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27 第三王女ウルミ

 第三王女ウルミはオーリ8世の後妻の子である。オーリ8世の前妻はアリシアを産み、その後、第二王女を産んだ後に亡くなっていた。その第二王女も早産で生まれつき体が弱く、5歳で亡くなっている。

 前妻が亡くなった後、オーリ8世はエオリアの南東に位置する有力者、ライゼル公爵の娘を娶ったのだが、これもウルミを産んで回復することなく亡くなってしまっていた。その為にオーリ8世は娘達を、特に後に生まれたウルミを溺愛しすぎてしまったのだった。




「お父様は私の策を採用するって言ったじゃない! その王笏を渡しなさい!!」

 国王オーリ8世の出陣後、第三王女ウルミは、アリシアの前に立ちはだかり、王笏をよこすよう要求していた。


「ウルミ、、あんた頭いいのに、自分が何を言っているかわからないの?」

 アリシアを始め、武官、文官、冒険者達、関係者全員の冷ややかな目がウルミに向けられる。


「ぐぅぅぅうう、」

 この場に自分の味方がいないことに気づき、うなるような声を上げるウルミ


「ウルミ、今は一秒でも惜しいの、自分の屋敷に帰ってもらえるかしら?」

「!! ぐっ、、、」

 ウルミはバッと踵を返し、会議場を後にしようとツカツカ歩きだし、、その途中で思いだしたかのように、入り口付近にいた神田俊介の元へと駆け寄った。


「ああ、勇者シュンさま、シュン様なら私の正しさがわかっていただけますよね? 勇者の皆様はどうか私と共に来ていただけませんか?」

 神田の手を取り、下から見上げるようにして語りかけるウルミ


「ウルミ様、申し訳ありませんが、勇者は全員アリシア様の指揮下に入っております。ウルミ様の指示で動くわけにはまいりません。」

 ウルミの願いを、丁寧に、しかしきっぱりと断る俊介。俊介が頭を下げた一瞬、ウルミの眉間に深いしわが数本刻まれた。


「そうですか、、それはとても残念なことですわ、、」

 そう言って悲しみの表情で会議場を後にするウルミ、


「あの娘、、やばいわね、、」

 柳田由美のつぶやきに、クラスメートたちは皆、首を縦に振るのであった。




「おのれ、どいつもこいつも!!」

 側近の女騎士3名を後ろに引き連れながら、床を削るようにガツガツと音を立てて城内の廊下を歩くウルミ、、そのウルミがふと足を止めた。

「あれは? 勇者たちの、、」

 ウルミの視線の先には、洗濯したクラスメートの服を運ぶ黒髪ポニーテールのメイド、春野雫の姿があった。


「クスクス、良いことを思いついた。執事長を呼びなさい、あのメイドを私付きにするわ」

「ははっ! ウルミ様」



◇◆◇◆◇



「ウルミ様、シズクと申します、よろしくお願いします」

 ここは第3王女ウルミの館、春野はその日のうちに王宮の執事長から、ウルミの館へと移動を命じられていた。ウルミは謁見の間の様な部屋で、一段高いところにある悪趣味なほど豪華な椅子に座り、春野を見下ろしていた。両手を前に組み、丁寧にお辞儀をする春野

「ああ、楽にしていいわ。よろしくお願いね、後の事はそこのメイド長に聞いてちょうだい」

「はい」

「では、シズク、こちらへ」


 春野が去ったあと、ウルミはその可愛らしい顔を醜くゆがめて笑う、

「クスクス、あの女、情報によるとずいぶん男の勇者たちに大事にされているみたいじゃない。おとなしそうで相当な <ピー> ね。簡単に手に入り、なお且つ効果的に使える駒だわ、、」



