30 再会
「タロウ兄さん、大変だ! 東の街道あたりに強そうな魔獣が沢山いる!」
四神神社の彫刻を彫っていたら、シウバが駆け込んできた。俺のスコップ、木だろうが石だろうが、粘土のように彫ることができる。この時は四神のうちの一柱、白虎のレリーフを彫っていた。
「沢山? どれ、」「うひゃあ!」
ひょい、とシウバを抱えて空中をトトン、とステップを踏み、一瞬で30mほど駆け上がり窓から見張り台に入り込む。
「あ、タロにーさん!」
俺を見つけたターニャが嬉しそうに懐に飛び込み抱きついてくる。
「お、ターニャ、よしよし、でどこで異変が起きているって?」
「あの辺、大きいのがいるの、たまに小さいのも沢山見えるの」
「そっか、ターニャは目がいいな、、」
俺の目にはよくみえなかったが、確かにきな臭い感じはする。
「外に出ている連中は?」
「ミーシャさんたち、みんなさっき帰ってきたの」
そうか、今日の採取は終わったか、なら好都合。
「シウバ、ターニャ、知らせてくれてありがとう、大変だけど今日は交代で夜まで見張りしてくれないかな?」
「「りょーかい!!」」
肉球のついた手で、タシッと可愛らしく敬礼する二人
「ありがとう、頼むよ」
二人の頭と耳を撫でてから、窓から飛び出し、南門へと空中を駆け下りる。
「おお陛下!」「殿、どうされましたか?」
「ちょうど良かった、グリューン、ディンガンド、本日外に出たものは全員帰ってきたかい?」
「はっ、先程点呼が済んでおります!」
「よし、南門を閉めて! 第3種防衛体制に移行! これより誰も城外には出ないで!」
「「ははっ!!」」
「タロー、いってえどうしたんだ?」
「ガルドワン、森に魔獣が溢れてる。ターニャとシウバが察知したんだ。俺は様子を見てくるから防備は任せるよ」
「オウ! 任せとけ!!」
「よし、じゃあ行ってくる」
「陛下お待ちを! これをお持ち下され」
そう言ってグリューンが小さな袋を渡してくる。持ってみると、カシャカシャ音がなり、細い瓶が数本入っていることがわかった。
「これは?」
「わが村の秘伝の技術で作った、回復薬です、陛下が採取された極上の薬草で作りましたので効果は抜群ですぞ」
「ありがとう、助かる! それじゃあ行ってくる!」
城を飛び出し、空中を駆ける。ん? 確かにでかい奴らがいるな、、その足元にもチョロチョロと小さい奴らがいる。どれも一方向に向かって進んでいる。何かを追いかけているのか?
先頭の緑色のでかいのと誰かが戦っている!
あ、棍棒をフルスイング!
飛んでいく人影、くそっトドメをさす気か?!
この距離でいけるか?
間に合え!
スキル『安全帽』 発動!!
……間に合った、、
降りてみてびっくりした、春野さんじゃないか! 確かにメイドになると聞いたがなんでこんなところで魔獣と戦っていたんだ?
「遅くなってゴメンよ、
よく頑張った、春野さん」
「あ、、タ、、、く、ん、」
ガイン! ガンガン!
うるせーな、この緑ブタ! ガンガン棍棒で俺の安全帽叩きやがって。
「へ、変態さん?」
「ぐふっ!」
隣にいた中学生ぐらいのちっこいメイドに変態呼ばわりされた、もうだめだ、、おわた俺、、
じゃなくて、今は春野さんだ!
春野さん、ボロボロだ、ゴメン、鑑定するよ。
シズク ハルノ
レベル15
職業:空拳の勇者
HP:4/92
MP:22/22
状態異常:瀕死
瀕死? なんだそれ? 『瀕死』の文字を注視する、
状態異常:瀕死 死の一歩手前、HPが減り続ける、回復手段をとっても1/4までしか回復しない。
え? もう一回鑑定、
シズク ハルノ
レベル15
職業:空拳の勇者
HP:3/92
MP:22/22
状態異常:瀕死
やばい! HPが減っていく! すぐにグリューンからもらった薬の瓶を取り出す! ふたを開けると、うっ、なんつー匂いだ、、
「春野さん、ゴメン、不味いけど薬だよ、飲んで」
春野さんの口もとに瓶を持っていき、少しずつ薬を流す。
「頑張って飲んで、、」
コクリ、、 よし飲んだ!
シズク ハルノ
レベル15
職業:空拳の勇者
HP:15/92
MP:22/22
状態異常:瀕死
よし! 効いてる!
「えーと、君」
俺を変態呼ばわりしたちっこいメイドに声をかける
「トリシャ、、」
「トリシャちゃん、頼みがあるんだ。この薬を少しずつ春野さんに飲ませてくれないかな?」
「これでシズク治るの?!」
「いや、、時間を稼ぐだけだ」
「エオリア軍が助けに来るまで稼げる?」
「そんなやつらは必要ないよ、俺がこいつらを片付けるまでの間だけでいいからたのむよ」
「え? やっつける? 一人で?」
「すぐおわる」
ガシガシと安全帽を叩く緑ブタの後ろからさらに数体の大型魔獣が姿をあらわす。
さっきまでこいつらと戦っていた春野さんは、今は1/4しかHPを回復できない状態だ、、
だったら、、HPの最大値を上げてやればいい!
