テント設営です!
「こんにちわ、ユキだよ~」
『こんゆき~』
『こんゆき!』
『こんゆきー。またお外だ』
「うん、今日は告知の通り山の中からのアウトドア配信をお届けするよ」
そう言って、カメラの前から体をずらして周囲の光景を映す。まだ設営は何もしていないからそこに映るのは地面と周囲を囲む木々だけだ。
『あれ、本当に山の中?』
『キャンプ場じゃないの?』
「うん、キャンプ場じゃないよ。あ、ここの土地自体は知人のもので、許可は取っているからそこは心配しないでね?」
まあ知人というか今の所有者はお姉ちゃんなんだけど。
『配慮〇』
『でもだとしたら危なくないの?』
「それも心配なし! この辺りには大型の動物はいないし、近くに避難場所もあるから大丈夫」
これは嘘。熊はこの辺りにはいないらしいけどイノシシや猿、鹿あたりはいると聞いているし、近くに避難場所はない。だけど大丈夫なのだけは本当。例の神パワーを使って、大型の動物は近寄れないようしているからね。当然そんなことは皆には伝えられないけど。
『もしちょっとでも危ないと思ったらすぐ逃げるのよー』
「うん、心配ありがと! でもちゃんといろいろ考慮してるから安心してね!」
『そういえばユキちゃんってキャンプ経験ってあるの?』
「ない! 初心者なので、いろいろ手際が悪いかもしれないけど多めに見てね!」
『胸を張って言ってて可愛い』
『設営からちゃんとやるんだ』
『結構長時間配信する感じ?』
「うん、する予定。流れとしては設営して、キャンプ飯作って、星空見ながら雑談しよって感じかな」
『これはロマンチック』
『割と本格的な流れだな』
『テントが上手立てれなくてぺしょぺしょになっているユキちゃんの姿を幻視した』
「残念ながらそんな事にはなりませーん。それじゃ早速……今日のキャンプ関連グッズはこちらでーす」
そう告げながら、カメラを持ってきた荷物の方に向ける。
『割とがっつりした分量で草』
『よくこれだけの量を山の中まで持ってこれたね?』
「車で運んできたにきまってるでしょ」
嘘だけどね。
「それじゃテントから立てていくね。作業中はコメント欄はあんまり反応は出来ないと思うので見守っててください。あ、あと初心者だから簡単な奴使ってるのでそこもご容赦!」
『はーい、了解』
『ょぅι゛ょの頑張る姿を見守る会』
『がんばれ~』
さて、と。
今回のキャンプに関しては、神パワーはあまり使わない予定だ。動物避けと虫よけ、あと夜の雑談中のちょっとしたアクセントに使う以外は、普通に自力で頑張る。
まずはテントを袋の中から引っ張り出す。
『お、これネイチャーズのワンタッチテントか?』
うわぁ詳しい人いるなぁ。メーカー名含めて当たりである。
ちなみにワンタッチテントというけど、本当にボタン一つで完成するわけではないけどね(そういうのもあるのかな?) とりあえずグラウンドシートを敷いてその上でテントの骨組みを開いて、両サイドの天井部分を持ち上げる。うん、体のサイズでちょっと手間取ったけど、案外うまくできた。この商品自体配信サイトで女性のソロキャンプ動画でオススメしていた奴だったんだけど、設営の様子も見れたので助かった。やっぱ図面より実際建ててるところを見た方がわかりやすいよね。
それで、後はフライシートだっけ? その上にカバーをかぶせるんだけど……絶望的に身長が足りてないので、背伸びしつつぴょんぴょん跳ねて、なんとか骨組みの上にかぶせていく。
足場を用意しておけばもう少し楽だったのでは? と思うかもしれないが、勿論わざと用意しなかった。
お姉ちゃん曰く「ちっちゃい子がぴょんぴょん跳ねて頑張ってるのは萌えポイント」だそうだ。ようするにわかっていてやってるジャパニーズあざとい行為である。
……これさぁ、お姉ちゃんが何も言わなければ気にならなかったのにさぁ。聞いちゃったせいでやってる時なんともいたたまれない気持ちになったよね。そのせいで手先も狂ったのと、あんまり簡単に上手くいかせちゃいけないって考えたせいで大分苦戦して、なんとか片付けた頃には頬が朱色に染まっていた。
そのせいでコメント欄には
『ほっぺた真っ赤にしてかわいい』
『よちよち、一杯頑張ったね』
とか言われてたけど、朱くなっていたのは沢山動いたのが理由ではないことだけここに記して置く。




