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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
1章.学校篇
24/79

23.風邪

 風邪を引きました。

 最近、忙しかったし、疲労も溜まっていたから、これを機会に、休養を取ることにした。


 魔法で、治せなくはない。あらゆる病気を治す魔法を使えば、風邪とて治せる。

 しかし、少々の咳と熱、倦怠感程度で、イチイチそんな上等な魔法を使うのも、と思うし、治ったら、休む言い訳が無くなる。


 医務室のベッドで休ませてもらう。

 僕は、ただそれだけで、静かで穏やかな時間が手に入るものだとばかり、思っていた。


 最初に駆けつけたのは、ルシエルだった。


「これは、私が病気になると、パパが必ず用意してくれた果実です」


 念のため、鑑定する。

 ……若干の、薬効作用有り。風邪程度なら、ある程度の回復が見込める。


「要らん!!」

「何ですって!!人の親切を!!」


 頼む……僕に静かで穏やかな時間をくれ……


 次は、ミリアだった。


「病気を治す魔法を覚えたの」

「帰れ!!」


 そして、一番騒がしかったのは、クリアクラスの三人組。


「鬼の霍乱って奴かしらねぇ~」

「過労よ、きっと!」

「魔法で治せばいいのに」


 最初こそ、僕を気遣う話題だったが、次第に世間話になり、休みたい僕が参加するはずもなく。


「……頼む、休ませてくれ」

「治そうと思ったら、いつでも治せるんでしょ?」

「……どうしてそう思う?」

「今さら、私たちに、あなたが魔法を使えることを隠せると思っているの?」

「いや……別に、多少は知られても構わないかと」

「魔力無しで魔法使う方法、教えて!」

「帰れよ、お前ら!!」


 最終的に、医務室の先生が追い払ってくれたのだが。


「モテるのねー、アナタ」

「たまたま、女性の知り合いが多いだけで……」

「『三分殺』でしょ?私もファンよ?」

「……出て行かせていただきます」


 寮の自室で寝ているだけではツマラナイ。

 だから、僕は、ミィシャとミリィを訪ねることにした。


「スマン……少し休ませてくれ」

「え!?

 どうなされました?」


 ミィシャが過剰に心配するが、ここには、来客用の布団も一応、用意してある。

 ただ、静かで環境の良い場所で休ませて欲しいことを告げた。


「……ポーション、要る?」


 ミリィが訊ねてくるが、丁重に断る。


 昼には、ミィシャが食事も作ってくれた。

 どうやら、食べられる野草も集めているようで、しっかり塩味のする調理がされており、しかも、肉ではなく魚を出された。

 正直、消化も弱っている可能性のある今の僕にはありがたい。

 肉よりは、魚の方が柔らかくて、消化の負担も軽そうだ。

 川魚だが、大変美味しかった。

 おかげで、昼食の後、昼寝を軽くしたら体調は落ち着いてしまい、僕は、この際に別荘を建てることにした。


 別に、ミィシャ・ミリィの家と構造を変える必要は無い。ならば、使うメソッドは同じで良い。

 必要となるのは、素材となる木。

 魔法で伐採し、ついでにスペースを確保する。

 メソッドの実行を始めてからは、流れるように僕の別荘が組み立てられた。

 あとは、水を得るためのマジックアイテムを設置したり、ベッドを余った木材で作って、布団を敷いたり。一応、魔法の鍵も備えた。


 環境としては、僕を除いて、ほとんど人が手を入れていない森の中。清々しく美味しい空気の、養生には向いていそうな場所だ。たまに疲れたら、ここに休みに来ようと決めた。


「ふぅん……」


 そして、テーブルの向かいに座り、何故か僕と一緒にお茶を飲んでいるルシエル――


「何故、来た!?」

「……一応、心配して、ですけれど?」


 不機嫌そうだ。

 例の果実もお土産としてテーブルの上だ。後で、あの親子にあげよう。


「……随分、お元気そうですこと」

「ああ。……どうやら、疲れていたらしい。

 静かで清々しい環境で一眠りしたら、落ち着いた」

「貴方が魔法を使えるという噂は、本当のようですわね」

「……魔力を使わないスキルが、魔法だと言うのならな」


 以前に考えた理由で言い訳にしようとしたのだが。


「パパが、同じような魔法で城を作ったことがありますわ。

 1つ、私の別荘として、卒業のお祝いに建ててもらいましたの」

「ああ……そんな魔法もあったなぁ……」


 睨んでくるルシエル。


「……教えなさい」

「何を?」

「魔力無しで魔法を使う方法を!」

「断る。僕の奥の手だ」


 分かっているのだろうか?