「お前ら、、悪いが春野さんの経験値にさせてもらうぞ、、」
スキル『ハツリ』 発動!!
ドッ、ドッ、ドッ、ドッドッドッドドド、、
発動した瞬間から、体の中から抑えがたい力が溢れてくるのがわかった。コンプレッサーで高圧エアーを送り込まれ、内圧が高まりトリガーを引かれることを待っている削岩機のような状態だ。
オーバーキルな事がわかっていたため、生き物相手には封印していたが、今は1秒でも早くこいつらを殲滅する必要がある!
視界の隅に60秒のカウントダウンが始まった。
−59
まずは、春野さんをその棍棒で殴った緑ブタ! お前からだ!!
魔獣:グリントロル
ランク:B
周囲に展開した『安全帽』を狂ったように棍棒で叩き続けているグリントロル、身長3mほどのでっぷり太った醜い巨人の前に立ち、トンッと垂直に上へと飛ぶ! 一瞬グリントロルは俺を見失い、キョロキョロ左右を見まわした、その隙に空中をひと蹴りしてグリントロルの頭上へと飛び、右足を伸ばして奴の脳天に俺のつま先をコツッと当てる。
「削岩脚!!」
ズギャガガガガ!!
真下への削岩機のような連続蹴り!
赤い鉄杭がつま先から次々と現れては巨体を貫通し大地を穿つ! グリントロルの頭部から股間までが一瞬で消失し、地面に5つの大穴が開いた!
グリントロルの右半身と左半身は、無くなった内側に、ぐちゃっ、と音を立てて倒れこんだ。
-48
次はお前たちだ!
魔獣:レッドオーガ
ランク:B
魔獣:ブルーオーガ
ランク:B
頭に二本のツノを生やした赤と青の筋肉質な巨人たちが、金属製の棍棒を振り回してかかってくる!
スキル『安全靴』発動!!
ガギン! ガィィイイン!!
左右から思いっきり振り切ってきた棍棒を鋼と化した肉体で受け止める!!
金棒で叩いてもビクともしない俺に驚き、動きが止まるオーガたち。
「おおおぉぉおお!! コンクリートハンマー!」
ヒュドドドドド!!
2体の間に入り、右フック、左フックの連打を左右に放つ!
胴体を吹き飛ばされたオーガたちはだるま落としのように肩から上の部分がベシャッと腰の上に落ちて、絶命した。
-36
「ブモォォァァアアア!!」
4本のツノを持った大型トラックのように巨大な真っ黒い牛が一旦距離を取った後、助走をつけて突進してくる!
魔獣:クワッドホーンブル
ランク:A
大地を震わし、土砂を巻き上げながら突進してくるクワッドホーンブル!
「ロックドリル! セット!!」
顔の横に構えた右拳を覆うように、頭に無数の刃がついた円筒形の無骨なドリルが現れる!
ギュンギュンギュンギュンギュギュギュギュギュギュギュギュルギュルギュルギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!
高速で回転し始める俺のドゥオリル!!
「ブモォォォオオ!!」
「でりゃぁぁあああああ!!」
拳から放たれ、高速で回転しながら巨大化するドリル!
俺のドリルと、クワッドホーンブルの巨大な頭部が衝突する!
ギュッッッ、、バァァァアアア!!
一瞬で血煙が上がり、あたりの視界が真っ赤に閉ざされた! 赤い霧が晴れたあとには、頭部から尻まで消し飛び、内側がU字型にえぐれたクワッドホーンブルの巨大な胴体と、それを支える4本の足が残されていた。
-28
約30秒で大型の魔獣を4体葬ると、残っていたランクCの中型魔獣たちがひるみ始めた。
「……逃がさねえよ! 削岩脚!」
シュドギャガガガガガ!
空中に高く飛び上がった俺の足から斜め下に連射されるいくつもの真っ赤な杭が、身を隠した魔獣達を大木もろとも貫いて行く!
後には粉々に砕かれた木と蜂の巣のように穴の空いた大地が残っていた。
ようやく算を乱してバラバラに逃げ始める魔獣達! それを素早さSSを活かして一体ずつ葬って行く!
ドゴッ! メシャッ!
ズチュッ! ザシュ!
チャグッ! ズガッ!
メキャ! ……
-12
10秒あまりを残して殲滅を完了しランクA 1体、ランクB 3体、ランクC 26体を肉塊に変えた。
春野さんは?!
急いで春野さんの元に戻る。
「あ、、うう、、」
メイドに抱えられたまま呻き声をあげる春野さん、
早く、早く来い!
ピロリロリーン♪
ピロリロリーン♪
よし来た!! 俺のレベルが2つ上がった! 戦闘終了した証だ!
春野さんは? ごめん、鑑定するね、
シズク ハルノ
レベル18
職業:空拳の勇者
HP:33/132
MP:42/42
状態異常:瀕死
もう一回鑑定、
シズク ハルノ
レベル21
職業:空拳の勇者
HP:45/180
MP:56/56
状態異常:瀕死
よし、順調にレベルアップしている! だが、、これだけHPが増えても瀕死が消えない、、グリューンたちなら何か知っているかも、ここに留まる訳にもいかないし、まずは俺の城に春野さんを連れて行こう。
お読みいただきありがとうございます。




