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プロローグ

視界と認識は別物だ。


視界の端に映っているものはぼんやりと映り、中央にあるものははっきりとそれが何なのかがわかる。


対して、認識するということは通常、視界の中央や端にあるものが一体なんなのか、ということが知覚できるということだ。だから、認識は視界になくても成立する。


当たり前のことだが、認識は時間の経過に伴って徐々に薄れていく上に、再び認識を更新するか、認識を続けない限りは現実との乖離が激しくなっていく。しかし、情報が常に更新され続けるとしたら、常に視界の中央にあるものと同様に周囲の様子を知覚できるのではないだろうか?


難しい話は終わりにしよう。


簡単に言うと、世界の見方が変わる。


それだけだ。




「この腕輪は手首に対して相対位置が固定されています。だから、一度装着しますと紛失の心配はありません。また、ハイドという機能が付いていますので、生活の邪魔になる事もございません」


メガネをかけた細身の男性は大スクリーンの前でプレゼンテーションをしている。


彼の立つ舞台の前には多くの報道陣と政治の重鎮、そして、世界を代表する資産家たちが最新鋭の情報の蜜に吸い寄せられ、さながら寿司詰めにされていた。


清潔感にあふれた服装に優しげなマスクは世の女性は虜にされ、同時に世界中の男の嫉妬を買っているらしい。


世界の技術レベルをたった一人で50年は更新したと言われる彼の所業は人類の難問解決に寄与した。


食糧問題は彼によって完全終息したと言われている。最低限で無味無臭の食糧を脳をだます事によって高級料理に変え、満腹度も同時に吊り上げるという技術により、飢える人が世界から消えた。同時にシェフや高級食材も駆逐され、多くの人が職を失ったと言われている。だが、彼らも路頭に迷えど、食の心配は必要なくなった。なぜならこの技術で飢え死ぬことはなくなったのだから。


そして、たった今発表する技術は世界から全ての憂いを取り除くだろう。


「さぁ、細部の説明を終えましたね。実は伝わりやすいプレゼンテーションをすることよりも私が優先したことがありましてね。最後に主要な部分を詰め込むことにしたんです。まぁ、簡単に言うと勿体ぶっていたんですよ。それくらいこの技術は人類に与える影響が大きい。なぜなら」


スクリーンの画面が切り替わり、調子のいい音楽が流れ出す。


「これが全ての人類の問題を解決するからです」


この後各国で合意が行われ、世界は本当に変わった。


人類は真の安寧を手にした。それがどんな強引で倫理に反することであっても、である。

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