 ウルミの部屋を出た後、使用人達の部屋で他のメイド達を前に春野は改めて挨拶をしていた。

「メイド長様、シズクと申します、よろしくお願いします」

「様、はいらないわ。メイド長のモニカよ、こちらは順に、ジル、トリシャ、テトラ、みんな、あいさつを」

 腰まである豊かな金髪を揺らしながらメイド長がこの屋敷で働く他のメイドを紹介する。


「ジル、だ、よろしく、、」

 白髪ショートカットで長身のボーイッシュなメイドだ、ややぶっきらぼうな態度である。

「トリシャです! よろしくお願いします!」

 セミロングのオレンジ色の髪を揺らしながら、中学生ぐらいの少女のメイドが元気よく春野に挨拶した。

「テ、テトラ、、よおしく、、おねあい、、します、、」

 メイド服を着た小さな金髪の女の子がジルのスカートの陰からちょこんと顔を出していた。

「みなさん、シズクと申します、よろしくお願いします」




「ねぇねぇ、シズクって勇者さんたちと同じ世界から来たんでしょ? どんなとこなの?」

 屋敷の掃除をしながら、トリシャが興味深そうに聞いてくる。

「トリシャ、しゃべっていないで仕事しなさい」

「はぁーーい、わかりましたぁー、メイドちょぉー」

「トリシャちゃん、後でたくさんお話ししましょ」

「うん!!」

 モニカに注意され、つまらなさそうに返事をするトリシャだったが、シズクの言葉に元気いっぱいになるのだった。



◇◆◇◆◇


 スタンピード発生から3日後の朝、

「ウルミ様! ライゼル公爵からの返事が来ました!!」

「待っていたわ!」

 従者からロウで封印された封筒を受け取り、乱暴に封を開けて中の手紙をむさぼるように読むウルミ


「ライゼル公爵は何と?」

 側近の女騎士が尋ねる

「ふ、ふふ、ふふふ、やったわ、おじいさまは私を全面的に支持すると書いてくれたわ! 全員出立の準備を! 南のライゼル公爵領へと向かう!」

「「「ははっ!!」」」


「ふ、くく、アリシアは苦戦しているようね、勇者達も連日の出撃で疲弊してきているって話だし。欲深い馬鹿な住民たちが素直に避難してくれるわけないじゃない。スタンピード対応でエオリア王軍も魔獣も磨り減ったところへ私がライゼル公爵軍を率いて魔獣を掃討し、エオリアを手に入れるわ、、スタンピードを終結させた軍に逆らうようなら、、アリシアも、、プークスクス、」



 ウルミの屋敷の前は、出立の準備で蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。

「メイド長はウルミ様の装甲馬車に乗車せよ! 他のメイドはウルミ様の身の回りの物を持って3番目の馬車に乗車せよ!」

「武器、食料は2番目の馬車、最小限の量にしろ! ライゼル公爵領まで持てばいい!」

「ウルミ様のお召し物は3番目の馬車だ!」

「騎士達は『風』の装備で準備ができたものから2番目の馬車に乗車! 速度重視の装備だ! 急げ!」



「ウルミ様! 一体どちらへ行こうとされているのじゃ?!」

 ウルミが出立の準備をしているとの情報を得て、王城の軍官でもある老騎士が兵を率い慌ててやってきた。

「あら、ちょうどいいところへ、これより私は、母の出身のライゼル公爵領へ行ってまいります。おじいさまを説得して、このエオリアのために必ず援軍を率いてきますわ!!

 お姉様にお伝えください。このウルミ、お姉様の力となるべく必ず援軍を率いてくると!」

「おお! ウルミ様、何とご立派な! 必ずやアリシア様にお伝えいたしまする!」

(クスクス、ちょろいわね)


「出発! 道を開けよ!」

 パンっと御者を務める女騎士が馬にムチを入れると、3台の馬車は進み始めた。



「こわいよぉ、、」

 幌馬車の中でジルにしがみつく一番小さなテトラ。

「私、、王都の外に出るの初めてだ」

「私だって始めてだよぉ、、」

 春野のつぶやきに、その隣に座っていたトリシャも不安げに返す。


 3台の馬車はまもなく王都の城壁の門を出て、南へと向かう街道を駆け始めた。



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