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皆してどこ見てるんですか!

「はあ〜、困るんだよね雪代くん。また親から苦情が来たよ、今度は1年生からだ」

「すみません」

「いやあのね〜、すみませんで済むんだったらこっちも呼び出してないわけ。あなたの6年2組だけですからね、こう毎日毎日問題を起こしてるのは。早急に被害者生徒と親に対して謝りに行きなさい!」

「わかりました」

「後ね、まだクラスの半分が『将来の夢』を提出していないでしょ、それも早く書かせて提出しなさい!」

「はい、わかりました」

「話は以上だ。行きなさい」


「う〜」

「お疲れ様〜、今日は早めに終わってよかったな〜」

「今日のテスト用紙印刷しときましたよ」

「ありがとうございます、田中先生、佐藤先生。早く話が終わったといっても、根本的な解決にはなっていませんけどね...」

「今回は鮫島くんでしたか?」

「はい。雨だからって校内で鬼ごっこを始めて、その最中に1年生とぶつかったんです」

「相手の子はどうなったや?」

「壁に掛かっていた給食服の袋にぶつかったんで、肘の軽い打撲で済みました」

「そら危なかったな〜、頭打っていたら大問題や」

「こういったら失礼ですけど、運がよかったと言うほかないです」

「とにかく、今後同じようなことが起こらないようにしないとね。同じ6年生の担任なんだから、私達に手伝えることがあったら遠慮なく言ってね」

「せやで!俺は7年、佐藤さんは教師暦10年の頼れる先輩方やで〜」

「...お2人共ありがとうございます」

「お!そろそろ俺たちも準備しますか。雪代先生は佐々木さんとの約束があるんじゃなかったですか?」

「あ、そうでした!すみません失礼します」

「ほ〜い、いってらっしゃい」「気をつけるのよ」

私は荷物をまとめると廊下を早足で進む


教師不足ゆえに2年目にして異例の担当クラスを持つことになったわけだが、私のクラスは問題が頻発している。私自身の実力不足もあるが、生徒の個性も強い子たちが集められていた。花火大会に自作の花火を持ち込むもの、常に筋トレしていて授業を聞いていないもの、不登校のもの。とにかく一体感がない。

「う〜、どうしよう...。いや!雪代彩花気合いを入れろ。まず気持ちが沈んでいたら変えられるものも変えられなくなる」

私は空いている右手で拳を作ると握りしめ気合いを入れる。

「な、何これ!」

「すげ〜、もしかして[][]じゃね!」

「み、皆落ち[][][][]だ」

気合いを入れたのも束の間、廊下にまで聞こえるほどの大きな声が聞こえてくる。発生源は6年2組からであった。しかも廊下からでもわかるくらいに強烈な光が、窓から放たれている。

『あ〜、今度は誰が何をしでかしたんだろうか。前回は教室を映画館に改造していたし、その前はゲーム大会を開いていたっけ』

私は諦めた気持ちになりかけたのを何とか回復させ、教室のドアに手をかける。

「皆おはよう。何して....

私の言葉はドアを開けた瞬間目に入ってきた床一杯の魔法陣により中断された。


「え?」

眩い光が満ちた教室から、一瞬の内に視界が変化した。少し苔がついている石の壁・・・いや、天井だ!

『ゴン』

「アダ!」

鈍い痛みが全身に走る。

「え、え!うそだろ。おい、大丈夫か」

誰かが近くにいるようだが、私はゆっくり意識を手放した。


「は!」

次に飛び込んできた景色は真っ白い天井であった。周りを見ると、どうやらベットに寝かされているようだ。服は白い服に着替えさせられている。と言うことは、ここは病院だろうか?

「あ、1番の患者様が目を覚ましました」

「お〜今行く」

やはりここは病院のようだ。私は体を起こし、入り口の方を見る。すると聴診器を首から下げ、白衣を見に纏った男性が現れた。しかし問題があった。彼の頭からは兎の耳が生えていたのだ。私の目線はそこに釘付けになった。

「ふふ、懐かしい反応だな。君に害を加えるつもりはないから手を出してくれないかな?」

「あ!すみません。えと、あの、その....」

「すまないが詳しい話は自分の口からは言えないだ。ふむ...問題はなさそうだね」

「あ...あ、わかりました」

私は兎の耳のついた男性になされるがままに検査を受ける。その後、メイド服姿の女性達に連れて行かれた部屋でスーツを着せられる。スーツは生地がとても滑らかで、オーダーメイドで作られたかのように体にフィットする。まさか私の体に合う服があるなんて...とちょっと感心していると、「王の準備が整いました。ご案内いたいします」とメイドに言われ長い廊下を歩き始める。

ん?今王様って言った?・・・そうか!生徒達のドッキリか。いや〜妙にリアルだから騙されてしまった。

「皆わかったよ、ドッキリでしょこれ。今流行りのあの〜あれでしょ...

「勇者様、もうすぐ謁見の間に到着いたしますので、私語はお控えください」

「え、いやこれドッキリ....勇者?それって...

「こちらからはお一人でお願いいたします」

私がメイドから放たれた発言に対して質問する前に、謁見の間の扉がゆっくり開き始める。


「雪代彩花様ご入場!」

両側に立つ甲冑姿の人物が叫ぶと、私はその前を恐る恐る歩きながら一番奥に進む。そこには豪華な服を見に纏い、頭に王冠を載せた物語でよく見る、いかにも王様な風貌の人物が座っていた。私が片膝をつくと男が喋り出す。

「まずは名乗ろう。私はエストール王国25代目国王カール・エストールだ。雪代彩花殿、病み上がりにも関わらず出向かせる形になってしまい申し訳ない。楽にしてくれ」

「私は確かに雪代彩花ですけど...なぜ名前を?」

「それについては私が説明します」

発言したのは右斜前に立っている大きな帽子を被り、メガネを掛けた女性であった。

「お久しぶりです雪代先生」

「え〜と...」

相手は私のことを知っているようだが正直誰だかわからない、私の知り合いにこんな人はいなかったはずだが...

「まあ無理もないですよね。想像してみてください、髪を三つ編みにして、もう少し丸いメガネをつけた姿を」

「三つ編み、丸いメガネ...え.....うそ.....佐々木さん?」

「はい!そうです先生、佐々木玲奈です。」

「どっ、どう言うこと?あなたの見た目は完全に大人....

「先生落ち着いて聞いてください。私たち6年2組全員が異世界転移したんです。ただし私たち生徒が来たのは30年前になります」

「3...0....年?ごめん要点だけまず教えて」

「わかりました。...ええと、30年前に私たち生徒はこの世界にやってきて、魔王を倒してくれと言われたんです。そこで魔王討伐に行ったり、この世界が抱える問題を解決したりしていました。ただ帰る手段がなくて、皆各々の生活を現在はしています」

「色々聞きたいことがたくさんあるけど、先に確認したいのはなんで私と生徒達でくるタイミングに差があるの?」

「えっと...それがですね...」

先ほどまでハキハキと喋っていた佐々木さんの目が下を向く。いや、周りの人たちの視線も私のある一点にに注がれている。

「皆してどこ見てるんですか?」

「すみません、実は異世界転移でこっちに来るあたり、一度体を分解して再構成する過程があるんですけど、対象の質量によって時間が掛かることが近年の研究でわかったんです」

「まさか...」

「はい...つまり、その...先生は2つの大変立派なものをお持ちなので、タイミングに差ができたんだと思います...」


あまりにもまさかな理由に対して、私は声が出せなかった。

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