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35 いきなり話せと言われましても

「あー、飛んだなぁ」

「ひぇぇぇ、、どうしよう」

「まぁ、、大丈夫じゃないか? 柳田レベル高そうだし」


 などとと思っていたら、、壁の穴から柳田と誰かの声が聞こえて来た。


「ああ、おやめになって!」

「よいではないか、よいではないか、そなた、白くて美しいのぉ、この毛並み、たまらんのう、名はなんと申す?」

「ティニャでございますう、、わ、わたしには2人の子供が、、ああ、ごめんなさい、ターニャ、シウバ、、」

「ぐふふふふ、良いではないか」

 マズい! 柳田の毒牙が!


「やめんか、悪代官」

 ターニャのお母さんに絡みつくように抱きつく柳田の後頭部にチョップを入れる


「ごめんねターニャのお母さん、こいつ俺の旧友なんだ、勇者やってるらしい」

「まぁ、勇者様でしたか」

「ええと、遠慮しなくてもいいからね、嫌なことは嫌だと言ってね」

「いえ、、嫌なことは、、、むしろ、」

 ちょっと俯き加減で頬を赤らめる、

 ……そういえばこのお母さん、かなりノリノリだったような、


「じゃ、そういうことで」

 ぐったりする柳田を引きずりながら部屋へと戻る。


「で、結局何しに来たんだよ、お前」

「あ、そうだった、任務忘れてた!」

「お前なぁ、、、で、任務ってなんだ?」

 柳田は椅子に座り、俺はベッドに腰掛けた体制で話をしていた。俺の背中には毛皮を頭から被った春野さんが隠れるようにしてくっついている。


「スタンピードに対する共闘よ」

「スタンピード? 共闘? なんだそれ?」

「あれ? 雫、何も言ってないの?」

 ピクっと反応する春野さん


「あー、すまん柳田、春野さん昨日、魔獣に襲われて仲間守ろうとして戦って、死にかけてて大変だったんだ。だからろくに話も出来てない。その『スタンピード』ってのが、魔獣の大量発生の事なのか?」

「うん、エオリアの東30kmぐらいのとこかな? そこにあるダンジョンから魔獣が溢れ出して来たの」

「ダンジョン?」

「まあ、洞窟みたいなもんだと思って」

「そうか、それで春野さん達が襲われたり、近くの村から住民が避難して来たりしたのか」

「でね、この城に共闘を申し込みに来たわけ」

「申し込みの相手は? エオリア王国か? それとも勇者一同か?」

「もちろん、勇者一同の方よ。いくらエオリア王国でもそこまで厚かましくないわ。アリシアはタロちゃんに謝りたいみたいだけどね」

「謝罪なんていらねー、どーでもいーよ」

「で? 受ける?」

「ああ、神田君や尾崎君の申し出なら受けるよ」


「よかった、ありがと

 で、雫に報告、ウルミは民間人を囮にしたという事で、地下牢につながれたわ、雫、エオリアに帰ってくる?」

「……嫌、ここにいる、、」

 そう言って俺の背中に寄り添ってくる春野さん

「ちょっと待て、ウルミって誰だ? 囮って何のことだ?」


 そこで俺は初めて昨日春野さん達に起こったことの全てを知った。


「頑張ったんだね、春野さん」

 春野さんの頭を撫でると、頭を俺の肩にくっつけて来た。

「そっかあ、雫も女になったかぁ」

「!!」

 照れた春野さんが俺の背中に猫パンチをポカポカ放ってくるが、、威力がハンパないぞこれ、いつのまにか『安全靴』のスキルが発動してるし、柳田が吹っ飛ぶわけだ。


「それで、マジックバッグに色々食料とか物資を持って来たんだけど、どこかに出すところない?」

「ああ、それなら3Fに置いてもらおうか」

 そう言って部屋を出ると、メイドさん達4人が待っていた。


「タロウ陛下、少しお時間を頂いてよろしいでしょうか?」

「少しだけならいいけど」

「私どもは、、エオリアに魔獣の餌として捨てられました。どうか私どもをタロウ陛下のメイドとして雇っていただけないでしょうか?」

「うーん、うち不便だよ、服もないし、食料も安定してないし、それでも良いなら」

「はい、問題ございません、お願いします」

「うん、雇わせてもらうよ。この城の事をよろしく。俺からの条件はひとつだけ、最初にも言ったけどみんなと仲良くやる事」

「はい、ありがとうございます」

 そう言ってお辞儀をするメイドさん達



 3Fへと移動すると、柳田がバッグからリンゴや梨、あとはよくわからない果物を出してくる。これは? 何かの保存食か?