 既存の魔法で建てた城ということは、全て、基本構造が同じということだ。

 だから、魔王は基本、同じ構造の城に住んでいる。わざわざ、人を集めて自力で建てない限り。


 ……いや。

 僕と敵対することは、視野には入れていない発言か。


「ミリアちゃんに、ここのことを報せても?」

「……何か問題が?」

「女を2人囲ってると――」

「マテマテマテマテ!!」


 お茶を口に含んでいたら、吹き出しているほどの発言だ。


「何故、そんな誤解を招く発言を!?」

「……私も、この近くに別荘があったら、あの仕事をするのにも便利そうですわねぇ~」


 ……大体、読めた。


「……口止め料、だな?」

「ご理解が早くて助かりますわ」


 ため息が出そうだが、ぶっちゃけ、大した手間ではない。1時間もかかる作業ではないし、木の多いこの近くなら、魔法を何度か使うだけと言えば、それまでのことだ。魔力無しで魔法を使う方法を教えるより、よっぽど問題の無い条件だ。


「仕方ない、か」


 確かに、ルシエルに任せた仕事でも、彼女がここに別荘を持っていると、便利であることは間違いない。ただの建前であったとしても、それは認めざるを得ない。


「ちゃっちゃと済ますか!」


 外に出て、ややヤケ気味に魔法をどんどんぶっ放す。材木が出来たところで、ルシエルに場所の希望を聞くと、僕の別荘のすぐ隣ということなので、それなりの間隔を空けたところに建てる。下手に文句を言われるよりは、希望通りにしないと、面倒そうだったからだ。


「……少し時間をくれ」


 水を供給するマジックアイテムのストックは、辛うじてあった。ベッドは作ったし、布団も、何故予備を用意していたかは忘れたが、あった。だから、差し当たって問題となることは、1つしか思い当たらなかった。


 材料は、クリアマナ1つと、ある程度の金属。

 形状は、既に作成済みのメソッドを発動させれば良い。パターンも幾つかあるので、今回は、グリフォンを象ったペンダントにした。


 問題は、これに込める魔法の術式だ。


「集中するから、しばらく放っておいてくれないか?」


 別荘に戻り、テーブルにペンダントを置いて、椅子に座って目を瞑る。

 意識を、魔界の法則に向けた。

 鍵をかけたり外したりする魔法の構成を見た。

 ……大体、構造は理解した。

 新しいメソッドの組み立てに移る。

 インスタンスは、このペンダント。これさえ所有していれば、このメソッドを使えるようにする設定は、マジックアイテムのメソッドを組み立てるための基本なので、そう難しくない。

 あとは、鍵をかけたり外したりする魔法を、僕に組み立てられる範囲で単純化し、模倣して組み立てる。

 鍵がかかっていない時は鍵がかかるように、鍵がかかっている時は鍵が開くように、『if文』を構築する。

 残念ながら、強力な魔法の鍵でもなければ、どんな鍵でも開けられてしまう魔法が発動する、若干問題のあるマジックアイテムが仕上がることになってしまうが、特定の鍵をかけたり外したりする魔法にするのは、僕の未熟な技術では、残念ながらそんな複雑なものは組み立てられない。

 あとは、この魔法を発動させるマジックアイテムに加工するメソッドは、以前に組み立てたもので何とかなるので、あっさりだ。


 時間にして、1時間ほどかかった。


「鍵をかけたり外したりするのは、このマジックアイテムを使ってくれ。

 くれぐれも、悪用するなよ?」

「分かりましたわ。

 随分とサービスしてくださるのね」

「その代わり!

 ……今回の件について、余計なことを言ったり、繰り返し何かを要求したりはするな。

 その場合には、こちらにも考えがある」

「……貴方の機嫌を損ねることは、私にとって本意ではありませんわ」


 とりあえず。

 多少、余計なものがついて来たが、いざという時の逃げ場を確保できたので、今はそれで良しとすることにした。

 ミリアには、そのうち……旅行とでも称して、連れて来よう。


 風邪もすっかり治ったようだし。

 明日からは、またバリバリ働かなければなるまい。

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