新企画! なんて!をつけるほどのものでもないけれど
「よし……よし……全部よし!」
周囲は完全に闇に包まれ、我が家から漏れる灯りのみが周囲を照らす限界集落の夜(いや、他にも家あるけどそこそこ離れてるからね……だからこそ全く音を気にせずに配信できるわけだけども)
机の上にある機材を指さし確認してから、うんと一つ頷く。
今回、新しい配信をするために機材を追加購入したり新調したりしたので、こういった確認は大事である。配信始めてからミスに気付いたら大惨事だからね。ちなみに事前に動作確認も済ませてある。当然である。
……ふふふ、また出費だぜ。さすがにもう収益化は通っているんだけど、入金はまだ先だからね。
まぁそれに関してはいい。貯金はまだあるし、収益に関しては手ごたえもある。今後もいろいろ投資としてお金は使う必要があるけど、お金に関してはそこまで心配しないで良さそう。一応バイトもしてることだし。
とにかく今必要なのはお金ではなく、ボクの事を熱心に考えてくれるリスナーを増やす事。そろそろイメージイラストとかも頼みたいしなぁ……あーいうの頼んですぐ上がるもんでもなし。一応お姉ちゃんが今ピックアップしてくれてるみたいだからそろそろ一回相談するかなー。正直選定とかデザインとかはお姉ちゃんに任せた方がいい気もするけど。
それ以外にも配信もいろいろやれることやっていかないとね。今日これからする配信もその一つだ。オーソドックスだけど割と人を集めやすいコンテンツの一つ……であると思う。いや、Vtuberだったらそうだと思うんだけど、実写系だとどうなんだろ?
まあいいや。覚悟も決めたし、告知した配信の時間にもなった。始めよう。大きく深呼吸をしてから、ボクは配信開始のボタンを押す。
「こんばんわ、ユキだよ~」
『こんゆき』
『こんゆき~』
『こんゆき!』
開始の挨拶をすると、コメント欄に妙に統率の取れた挨拶が流れる。いや、別にこっちのほうから指定した訳じゃないんだけど、誰かが言い出したらみんながいいだしたんだよね。こないだの時は急な表配信だったのと昼間だったせいかまばらだったけど……
というかコメント欄の流れが速い。明らかに今まで見たことない名前の人が結構いるし、同時接続も大分伸びている。チャンネル登録も伸びてるし、当たり前と言えば当たり前だけど。
てか、このカメラの向こうにそんなに人がいるのかぁ……うん、考えすぎるのはやめよう。それだけの人が今自分を見ていると思うとなんかむずむずしてくるし……直接視線を感じている訳じゃないから深く考えなければただの数字でしかない。滅茶苦茶失礼な事いってる気もするけど!
『格好気合入っていて可愛い』
『クラシカルロリータ? そんな服持ってたんだ』
『初配信の時の服だ!』
おっと、古参(といってもまだ配信始めてそれほどたってないけど)のリスナーがいるね?
そう。今回は初配信の時に来ていたクラシカルロリータのワンピースを身に纏って配信している。初配信以降はそこまで気合入れた服装はしてないので、最古参のリスナー以外には新鮮な姿だと思う。
「せっかくだからまた着てみたんだけど、どうかな? 似合ってる?」
そう聞きながら、意図的に少し首を傾げてみればコメント欄は
『むしろ似合いすぎ』
『可愛さの暴力』
『まぁゆきちゃんは何着てもかわいいんだが』
『他にもそういう服持ってるの?』
「残念ながら持ってない……ん?」
バイブも着信音も切っておいてあるスマホに通知が来ているのが目に入ったので見てみたら、お姉ちゃんから「着せ替え配信する?」とメッセージが来ていた。
お姉ちゃん反応早すぎない!? それで人気がでるならやるべきなのかなぁ……とりあえずスルーしておこう。今考える事じゃないし。今日のメインの内容に早速入ろう。ボクあんまり雑談は面白くできないしな。
『どうしたのー?』
『トラブル?』
「んーん、なんでもないよ。それじゃ早速一曲目に行くね」
そう、歌枠配信である。




