二一話、見えない未来へ~Part-2~
横須賀海軍基地周辺の教会…
「出来るだけ来いとは言ったが…。」
「全員来るなんてね~。」
青葉クルー全員が来ていた。その為、教会の中には入りきれず幹部数名とCICクルー、千早と一緒に寝起きした山本と石田しか居なかった。
「お!出て来ました!この幸せ者!!」
「今日に限って、何言われても怖くもなんともないぜ!!」
武は、ご機嫌だ。松平の茶化しは屁でもないようで…。
「千早センパイ!おめでとうございます!!」
「千早先輩、おめでとうございます。」
山本と石田も歓迎の声を掛ける。
「ありがとう!」
千早も御機嫌だ。
「にしかし、二人とも予備役に入るこったないだろうよー。」
「まあまあ、そういうなって。武は、千早とイチャイチャしたいんだからさ。」
若干落胆気味の松平に、下手すると武が怒りかねない発言をして宥める酒田。
そう。武と千早は、予備役入りをして海軍を退役した。
「ま、否定はしないが言い過ぎだぞ。彼女出来たからって、調子に乗ると痛い目に…」
「何!?酒田に彼女だと!?」
松平は、酒田に彼女が居たことに驚愕と怒りを覚えたらしい。
「貴様…許さん!!」
んだとー!?と、揉み合いを始める松平と酒田。
「何しに来たんだか。あの二人は…。」
武は、松平と酒田の取っ組合いに呆れている。
「おめでとう、真田 一曹。…おっと、今は真田さんの方がよろしいかな?」
満足そうな笑みを浮かべた大滝がいた。橋本をはじめ、和田や小倉もいた。
「ご自由に呼んで構いませんよ。大滝“校長”?」
「うむ。」
首を縦に振る大滝。今は江田島の士官学校の校長となり、士官候補生を育て上げている。
「橋本 少佐ー!」
山本たちと共に、千早が橋本のところへと駆け寄る。
「おいおい、私はもう中佐だぞ?」
「別にどっちでもいーじゃないですかぁ。」
さりげなく上官侮辱(?)だが、もちろん咎める者はいない。
「橋本さんは、今は艦長でしたね。」
武も橋本のところに寄る。
「駆逐艦 島風だな。ようやく要領を覚えてきたよ。」
照れくさそうに語る橋本は、どこか新鮮さを感じる。旧海軍から今に至るまで、初の女性艦長となった彼女。今後の活躍に期待大である。
「しかし西園寺のドレス姿は可愛いなぁ。ちっちゃくて子供みたいだ。」
「ちょっとー、それはさりげなくバカにしてるんですかぁ?」
アハハと笑いがこぼれた。
「真田さん、真田さん。」
「ん?…あっ。」
武は、呼ばれた方を向いて驚いた。
「千早、千早。」
「何…え?」
千早も、武が振り向いた方を向いて驚いた。
「航太!!」
そこには、千早の唯一無二の家族である西園寺 航太が居た。
「今朝、出所したんだけど…その、恥ずかしくてね…。」
航太は、照れくさそうにして頬をポリポリとかく。
「もう…ばかぁ。」
千早は、感無量のあまり涙目になる。五年以上も我慢していたのだ。だが、これでようやく苦しみから解放される。
「こんな姉ですが、よろしくお願いします。」
「いや、それを言うのは俺だよ。こちらこそ、よろしく。」
その時、爽快な風は武・千早・航太の間に吹き抜けていった。
結婚式から数年後…
「千早ー!早くしてくれー!時間が無いぞー!!」
“西園寺”の表札の出ている家の玄関。
『待ってって!きゃっ!』
“バターン!”
…嫌な音が聞こえた。
『もうっ!何でこんなところに椅子があるのよっ!』
「いや椅子があるところを通るなよ…。」
呆れる武。西園寺家は、そんな狭い家ではないはずだが…。
「ハァハァ…。よし、準備満タン!」
「それを言うなら準備万端だろ。」
冷静に突っ込んでおく。
「じゃあ、航太。子守よろしく。」
「はい。」
玄関では、三人の子供を抱えた航太が居た。
「度々すまんね。」
「いいですよ。まだまだ姉貴がしっかりしてませんから。」
「もー!」
千早は、航太にポカポカ攻撃をする。だが、航太には効いてないようだ。
「全く…千早、行くぞ~。」
武は、埒が明かないと千早を強引に引っ張る。
「いってらっしゃ~い。」
航太は手を振って、武と千早を見送る。
駐車場に止めてある車は、エボ6と“正式”購入したホンダ・S2000がある。
因みに、エボ6は武が航太に譲った。
「よし。乗るぞ。」
「おー!」
武と千早は、S2000に乗り込んで目的地へと向かう。
今日は、武曰くの“連中”に会いに行く日である。
「お、来た来た。」
集合場所に着くと、例の四人がすでに待っていた。
「ゴメーン。待ったー?」
「全然待ってないですよ。今来たばっかりです。」
石田が笑顔で答えた。山本がウンウンと頷く。
「このメンバーが顔を揃えるのは久々だな。」
「ああ。変わってねーな。」
お前こそ変わってねーよ、と酒田。
「えーと、西園寺 武になったんだっけ?」
「そうそう。俺が入ったんだ。」
千早は真田家に入るつもりでいたらしいが、航太の事を考えた結果だった。
「ああそうだ、二人には言っておかなきゃな。」
「?」
松平の言葉に、キョトンとする武と千早。山本がカァーっと赤くなっていた。
「ちゃっかりしてるよな。あいつ、山本さんと付き合ってるんだぜ。」
「ふーん。…は?」
「ウッソー!?」
得意そうな松平に、恥ずかしそうな顔をする山本。
「晴奈ちゃんホント?」
「…はい、まだ二ヶ月ですけど。」
どうやら、また青葉の残したタネが芽吹いたらしかった。
「そっか。…おめでとう!」
「あ、ありがとうございます!」
パチパチと拍手をする千早。華奢な山本が、さらに華奢に見えた。
「じゃあみんな、それぞれの道を歩みつつあるんだな。」
「まあ俺は海軍に残るけどな。」
「そうか…。がんばれよ。」
お互い顔を見合わせ、ふっと笑った。
巡洋艦青葉と、そのクルー二人の物語。
題して…『生い茂る青葉-見えない未来へ-』
武、千早、いつまでもお幸せに…。




