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36 黒銃の勇者

「コバルト隊さがれ! ビリディアン隊代わりに出ろ!」

「カーマイン隊、勇者ミキヒロ殿を援護しろ!」

「「ははっ!」」


「うおぉぉぉぉおお! スキル『狂戦士化』発動!!」

 最前で戦っている幹宏がスキルを発動すると、両手で構えている巨大な鉄塊が真っ赤に光った。

「ヴォォォ!!」

 獣のように吠えた後、魔獣の群れの中へと突っ込む幹宏、

 

「ちっ、幹宏のやつ! 突っ込みすぎだっての!! 照夫! バックアップよろしく!」

 そう叫ぶのは咲夜、手に持つ銀の筒から青白い炎が吹き出す!

「いくよ高熱剣! チェェエ!」

 3mほどの青白く光る刀身を振り回して幹宏の後ろに回り込もうとする魔獣の首や足を落としていく!


「了解、咲夜! スキル、『ワンショットワンキル』発動!」

 照夫と呼ばれた少年が、後方で黒いライフルを構える。

 タン!

 鋭い発砲音が響くと、弾丸は幹宏を狙って突進しようとしていた牛のような魔獣の頭に吸い込まれるかのように飛んでいき、頭を吹き飛ばす。


「ぼ、僕も攻撃した方がいいかな?」

「ダメだよ、浩二は白黒魔導士なんでしょ、この中で唯一のヒーラーなんだからMP取っておかなきゃ」

「う、うん、わかったよ花蓮」

「まあ、私の丸薬でも回復出来るけど、、回復量少ないわ、激不味だわでみんな嫌がるん、ホイッと」

 そう言いながら、前衛を抜けて来た小型の魔獣の首を日本刀でねる花蓮。

「ここは抜かせないよ、後ろには王様の本陣があるしね」



 スタンピードが発生してから6日目、エオリア国王オーリ8世の率いる親衛隊と勇者たちは、王都へと避難するノルエスの民達のしんがりで、魔獣の群れと激戦を繰り広げていた。


「クッソ、今日1日でレベルが5は上がったぞ! MP上がるのは助かるけどな! スキル『グレネードランチャー』発動!」

 ボシュ!

 照夫のライフルの下部に太い筒が現れ、煙を吹いて弾が飛び出していく、そして魔獣達の真ん中に着弾し、、

 ズガァァァアアアン!

 凄まじい音を立てて爆発した!


「ちっ、今のでMPが1/4切ったか、、連射できる魔法使いみたいなもんだけど、便利なんだか、不便なんだか、」

 銃使いの照夫は銃剣以外は全てMPを使わなければいけない仕様に苦労していた。MP管理をしないと、あっという間に魔力枯渇に陥ってしまうからだ。


「おいおい、幹宏のやつ、突っ込みすぎだろ!! 咲夜と騎士達のフォローも追いついてねえ! おい! 浩二、花蓮! ここは捨てて王様のところまで下がれ! 俺も前に出る!」


「え、ちょっと浩二、あんたあたしと一緒で前衛できるほど防御力ないはずじゃ、、」

「スキル『防弾チョッキ』発動! これで少しはましなはずだ!」


「ヴォォォ! ガッ! グゥォォオオ!」

 魔獣の波状攻撃を受けながら獣のように暴れ回る浩二、足や背中に噛み付いて来た魔獣を全く無視して、目に入った敵を鉄塊で吹き飛ばし続ける!

 だがそのHPは確実に減りつつあった。


「幹宏! 止まりなさいこのバカ! スキル『高熱剣 扇切り』発動!」

 咲夜が高熱剣を頭上に掲げて叫ぶと、手もとを中心に剣が扇状に分裂する! そのまま下へと斬り下ろすと、扇の範囲にいた魔獣が切り裂かれた。


「スキル『バースト』発動!」

 タタタ、タタタ、タタタ!

 咲夜の左右にいる魔獣達が薙ぎ払われた。


「ちょっと、照夫、なんでここまで上がって来てんのよ!」

「しょうがねーだろ! ここまで戦線が延びちまったら、もうバックアップできねーよ! お前らを見殺しにできねーから上がって来たんだよ! オラァ!」

 そう言いながら銃剣で熊のような魔獣の胸元を突く照夫。


「ごめん、、幹宏を止められなかった私の責任だ、、」

「止められるわけねーだろ! あのバカを! それにしても、クソっ! これで、、一旦途切れたか、、ふう、もう来なけりゃ良いんだが」


 グォオーーム!

