二〇話、見えない未来へ~Part-1~
横須賀海軍病院401号室
「…ん。」
武は、目を覚まして上半身を起こした。
「…あ。」
「スゥ~…スゥ~…。」
武の隣には、まだまだ起きそうにない千早が居た。
「助かった…のか。」
そう言ってまた眠りにつく武。
数時間後、武は再び起きた。
「ファ~…武?」 その時、千早が目を覚ました。
「おう。目が覚めたか…」
「武ー!!」
千早は、武を見付けるや泣きながら武に飛びつく。
「おっ!?」
武は、突然のことに姿勢を崩して…
“ズドンッ!”
「痛だだだだだ…。」
…押し倒された。
「ダ~ゲ~ル~!!」
千早は、大泣きをして武の胸にうずくまる。
「千早、大丈夫だ。ここは、横須賀の海軍病院だ。」
「うぅぅぅ…うん…」
千早はまだ泣いていたが、徐々に落ち着きを取り戻す。
「千早、何でロケット…取りに戻ったんだ?」
千早が落ち着いたので、武は何故青葉が沈没する時に自分の部屋にあるロケットを取りに行ったのか聞いた。
「…大切な物だから。」
千早は、何時も武から貰ったロケットを身に付けていた。流石に勤務の時は外していたが…。
「お袋のお古だぞ?」
「良いのよ。私に取って…大切な物なんだよ。」
千早にとってこのロケットは、とても大切なものだ。
一方、各新聞社は青葉の沈没と謎の駆逐艦について報道していた。
というのも何処から嗅ぎ付けたのか、青葉のクルーを乗せた駆逐艦秋月が横須賀へ入港した時には、鎮守府前が新聞記者による人集りが出来ていた。
横須賀鎮守府の一室
「何処のアホがこんなことしたんですかね?」
和田は、マスコミの人集りに愚痴を言う。
「知らんよ。おかげで、ゲーセンも行けないじゃないか。」
大滝も愚痴を言ってるが、和田とは確実に違う愚痴だった。
あんた、本当に戦闘以外じゃあやる気無いな。
「とりあえず、上の指示があるまで横須賀鎮守府で待機ですからね…」
橋本はそう言って、木刀を手に取り席を立つ。
「お?橋本少佐は何時もの素振りかね?」
「はい。何もしていないと、腕が鈍りますので。」
「そうかそうか。自己鍛錬は大事だからな。」
大滝は橋本の志に関心する。
「それに艦長の根性治しにもと思いまして…。」
「はい。聞いたわしが、愚かでした。」
橋本は、部屋から出て素振りへと行った。
「和田君、わしそんなに根性無い?」
「それは自分自身に聞いてみたらどうでしょうか?」
和田は、そう言って戦闘詳報を読み返す。
「…わし、やることないな。」
「艦長。報告書まだ出してませんよね?」
「…はい。」
大滝、渋々報告書を書く。
武と千早が目を覚ましてから数日後…
「ありがとうございます。」
武と千早は無事退院した。
「千早…ちょっと寄り道したい。」
「え?」
武は、病院から歩いて数分のところにある丘へと千早を連れて向かう。
そこは、見晴らしが良く蒼々しい海と空が一望出来るところだ。
「綺麗…。」
「ああ…。」
千早は身を乗り出して海を見渡す。
「こうしていると、四年前を思い出すな…。」
武は、そう言って近くにあるベンチに腰を掛ける。
「え?」
千早は、何のことだか分からずに武の方を振り向く。
「まあ、見て思い出してね…。」
「…似てる?」
千早は、似てないと言わんばかりの顔をした。
「まあ、いいさ。あの時、俺が言ったこと覚えているか?」
武は、四年前の出来事を持ち出した。
「え~っと…」
武は、千早が困った顔をして思い出しているところを眺めて居た。
「“俺はお前のことが好きなのかもしれない。”」
「…え?」
千早は驚いた顔をした。
「…まあ、その後に“なんでもないや。今さっきのは忘れてくれ。”と言って有耶無耶にした。」
「…あ!そうだ!!それで、直ぐに帰るとか言ったよね?」
ようやく千早は、あの時の武が言ったことを思い出す。
「そうだ。だが、もう躊躇の時間は潮時にするよ…。」
「え?」
武は、千早の目の前で肩膝を着く。
「千早…俺は、お前のことが好きだ。」
「!?」
千早は、驚いた顔をして武を凝視する。
「…遅いよ。遅いよ~。」
「今まで、言えなくてごめんな。」
武は、泣き出した千早を抱きしめる。
「あの時から…あの時から、ずっと待っていたんだよ~。」
「…待たせて悪かった。でも、もう待たせはしないし、離しもしないさ。」
「もう…こんな時に限ってそんなカッコいいこと言うんだから…」
千早、そうはいうが笑顔だった。
青葉沈没から一年後の春…
春は、多くの人々にとって一つの区切りの時であり出発の時でもある。この日、ある二人がその区切りと出発の時を迎えた。
「なんかこう…恥ずかしいな。」
新郎服姿の武。
「花婿がそんなんじゃあ、余計恥ずかしいぜ!」
様子見に来た酒田が武をからかう。
「先輩はケチを付けてはいけないのです!」
“ポカッ”
…ではなく、
“ドスッ!”
かなり鈍い音がした。
「グホッ!?」
酒田は、腹パンを喰らって倒れた。
「これが七海の少しながらの本気なのです!」
酒田の高校時代の一つ後輩:朝比奈 七海は、えっへんと言わんばかりに勝ち誇る。
「お前、大変だな。後輩に手出して返り討ちの上に告白されて…」
武は、伸びている酒田の頭をそこらへんにあった棒でツンツンと突く。
「七海が実先輩を更生します。やはり私が居ないと実先輩はダメ人間になりそうなのです!」
「お、おう。」
武は女って怖いなと思った。
「それよりも、お二方はとってもお似合いなのです!」
「ありがと!七海ちゃん!」
「えへへへ♪」
一方、千早と七海は会話に花を咲かせていた。
「さ~て!行きますよ~!」
七海が千早の背中を押して式場へと急がせる。
「酒田~遅れんじゃね~ぞ~。」
武も七海に背中を押されているが、爽快な笑顔だった。
因みに、結婚式場は横須賀海軍基地に程近い教会だったりする。




