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推しのフィギュアが尊すぎて、推し活できません!  作者: 夜月黎


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19.推しの初めての留守番

「出張?」


驚いた顔で奏が聞き返す。


「うん」


奏に向き合って私は頷いた。


「他県に泊りがけで研修行かなきゃならなくて」


私は手を合わせて拝むように謝りながら、奏に言った。


「ふぅーん?」


奏は少しだけ、不機嫌そうだ。


「一泊だけだから!」


言い訳?しながら、私は何故奏に許可取ってるんだろうと、疑問を持つ。


本来なら、いるわけがないのに。


でも、奏不機嫌になると、私も胸が痛いのは、やっぱり推しだからかな。


「別に、いいけど……」


そう言う奏は、納得はしてなさそう。


「うん、お土産買ってくるからね!」


そう言って私は、無理矢理会話を終わらせた。




そして、出張当日。


「じゃあ、行ってくるから!」


私は玄関で奏に言いながら、キャリーバッグを持つ。


そして、念を押す。 


「わかってると思うけど……」


「はいはい、家を出ない、ね」


耳タコな奏が続ける。


一泊出張を告げた後、私は事あるごとに奏に言い聞かせていた。


――絶対、家をでないこと

――勝手に荷物に潜り込んでついてこないこと


「……信じてるよ」


私はそれだけを言い残して、家を出た。



✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢


バタンっと大きな音がして扉が閉まる。


今の奏には、大きすぎる扉。


足音が遠く、聞こえなくなってから、奏はのっそりといつもの場所へ戻る。


いつもより、静かな気がした。


頭をガシガシと掻いて、奏は外を見つめる。


「……寝るか」


することもない。

なら、時間潰しは寝るに限る。


そう言って奏はソファに横になった。




ふっと目を覚ますと、辺りはすでに暗くなりかけていた。


――寝すぎたな


自分でもそう思った。


ムクリと起き上がり、奏は窓から空を見た。


夕闇迫る時間。

空が、紅から紺に変わっていく、短い刹那。

混ざりあった、何とも言えない、切ない色が広がっていく。


瞳を細めて、見つめる。


奏は、この曖昧な時間帯が好きだった。


たくさんの感情が降ってくる。


言葉が、湧いてくる。


音が溢れ出してくる。


「♪♪♪」


少しだけ、メロディが浮かんで、口にする。


それから、書き留める物がないことに気づいて、音が止まる。


「……」


時間ってこんなに長かったっけ?


不意に思った。


「長ぇーな」


独りごちた。

その声にも、いつもの賑やかな返事はない。


静かな時間、好きだったはずなんだけどな。



奏はぼーっとして、空を見る。


少しずつ、確実に夜は近づいてきている。


それでも、その夜は長い。

奏はただ、だんだんと夜に支配されていく空を見ていた。

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