどいので、スキル、ハツリを解除すると、ぷしゅーって感じで張り詰めていたエネルギーが体の中から抜けていった。
さて、かなりレベルアップしたので大丈夫だとは思うが、、一応確認するか。デザートドラゴンが崩れ去った後の砂山の上に立ち、辺りを見回す。
名前:砂
説明:ただの砂
名前:砂
説明:ただの砂
名前:砂
説明:ただの砂
名前:砂
説明:ただの砂
辺りを鑑定しまくるが、、うん、見事に砂ばかりだ。死体とか、HP0とかは表示されない。倒したかどうかちょっと不安になってくるな。砂の中に隠れたりしていないか、、ソナー使って見ようかな?
砂山の上に立ち、スコップを突き刺して耳を当てる。
コォォォオオオン、、
タァァァン、、
ん? 何かあるぞ?
頭のあったほうか?
頭が崩れて小さな丘になっているところに立ち、もう一回試してみる。
コォタァン、、
すぐに反応が返ってきた。
砂を少し掘ってみると、、
何か光ってる?
さらに掘ると、赤く光るスイカほどの石が出てきた。
名前:竜玉
説明:竜の命を司る宝玉
青龍様の言っていた竜玉はこれか、、
無くさないようすぐに『ネコ』に収納した。
あとは、みんなのところへ行くか、
「シュン様、タロウ様、、この国をお救いいただき、ありがとうございました。皆様がこの国に来てくださった事、本当に感謝しております。」
青いドレス鎧のアリシアが深々と頭を下げる。感謝しているのは本当だろうが、俺たちを召喚して良かった、なんて考えてんだろうな。これ以上召喚の儀式をされて被害者を増やさんためにも釘を刺しておくか、、
「ああ、アリシアさん、1つ伝えなきゃいけないことがあったんだ」
「はい、、なんでしょう、タロウ様」
「青龍様に、つまり俺にこの力をくれた龍の神様に聞いたんだけど、」
そう言ってスコップを掲げて青い刃を出して見せる。
「あのドラゴン、大きな魔力を感じて起きてきたらしい。強力な召喚術とか」
「!!」
「デザートドラゴンは常に飢えているんだってさ、魔力を使用した者、召喚された者、をエサと認識して出てきたようだ、って」
「どおりでみんな、食われそうになったわけだね。シュンなんて危なかったからね」
気絶から回復した柳田が、他の女子に肩を貸してもらいながら、やれやれと言った風に言う。
「召喚の儀式は危険だと認識した方がいいよ。次は、、もっと取り返しのつかない事になるかもしれないから」
「……わかりました、、全ては私の愚かさが招いてしまった事だったのですね、、」
そう言って俯くアリシア。
「大丈夫だ、アリシア、召喚の儀式は反対だけど、、今後何があっても俺が守ってやるよ」
「シュン様、、」
神田君だ、ちっ、イケ面の甘ちゃんめ、、
まあ飴担当は任せるか。俺そんなんやる気ないし〜
「と、ところでタロちゃん、、腰ミノの下から見えてる物なんだけど、、その白いフリル付きの黒いパンツって元は雫のスカートじゃ、、」
う、柳田のやつ、気がつきやがった、、
デザートドラゴンとの戦いで腰ミノが半壊しているからな、、
俺、今パンチラどころかパンモロ状態なんですよ、
「あ、うん、ええと、、、」
俺が視線を泳がせていると、
「うん、私のスカートの布使って太郎さんのトランクス作ったの。よくできてるでしょ?」
ちょ! 雫さん?!
「「「「ええーー!!」」」」
級友達の視線の集中砲火にさらされる俺、、
ススス、と俺の斜め後ろに隠れて、俺の背中をツンツンする雫、、
あ、言えって事なのね、、
「あー、そのー、、
俺、田中太郎は雫と結婚しました!!」
左腕に、キュッと抱きついてくる雫、
「「「「エエエエエーー!!」」」」
クラスの中に一気に広がる動揺、
「ば、バカな、田中のやつなんて事を!」
「うぉぉぉお! 俺の雫タンがー!」
「くたばれ、タロー!」
「一発殴らせろ! テメー!」
男性陣の罵倒がひどい、、
「キャー! 雫おめでとー!」
「ね、ね、プロポーズどんなだった?」
「え、やっぱり同じ部屋で同じベッドで?」
「え? みんな見て見て! 雫の苗字、田中になってるー!」
「あ、ほんとだ!! レベル低い私にも見せてくれてありがと、雫! お幸せに!」
対して女性陣はキャッキャしてる、、
ていうか雫、ステータス見せびらかしてる?
