31.推しの看病
夜中にふと、目が覚める。
まだ、体は熱い。
ふっと、気づく。
奏が、ずっと私の髪を撫でている。
「……奏?」
ピタッと、手が止まる。
「夕莉?起きたのか?」
私は目だけで奏を見る。
「うん」
「大丈夫か?」
ふふっと私は、笑う。
「さっきよりはね」
暗闇の中、奏がほっと息を吐くのがわかった。
それから気づく。
額に、冷えピタ。
あれ?私貼ったっけ?
思わず左手で抑える。
「……それくらいしか、俺にはできなかった」
奏の不機嫌そうな顔が、思い浮かんだ。
「……そんなこと、ないよ」
私は奏の小さな手にそっと触れる。
「奏、ずっと撫でてくれてたでしょ?あったかかった」
奏の息を呑む音が聞こえる。
「俺、体温ねぇよ?」
「無くても。奏の存在だけで、あったかかった」
ふっと空気が緩んだ気がした。
「ありがと」
そう言うと、奏は、
「あぁ」
とだけ返した。
私は起き上がり、電気をつける。
眩しさにすこしだけ、目が眩む。
奏も、僅かに目を細める。
「起きて大丈夫なのか?」
「うん、水分だけ、取るよ」
そう言って、私はゆっくりと立ち上がる。
冷蔵庫からペットボトルの水を出し、一気に飲む。
自分が渇いていたのが、わかる。
ふぅーっと一息ついて、水を持ったまま、私はベッドに戻る。
枕元に、奏がいる。
「奏は寝ないの?」
そう言うと、少し照れくさそうに顔を逸らす。
「まぁ、俺は別に寝なくても平気だし」
ツンデレ奏。
それから、ポンポンっと私の枕を叩く。
「それよりさ、早く寝な?」
奏に促されて、私はまた横になる。
「お母さんみたいだね」
そう言うと、奏は不本意そうに。
「お母さんは朔だろ?」
「ははっ、そうだったね」
この前の動画を思い出す。
「いいから、早く寝ろよ」
奏の手が、私の額に落ちる。
私は電気を消す。
奏の手が、ゆっくりとまた、私の髪を撫でる。
「奏、ありがと」
一瞬、手が止まる。
でもまたすぐに、動き出す。
「いてくれるだけで、安心する」
今度は奏は、
「そっか」
それだけ返した。
やがて、私の意識は夜の闇に落ちていった。




