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成長

「ちょっと桜花、先行かないでよ」

「ごめ〜ん佳織、ほら見てよ雪代先生だよ。何も変わってない、マジであの日のまんま」

「興奮するのはいいけど、衣織と真衣引き上げるの手伝って!」

「ああそうだった。先生ちょっと待っててね」

窓をいきなり割って入ってきたと思ったら、さらに3人が部屋に入ってくる。...ああ、まだ確かめてはいないが十中八九、スポーツバカの女子4人組であろう。佐々木さんを見た事で、他の生徒も大人としての自覚が少しは芽生えたかなという淡い思いは、初手でかき消された。


「おお、先生お久しぶりです。本当に変わってないですね。私は...

「[][][]なさい」

「え?何ですか先生」

「全員そこに座りなさい!」

私は在らん限りの声を出して4人に告げる。

「お〜、懐かしい先生の『噴火』だ。みんなやべ〜ぞ、久しぶりに落ちてくるぞ」

伊藤桜花の一言に、他の3人が笑いでもって答えている。それが私にさらなる怒りを込み上げさせる。....『勝てる』という言葉が突如脳裏によぎる。勝てるとは何か?疑問に感じたが、同時に思い出す。私は最初からこの()()使()()()()()()()()()

「座りなさい」

「またまた、先生もわかってるでしょ私達は...え?」「え!何これ」「うぐ」「き、切れない」

再度の言葉にも彼女らは笑いで返してきた。故に私は手から白い紐を作り出し、全員を縛り上げ強制的に座らせる。屈強な彼女らにもこの紐は切れないようだ。

「さてお話をしましょうか」

強制的に座らされた4人の前に立った私の顔は笑っていた。


「はあ はあ 先生大丈夫ですか!」

「まず、人があんなにいる中で走るって、何をしているかわかってるんですか?わかってませんよね、わかってないからやってるんですもね。見なさい!あなた達が通ってきたところを、屋台の商品がひっくり返っているじゃないですか。転んでいる人物もいますね。大怪我しているかもしれないですよね?それに何ですか窓から入ってくるって、百歩譲って窓から入るのをよしとしても、なぜガラスを割るんですか?割る必要ないですよね。どうなんですか?」

「あの〜、私達3人は関係な...

「黙りなさい」

低く、しかし耳に強く残る言葉があたりを包む。4人は完全にやらかしたことを理解していたが、もう遅かった。そこに3人の男女が入ってきた。その内の1人は佐々木玲奈であった。

「あ!い、委員長助けて先生が...

「あら、不審者が王城に侵入したようですね。本来許可の無いものの王城侵入は近衛兵が対処するのですが、私の権限で侵入者の処罰を雪代彩花様にお任せします」

「な!ちょ玲奈ちゃん?」

「あら、私の質問には答えないのに、佐々木さんの言葉には答えるんだ?...」

「いやあ....そんな、ねえ...そんなことないよね」

伊藤さん以外の3人は目を逸らす

「安心しなさい、私は平等だから」

そうして強制的に座らされていた4人の頭に思いっきり拳を振り下ろす。


「すみません、先ほど説明しておけばよかったです...」

「いや、私も頭に血が上りすぎていたわ」

私が振り下ろした拳を受けた4人はなんと気絶してしまった。どうやら私の持つ固有スキル「勇者」の副次的効果により身体能力が向上しているとのことだった。

「まあ4人は以前も王城を破壊したことがあったのでお気になさらず」

以前もあったのか...ならもう少し強くしとけばよかった。

「えと、そしたら先に紹介しましょうか。こちらが...

「堂島剛です。今は第三騎士団団長をしています」

「剛くんが騎士団の団長?」

堂島剛くんは家が剣術道場であった。しかしその剣技は相手が泣いて許しをこうまで徹底的にやるものであり、中高生相手に日々、武者修行として勝負を挑んでいる。結果恨みを持ったもの達が学校にやってきて、他生徒を萎縮させる事態になってしまった。そんな彼はボサボサであった髪を綺麗に整え、エストール王国のマークが書かれたスーツに身を包んでいる。

