21 村人奪還作戦、その1
街道に面した集積所から少し離れた位置、小高い丘の上の一番高い木の上から敵の様子を伺う。
もうすでに40名ほどの様々な種族の人たちが集められていて、ロープで馬車に繋がれていた。犬人たちは10名ほど、あの白く綺麗な女性はターニャ達のお母さんだな、無事で良かった。
あ、冒険者が一人近づいて、、無理矢理、胸揉みやがった! 一瞬カッとなり飛び出しかけたが、、冒険者はすぐに離れて持ち場に戻って行った。
……決定、あいつ後で腕をへし折っておこう、、
それにしても他の連中の安否が分からん、、
おっ、一人集積所に走って来る奴がいる。そして15名ほどの冒険者があつまり、、話し合い始めた。そのうち5名ほどが急に武装を整えはじめる、弓矢を手に取る奴、ナイフを何本も身体中に装備する奴、剣に研ぎを入れる奴、そして先ほど飛び込んで来た一人の後について、小走りで集積所を離れて行く。
多分、抵抗している村人たちのところへ行こうとしているんだろう。集積所の人たちはすぐに殺されることはないだろうから、先にそちらに向かうことにした。
◇◆◇◆◇
ガギン! ギィン!
「ちいっ!」
「よぉ、そろそろ諦めな、でかいワンちゃんよう」
ガルドワンと数名の若者は10名ほどの村人たちを背に奮戦していた。戦っている若者は皆、体のどこかに刀や矢による傷を受けており血を流していた。
「ギャんっ!」
ハスキー犬のような大型の犬人が槍を胸に受けて倒れる!
「シベハス!! 大丈夫か?!」
「ほらほらどうした? 他人の心配してる場合か?」
湾曲した剣を両手に持った男の、斬撃の回転速度が上がる。
ギィン! ギャン! ギギン!
それをボロボロの大剣で受け続けるガルドワン、
「くっ、でやっ!」
「おっと、そらそら!」
たまに反撃を試みるが、一撃を避けられた上に、数倍になって帰ってくる有様であった。
「リャントウ! 援軍を連れて来たぞ! 5人だ!」
「ありゃ、お楽しみはここまでか。ではそろそろ終わりにするかね。囲め、お前ら」
10人ほどでガルドワン達を包囲する冒険者達、前衛の刀や槍を構えた者達がジリジリと距離を詰め、後衛の弓矢を構えた者達がギリギリと矢を引きしぼり、魔法使いが詠唱を唱えはじめる。
双剣のリャントウが構えて合図を出そうとする。
「全員! かか、、え?」
「長、助けに来たよ」
ヒュン! と風を巻き起こし、犬人達の長の横に立つ腰ミノ一丁の少年
ピュン、ピュピュン!
ゴウッ!
弓使いと魔法使いが合図のタメに耐えきれず矢と火球を放った!
カカン! ゴバッ!
放たれた矢と火球はガルドワン達に到達することはなく、その数メートル手前で弾かれた。
「こ、これは? 障壁の魔法ですかの?! タロウ様!」
「タロウだって?!」
戦闘中にもかかわらず驚いて後ろを振り向くガルドワン
「うん、そんな感じのものかな。『安全帽』って言うんだけどね。長、ガルドワン、ここにいれば安全だから動かないでね」
「は、はい、ありがとうございます、タロウ様」
「タロウ、俺も戦うぜ!」
「いや、俺一人で十分、ガルドワン達みんな傷だらけじゃないか、まずは薬草食いな、これみんなに分けてやってよ、
みんな、、ここまでよく頑張った!」
そう言って背負ったスコップの左腰にあるシャベル部分から『ネコ』で薬草の束を10ほど出してガルドワンに渡すタロウ
「す、すまねぇ、頼んだ、タロウ」
ガルドワンに薬草を渡し、冒険者達の前に進みでる
「……お前ら、、よくも俺の友達にひどいことしてくれたな、、覚悟しろよ」
「なーに丸腰でイキがってんだ?! この腰ミノやろう、頭わいてんじゃねーのか!」
「やめろ! ランヌ!」
双剣使いの制止を振り切って槍使いが突撃してくる!