「よく知らない食べ物もあるなぁ、モニカさん、管理よろしく。あと、、柳田を疑うわけじゃないけど、毒の鑑定もお願い」

「お任せ下さい」


「城の中、暗いところもあるから、これ、」

 そう言って輝石を4つ出し、魔力を込めて渡す。

「え、こんな高級品を、、」

 戸惑うメイドさん達

「商品価値なんてどうでも良いさ、仕事に便利だから使うんだ。光が弱くなったら俺か春野さんのところに持って来て」

「は、はい!」




「陛下、お願いがございます」

 なんだ、今日は忙しいな、、


「どうした? グリューン」

「皆にお言葉をいただけないでしょうか?」

「みんな?」

「はい、昨日受け入れたもの達もおります、その窓からで良いので陛下のご尊顔と一言で良いのでお言葉を賜りたく」

 3Fの窓から外を見てみると、100人以上の人たちが整然と並んでいた。なにやっとんだ、こいつら、、


「わかった、一言で良いんだな。ちょっと待ってろ」

 そう言って自分の部屋に一回戻り、腰ミノを寝巻き(ショートタイプ)から外出用(ロングひざ下タイプ)に履き替える。下から見えたら大変だからね!


 窓際に近づくと、みんなの視線が集まるのを感じた。3Fだから10mほどの高さはある、窓枠に登り、、一歩外に踏み出す。あちこちから、ひっ! っと小さな悲鳴が聞こえた。

 空中をゆっくりと歩いて行き、10歩ほど進んだところで歩みを止める。うん、ここならみんなからよく見えるし声も通るだろう、


「タロウ タナカだ。

 俺は俺の友達を守りたいと思ってこの城を建てた。新しく来たみんなも、俺の友達になって欲しい。

 みんなが争う事なく、笑って平和に暮らす事が俺の願いだ。

 喧嘩をするな、助け合え、そういう当たり前のことができれば良い。以上だ」

 そう言って城の中へと戻る。


「「「タロウ陛下、バンザーイ!」」」

「「「バンザーイ!」」」


「こんな感じでいいか?」

「お見事でございます、陛下」

 グリューンは涙を流し跪いていた。メイドさん達もその後ろで膝をつき、頭を下げている。

「頭をあげてくれよ、大げさすぎるよ、みんな、さあ仕事、仕事。グリューン、明日の朝のミーティングからは新しい村の長達も呼んでくれ」

「かしこまりました」


「タロちゃん、世界征服でもやるつもり?」

「そんなつもりはないさ、でも、、俺の友達を傷つけようとするなら、、相手が国でもぶっ潰す」

「おおこわ、、タロちゃんそういう時ホント容赦し無さそーだ」


「さて、共闘だっけ? 何から手伝えばいい?」

「うーん、タロちゃんもこの城の事で忙しいだろうからねえ、、」

「じゃあこれ渡しておく。何かあったらこの城が見えるところから光らせろ」

 そう言って拳大の赤輝石を渡しておく。


「ええ?! これ、国宝超えてるんじゃ!」

「勇者一同に貸すだけだぞ、スタンピードとやらが終わったら返せよ」

「う、うんわかった」


「それまでに、この城から街道までの間の魔獣は刈っておくよ」

「それは助かるわー」



 やっと柳田が帰ることになった。南門まで雫と一緒に見送る、

「じゃあ、雫、またね」

「うん、またね、由美ちゃん」

「途中まで送っていこうか」

「え? タロちゃん着いてこれるの?」

「ほぉ、、なんならエオリアまで競争するか?」

「のった!」

 

 ブーツに羽を生やし、ホバー走行で走り出す柳田!


「なっ! いきなりかよ! 春野さん城に入っていて! 出ちゃダメだよ」


 そう言って柳田を追いかける!



 森の中を器用に木を避けながら走る柳田を眼下に見ながら、空中を走る。前方にC、Dランクの魔獣が数体いるのが見えたので先回りして殲滅、肉と毛皮が勿体無いのでもちろんネコに回収する。それを数回繰り返すと、一時間もしないうちにエオリアの前まで来た。


「はあっはあっ、タロちゃん、戦いながらでも全然よゆーじゃん! なにそれ、ずっこい!」

「ずるくないですー、努力の結果ですー」

「ちえ、、タクの言うことが少しわかった気がする」

「あ、、、おれ、尾崎君に銀貨20枚借金してる、、やべ、、お金全部エオリアのゴロツキと女騎士にとられたんだった、、返せないよ、どうしよう」

「あー、気にしなくていいと思うよ、経緯を知ったら、アリシアは血相変えてタクに大金貨20枚ほど渡すと思うし」

「そっか、、じゃあまたな、柳田も気をつけろよ」

「タロちゃんもね」

 そういって俺は再びエオリアを後にした。






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