↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しのフィギュアが尊すぎて、推し活できません!  作者: 夜月黎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/59

20.推しのいない一日

「疲れたぁー」


私は大声で叫んで、ベッドにダイブした。

ビジネスホテルの一室。

同じ部屋の葵さんは、くすくすと笑った。


「そうだね」


そう言って窓際のソファに座る。

部屋に入る前に買ってきたコンビニコーヒーを手に取り、口にする。

それから、ホッと一息をついたように見えた。


「でも、これで仕事は終わりっ!!」


両腕を上にあげ、一気にプライベートモードに移行する葵さん。


「今日は、語るぞーっ!!」


私は枕を抱き締めて寝転がり、笑顔で葵さんを見た。


「久々だねっ」


「今日は寝かさないよっ」


……葵さんの気合の入り方が、ちょっと怖い。


まぁ、でも仕方ないか。


最近は奏に構いっぱなしで、外部の推し活がさっぱりだったから、楽しみなのは私も同じ。


私達は、着替えやお風呂を済まし、大量に買い出してきたお酒や惣菜をつまみに、部屋で思う存分話すことにした。



「かんっぱーい!!」


ガンッと缶ビールがぶつかる。


一口目を一気に流し込む。


この感じも久しぶり。

さすがに……奏の前でお酒飲んで酔っ払う勇気は、まだないよ。


「……で?」


缶ビールをテーブルに置いて葵さんが問いかける。


「え?」


私は間抜けな声をだした。


「え?じゃないのよ!」


ばんばんっとテーブルを叩いて、彼女は詰め寄る。


「最近、夕莉がおかしい理由だよっ!」


ギクッ、という音が聞こえた気がする……。


「お、おかしいですか……?」


なんとかごまかさないと、と必死で平静を装う。

……けど、酔った葵さんの勢いはすごい。


「おかしいよ!!」


拳を握りしめて、力説する。


「前はあんっなに、毎日のように『奏語り』してたのにっ!!」


えっ、そんなに……そんなこと……。


……ある、かな……?


身に覚えしか、なかった……。


「最近は、仕事終わってもすぐ帰っちゃうし!!」


まぁ、それは早く帰らないと奏が拗ねるし……。


「休みの日も、誘っても出てこないしっ!!」


それも、休みの日はだいたい奏に捕まってるからで……。



合間にもグビグビとビールを煽る葵さんは、だいぶ酔ってきているようだ。

反面、私はボロが出そうで、進まない。


「夕莉っ!!」


「はいーっっ!!」


私は飛び上がる勢いで返事をした。


「あんた……」


ちょっ、葵さん、目が据わるの……早いですよ?

私の心臓はドキドキして、破裂しそうだ。


「男出来たでしょっ!!??」


…………?


「……は?」


思わぬ言葉に呆気にとられる。


一瞬、間を置いて私は反論する。


「っなワケないよっ!!私は十年前からっ、NOCTIS……奏ひとすじだよっ!!」


勢いで言ってしまってから、私の脳裏に浮かんだのは。


……家で私を待ってる、奏の顔だった。


一気に、頭に血が上るのがわかった。


「…何、今更赤くなってんの……?」


葵さんはつまらないとばかりに、ビールを煽る。


「夕莉の奏命は知ってるよー!」


ガンッとビールをテーブルに置いて、詰め寄る。


「でもっ!!今までと違う感じがするのよね……」


葵さん、鋭いっ……。


「いや、でも、私は今まで通り、奏しか興味ないよ……」


間違いではない。

まあ、その『奏』が問題なんだけど。


疑うような目で葵さんが見る。


「…………」


私はビール缶に口をつけて、ちびちびと飲みながら、黙った。


しばらく、沈黙が続く。


その間も飲み続けた葵さんは、だいぶ酔いが回ったようだ。


「まぁ……」


と、沈黙を破ったのは葵さんだった。


「夕莉がいいんなら、いいけどね」


少しだけ、つまらなそうに。


「……でも、いつか話してくれたら、嬉しいな」


ボソリと言った。


「葵さん……」


本当は、言ってしまいたい。

でも、言えるわけがない。


「ありがとう……」


プシュッと、新しい缶を開けて葵さんは、笑った。


「いいよいいよ!しんみりしちゃったけど、語ろっ!」


缶を上にあげ、乾杯のポーズをとる。

私も軽く缶をあげ、それに重ねた。


「ですねっ!次のライブの話ししましょうっ!!」


私も声を張り上げて言う。


せっかくだから、楽しく飲もう。

今日くらいは。


葵さんとたくさん話して、夜はふけていく。


楽しく話してても、私の頭の片隅には、やはり、家で一人で待っている奏のことが、ずっと残っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。