「ええ、俺『剣聖』っていうスキルを持っているんです。先代の団長に剣で勝って今の席手に入れたんです」

「ふふ、勝つためにすんごい努力していたんですよ剛くん」

「やめろ玲奈、言うんじゃない」

そういえば2人は家が隣同士だったっけ?そんな事を考えていたら、隣のもう1人が話し出す。


「はいはい、惚気は後でやってください。えと、覚えていますでしょうか...音無結です」

「うん!覚えているよ。音無さんは随分変わったね」

音無結、クラスの図書委員であり無口な性格、周りに基本合わせるように動いていた音無さんが、2人に苦言を呈していることに驚かされるが、身長や容姿がほとんど変わっていないためすぐにわかった。

「以前と違ってメガネかけているんだね」

「はい、今は王城の書庫の管理人を務めています。ただ、どの本も地球より文字が小さいから日常的にメガネをつけるようになったんです」

「2人とも立派な仕事についているのね、すごいわ!」

「ま、俺の実力なら当然だな」

「いえ、私も剛くんも先代の人からの推薦でなれたんです」

「いいえ、それでも推薦してもらえるだけの理由があるんだから、胸を張りなさい」

「「...ありがとうございます先生」」

音無は素直にお礼を言ったが、剛くんは少し恥ずかしそうであった。


「あ、目が覚めたみたいですよ」

2人の紹介が終わったところで、4人組が目を覚ます。

「あ!ごめんなさい、もうしませんので」

開口一番4人から出た言葉がこれだった。綺麗に額を畳につけた土下座ポーズである。

「別に、先生もやりすぎてしまったわ、ごめんなさい...ただ、次また同じようなことしたら〜わかってるわよね?」

その言葉に4人は唾を飲み込む。

「ほら4人とも自己紹介して」

私の促しにより端から話し始める。まず一番左が窓ガラスを割って入ってきた張本人伊藤桜花、佐々木さん同様大きめの帽子を被っているのが花屋佳織、他の3人よりも小柄ながら長刀を背負っているのが足立衣織、逆に一番の高身長で大きめの盾を背負っているのが高野真依であった。うん、全員予想通りの人物であった。

「4人は隣のオダル王国を中心に活動する冒険者なんです。今回はたまたま王都に来ていることがわかったのでお知らせしたら...こんなことになってしまい本当にすみませんでした」

「大丈夫だよ。全部このこと達のせいだから」

私が笑顔で持って4人の方を向くと、皆一様に肩を振るわせる。


佐々木さんが彼女達を呼んだのは、どうやら他国に行く際の護衛役のようであった。

「実は『勇者』のスキルが問題なんです。エストール王国は王族より、貴族の力が強いんです。ただ国の重要な役職を王族側の人間が占めているために、均衡を保っているんです」

「へ〜、そうなんだ」

「いや、私説明しましたからね桜花さん。ちなみにその重要な役職というのが、剛くんの騎士団長と結さんの書庫の管理人、そして私の宮廷魔法師団団長になります」

つまり、転移者は王族側ということか。

「で、貴族が厄介なのね」

「はい、勇者のスキルは未知数の可能性を秘めた力なんです。そのため貴族が先生を陣営に引き込んだ時、王家を支持してくれている貴族が離れてしまう可能性があります。特に高位の貴族ほど強引な手が多いですから」

「私が生徒達を困らせるようなことをするわけがないのにね〜」

「それでも用心するに越したことはないんですよね」

「うん、わかったは寂しいけど早めに出ることにするね」

「それで先生は何したい?」

「え?」

したいこと...そうか、ここは学校ではない、先生としての職務をする必要はない。何なら教えるべき生徒は皆大人になっている。むしろこれから、この世界のことを色々教えてもらう側だ。教員の仕事が忙しすぎて、やりたいことが思いつかない。

「思いつかないなら冒険者やらないですか先生!先生ならちょっと鍛えれば、敵をバッタバッタ倒せるよ」

4人組が熱い視線を向けてくるが、荒事は本来苦手であるためできれば避けたい。

「ま、まあ今すぐにではなくて大丈夫です。先生の国境の通行証とか、身分証とかを作らないといけないので、数日は滞在してもらいます。それまでに考えておいてください」


私は頷くと、皆に近況を聞き始める。

「失礼します、玲奈団長。緊急の連絡になります」

いよいよ明るい雰囲気になろうとしていたのに水を刺されてしまった。私がイラッとしていると佐々木さんの表情が曇ってくる。

「すみません先生、エドガー公爵がぜひ先生を歓迎パーティーにご招待したいとのことです」

ああ、確実に面倒なことが起こりそうで溜息が出てしまう。

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