ピッ! 突いてきた槍の穂先を親指と人差し指でつまむ。
「く、ぐっ!」
槍使いは押したり引いたりするが、俺の指二本に固定された槍はビクとも動かない。
「どーした? 槍使いのくせに腰入ってねーぞ?」
そう言って腰ミノを振って挑発する。
「う、がぁぁあ! 武技、アサルトスピア!!」
「武技?」
一度武技でひどい目にあったからか、ちょっとイラッときた。『安全靴』を任意で発動させ、突撃に対して突撃を合わせる。お前の武技と俺のガテンスキル、どっちが上か勝負してやんよ!
バガァァァアアアアン!!
ものすごい勢いで後方へと吹っ飛ぶ槍使い、バキバキ藪を突き抜けながら見えなくなるまで吹っ飛んでいった。後には石突きまで砕けた槍が、バラバラと破片になって落ちてきた。
「あー、兄さん降参だ、どうすれば見逃してくれる?」
双剣使いが、刀を納め、両手を上げて話しかけてきた。
「「リャントウ!」」
「お前らわかんねーの? だから三流なんだよ。とんでもないレベル差だぜ? 冒険者ならSクラス以上だろうよ、その兄さん」
「「なっ!!」」
「……そうだね、まずは武装解除、全ての武器をこの場に捨てていくこと。この依頼を放棄して、集積所や他の仲間と合流せずサウザーラへ帰ること。あとは、、次に俺の友達をいじめているのを見かけたら全力で潰すから」
「オーケイ、お安い御用だ、もう奴隷関係の仕事も受けない」
そう言って双剣をベルトごと腰から外し、ブーツや皮鎧の隙間からナイフを3本取り出して地面に置く。
「これでいいかい? 薬草や鎧も置いてかなきゃいけないかい?」
「いいだろう、薬草と防具は構わない」
「じゃあ、俺はこれで」
そう言って両手を上げたまま立ち去ろうとする丸腰の双剣使い。
「リャントウ! 依頼の違約金はどうするんだ!」
「もちろんギルドで払うさ、命に比べりゃ安いもんだ、わかんねーのか、破格の条件だぞ? お前らも許されるうちに許してもらった方がいいぞ、じゃあもう話しかけないでくれ、お前達への折檻に巻き込まれたら困る、じゃな」
「お、俺は嫌だ」「俺もだ! 違約金なんてゴメンだ!」「新調したばかりの武器を置いていけるか!」
そう言ってガシャガシャ武器を構える冒険者たち。
「みんな! 最大火力で一気に、、」
ヒュン、ドガッ! ガスッ! ゴシャ! メコッ! ズゴッ! ドムッ! グシャ! ズムッ!
冒険者達の間を一瞬で走り回りボデーにワンパンを食らわせる! 後には腹を押さえて苦しみのたうちまわる冒険者たちが転がっていた。
「ガルドワン、こいつらの武器も防具も身ぐるみ剥いじゃって、多分もう戦闘力はほとんど無いから」
「あ、ああ、わかった」
「おれ、ターニャのお母さんたちを助けにいくから、こいつらあとは始末するなり解放するなり好きにしていいけど、、そうだ、穴掘っとくから、反抗したら埋めちゃえばいいよ」
そう言ってスコップでひとすくいし、一瞬で深さ5mほどの穴を掘っておく。それを見た冒険者たちの顔色がますます青くなった。
「じゃあ捕まった村人たち助けてくるからちょっと待っててね」
そう言って空へと駆け上がり、集積所へと向かった。
「アホな奴らだねぇ、同じ強さの魔獣や竜が相手なら、絶対見逃してもらえんぞ、、言葉が通じる相手でラッキーだと思わんとな」
双剣使いのリャントウは、集積所に近づかないよう迂回しながらサウザーラへと駆けて行った。
そして、集積所へ向かって空中を駆けていくタロウを偶然見かける。
「え? あの兄さん空を? 飛んでる? マジかよ、、中身は古龍か神獣じゃねえのか? くわばら、くわばら」




