姉は暴君、すなわち鼎色
レイモンドが属性判定を受けた次の朝、まだ彼が夢の中にいる時間。それはまさに晴天の霹靂というにふさわしい侵入者が部屋の扉を開けた。
「レイモンド!! 朝稽古よ!!!」
その霹靂の正体は同母の姉ケイトであった。その齢、10歳。
レイモンドを除けば、ブラッディ家の最年少である。だからなのか、レイモンドを猫可愛がりする。彼女視点では。
「……うるさいよケイト姉さん。まだ5時じゃないか」
レイモンドは、寝ぼけ眼で枕元の時計を見て文句を言う。
「レイモンド、私との約束忘れたとは言わせないわよ!」
一瞬なんのことか分からないレイモンドだったが、そういえばと思い出す。今年のケイトの誕生会で、プレゼントとして要求されたことを。
(属性判定を受けたら自分と一緒に稽古をするというやつか……)
「昨日はドタバタしててできなかったけど、今日から一緒に稽古よ!!」
ここでケイトについて語っておこう。彼女は5年前、鼎色の判定を受けた。それも白、赤、黒という超攻撃型。彼女はこの力を領地に活かそうと、領地の騎士団で、見習いに混じり稽古し始めたのである。
才能もあったようで、今では本来12歳以上しか参加できない準騎士の稽古にも9歳から参加を許されている。
そして本人も稽古が大好きで、早朝に自主稽古をしているのである。
「私が教えてあげるから!!」
今まで教わる側だったケイトは、初めて人に教えられると感極まっている。
そんなケイトにレイモンドは力なく言った。
「分かった、今行くよ」
「まずは準備体操しましょう!」
「いててててー!」
「そしたら、庭を3周して!」
「ぜーはー、ゼーハー」
「次、素振り50本ね!」
「……タイム」
レイモンドは堪らず、ケイトに限界だと伝えた。
ケイトは信じられないという顔をした。
「結構軽くしてるんだよ!?」
「いや、5歳児には結構きついと思うんだよ」
実際ケイトは、無自覚に回復魔法を自身にかけていた。そのため、他の子供よりも持久力があったである。
「……どうしよう?」
ケイトがこれからのトレーニングメニューを悩んでいると、屋敷からメイドが1人やってきた。
「ケイトお嬢様、差し支えなければジュリアンに相談してみては?」
メイドの名はユリア。先祖代々ブラッディ家に使えるワイバール家の出身であり、ケイトの専属である。ジュリアンはユリアの弟で、ケイトの稽古相手を務めることが多い準騎士である。
「そうね……そうするわ!」
そう言うとケイトは、屋敷に走って戻ろうとしたのでユリアから貴族令嬢らしくと注意され、さらに、相談は今日の午後の稽古の時ですと言い含められていた。
レイモンドはユリアに感謝しつつ、明日からの稽古に震えるのだった。