 ズン、、ズン、、


「え? 何?」

「なんだ、この雄叫びは、、」


魔獣:デザートドラゴン

ランク:EX


 照夫と咲夜は学校の校舎ほどもある動く砂丘のような巨体を一目見た瞬間にわかった、、これは現有戦力でどうにかできる相手ではないと。

「撤退だな、、」「ええ、」


「あ! 幹宏、あのバカ!!」

「え、ちょっ、まだ狂戦士解けてないの?」


「ヴォオ!」

 ザリィィン!!

 デザートドラゴンへと走り込み一撃を入れる幹宏、その剣は砂岩のような鱗に簡単に弾かれた。

 その巨体ゆえに遠目には非常にゆっくりとした動きに見えるが、実際には高速に動くその前足の爪で羽虫でも振り払うように幹宏を吹き飛ばす!


 バキバキ! ドン、、ドドッ!


 数十メートルを吹き飛ばされ、倒れる幹宏、


 デザートドラゴンの目は倒れた幹宏を捉えていた。


「不味い!! 俺がヘイトを取る! 幹宏を連れて撤退しろ!!」

「わかった!」


 二手に分かれる照夫と咲夜、

「うおおおお!! スキル『グレネードランチャー』!! こっちだ! バケモノ!」


 ボヒュ! ボヒュ!

 ズガァァァア、ズガァァァアアアン!!


 デザートドラゴンの横っ面で炸裂するグレネードランチャー、煙を振り払うように顔を振った後に赤く光る瞳が照夫を捉える

 ヘイトが幹宏から照夫に完全に移った!


 グゥォーーム!


 デザートドラゴンの眉間に砂が集まっていき、巨大な弾丸が形成される!


 ヒュド!

「咲夜、逃げ    」








 ドガァァアアアアアァァァン、、、

「照夫ぉーー!」


 辺り一面が砂煙に巻かれ、視界ゼロの状態になる。


 ズン、、ズン、、


 足音と共に遠ざかっていくデザートドラゴン


 咲夜は幹宏の側で息を潜めてやり過ごした。



◇◆◇◆◇


 パリィィィン、、

 エオリアの王城で指揮を取っていたアリシアの頭の中で、何かが砕ける音がした。

「あ、ああ、、」

 虚空を見上げたまま目を見開き、急に涙を流し始めるアリシア。


「どうした! アリシア!!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、、」

 今度は膝をついて顔を伏せ、泣きじゃくり始めた。


「誰か、、死んだんですか?」

「「「!!!」」」

 尾崎の問いかけに、勇者達の間に緊張が走る。


「テルオ様です、、黒銃の勇者、テルオ様です、、ごめんなさい、ごめんなさい、、」


 泣きながら話すアリシアの言葉に息を飲む勇者達、、


「アリシア、少し休め、避難も9割方完了したはずだ。」

「勇者シュン、これは一大事ですよ、」

「ああ、ああ、照夫が死んだんだ、わかってる!」

「違います、照夫が死んだことは確かに一大事です。僕が言いたいのは、照夫が殺されるほどの事態が起きたって事です」

「? どういう事だ? 勇者タク」

「照夫は、用心深い後衛です、MP管理も完璧で、そう簡単に倒れるとは思えません、ですが、、、冷静でいてここぞという時に熱い、

 あのパーティは表面上は幹宏がリーダーに見えるかも知れませんが、彼はその器ではありません。むしろパーティをコントロールしているのは照夫です。

 他のメンバーならともかく、彼1人が倒れたというなら、、彼の性格ならハリウッドスターまがいの事をして仲間を庇った? あの5人でもどうにもならないような相手が出た? いずれにしても情報が欲しいところですね、、」


「どうすればいい、、勇者タク」

「普通ならみんなの知恵を、といきたいところですが、そんな事をしている時間はありません。勇者ユミ、南から応援は呼べますか?」

「……あたしもそれ考えていた。まずは呼ぼうか、、アリシア、南側の山が一番よく見える窓は?」

「お父様の部屋かと、、」

「案内して、、あたしよりずっと強い人呼ぶから、、エオリアには戻って来たくないだろうけど後でみんなで謝ろうか」





「この窓だね、」

 柳田がごそごそと革袋から拳大の石を取り出す、そして窓側に置いたテーブルの上に置くと魔力を込めた。

 鮮烈な赤い光を放つ拳大の石、


「こ! これは! 赤輝石! それもこんなに大きな!」

「タロちゃんからの借り物だよ。無くしたり奪ったりしたらエオリア王国と戦争になると思っても良いよ、」


 赤輝石を光らせてしばらくすると、南側の山で白い光が3回点滅した。


「良かった、答えた」

 光の返信にホッとする柳田、


「多分すぐ来るよ、時計ある?」

「は、はい、そこに置き時計が、、今5時25分です」

「タロちゃんに助けてもらうために、少し、お話しようか、、アリシア」

「は、はい」


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よろしければこちらもどぞ  すっぴん召喚のヤマナさん
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