「オンドゥルルラギッタンカー!!」
もはやヤロー共は何言ってんのかわかんね。掴みかかってくる奴らの指が肌に食い込む。
「あーわかった! そんなに殴りたきゃかかって来いや!」
バキッ!
あ、、、
本当に殴りやがった、
プチッ!
「上等だ! テメーらぁ!!」
こうして、男子10数名 vs 俺、の壮絶な殴り合いが始まった。
◆◇◆◇◆
「あーあ、バカだねえ、男子って」
女子達が、喧嘩を始めた男子を遠巻きに眺めながら呆れたように言う。
「雫、あんた止めなくて良いの?」
「大丈夫、太郎さんは勝ちます!」
「こりゃダメだ、、お幸せに」
「それにしても強いねぇタロちゃん、レベル差があるとはいえ、あの人数の勇者相手に圧倒的だよ」
また一人、ぶっ飛ばされ大の字で側転しながら転がって行く男子を見て柳田由美がつぶやく。
太郎は、殴られたらぶん殴る、と言った感じで全員の拳をその体に受けながら暴れまわっていた。
「我々も行きますか」
「ああ、そうだな、タク」
尾崎拓也と西上照夫が、太郎の元へと足を向ける。
「ちょっとまて、お前たちもなのか?」
「いやぁ、勇者シュン、田中君と殴り合えるチャンスなんてそうそうないですよ」
「だな、タク。そういうわけだから心配すんなって咲夜」
「照夫、、」
心配そうな顔からどこか安心したような表情になる咲夜
「…わかった、僕も行こう!」
「よっしゃ行くかあ!」
「「おう!」」
ドガッ! バキッ! グシャッ!!
こうして勇者達はその半数近く、男子のほとんどが太郎に蹂躙されたのであった。
「うう、、なんで僕まで、、ガクッ、」
ちなみに白黒魔導師の勇者、浩二は、みんなを止めようとして巻き込まれ、今は土の上でうつぶせに倒れて目を回していた。
◇◆◇◆◇
夕刻、、アリシアと勇者達の一行は王都エオリアへと帰り着いた。もちろん太郎と雫は自分の居城へと帰ったためこの中にはいない。
「あだだだ、、」「くそ、アイツ、もうちょい手加減しろよ」
腫れ上がった顔の男子達が木の枝や自分の武器を杖にしてヨロヨロと歩く。
女性陣が太郎との喧嘩の罰として回復魔法や薬草の使用を許さなかったのだ。
「うおおー! 勇者様バンザーイ!」
「ありがとうごぜぇます、ありがとうごぜぇます、」
「勇者バンザーイ! エオリア王国バンザーイ!」
26名の勇者が王都エオリアの城門を潜った瞬間、市民から爆発的な歓声で迎えられた。デザートドラゴン討伐任務完遂の報告は、アリシアの騎士が早馬でいち早くエオリアへと伝えていたのだ。
「おお、勇者様達、エオリアを守る為にあんなに傷だらけになって、、」
「おいたわしや、」
「うう、俺たちの為にこんなになってまで、、ありがとう、本当にありがとう」
「ウワァーン、ゆうしゃさまたち、かわいそー」
王都の大通りを杖をつき足を引きずりながら歩く勇者達(男子)を見て、ドラゴンとの戦いで負った傷だと勘違いした市民達が涙を流して感謝する。
あまりのボコボコ面に泣き出す子供たちまでいる始末だ。
「…これはこれでオイシイかもな」
「明日からモテるかな?」
「いや、もうモテてんじゃね?」
「はぁ、、バカばっか、、」
「どうせならもうちっと良い男にしてやるべきだったかね?」
そう言って拳をバキバキ鳴らす物理系魔法少女勇者の柳田由美
「やめときなよ、由美が殴ったらトドメになるよ」
「やっぱり私の『エクストラヒールアロー』で治療して差し上げるべきでしたか? なんなら今からでも殿方達のお尻に、、」
「「「(市民の前で)それはやめて」」」
藤よし子の善意(?)は速攻で却下されたのだった。
すみません、ドタバタ回でした。
お読みいただきありがとうございます。




