今は亡き家族
それから、丸一日経って、ルカは目覚めた。ルカは傷だらけだったが、幸い命に別状はなかった。ルカはベッドから起き上がり、あの夜の出来事をリュウに伝えた。
ベルモンドの遺灰はジルのお墓の隣に埋められた。ベルモンドの恐怖は今もこの町に根付いているのだろうか。ルカがベルモンドを倒したという話を聞いた人々は驚いていた。
そして、ルカは町を後にした。二人は馬車に乗って、久々に仮住まいの家に帰る。
「帰る前に私の旧家に寄ってほしいの。」
リュウはそれに従い、その場所へ向かった。
ルカがかつて暮らしていた村は山奥にある隠れ里のような場所にあった。そこでルカは祖母が亡くなるまで暮らしていた。母親は故人だが、父親が
生きているのは知っていた。だが、会いたいと思った事は無い。会ったとしても自分を覚えているかどうか分からないからだ。
ルカの家は空っぽだった。それもそうだ、ルカの祖父母と母親は亡くなり、父親は失踪したまま今も見つからないからだ。
「家族が居なくて大丈夫か?」
「うん、もう慣れてるから」
ルカは二階にある祖母の部屋に入った。何も残されてはいないが、ルカの目には祖母との思い出が映っていた。
「退治屋を辞めてここでのんびり暮らすのもいいかもな。」
リュウがふとそんな事を呟いた。リュウもルカも退治屋としてこれから活躍出来る年だ。だがリュウは若くしてそれから身を引くと言うのだ。
「私は吸血鬼狩りにしか出来ないから、ベルモンドを倒してからも続けようと思うの。」
「そっか、ルカがこれからも吸血鬼退治を続けると言うなら、僕も続けようかな。」
リュウはルカと出会ってからずっと側に居た。
「実は僕も天涯孤独なんだ。育ての親は居るけどね。実の親には会った事が無い。生きているかどうかも分からない。だから吸血鬼退治をやろうと思ったんだ。誰かを救い続けたらきっと何処かで親と繋がれるんじゃないかって思っているんだ。最も、親の方が僕を覚えているか分からないけどね。」
リュウはそう言って寂しそうな目をした。ずっと自分の側に居たリュウが、心の何処かで孤独を感じていたとは、ルカは知らなかった。
リュウはルカの側にやって来て、こんな事を言った。
「僕達、家族にならない?ルカとならどんな日々でも乗り超えられそうな気がするんだ。」
「それってつまりプロポーズ?」
「結婚するかどうかは今決めなくてもいいんじゃないかな。ただ、僕は仕事の時もルカと一緒に居たいんだ。」
ルカはリュウと結婚するかどうか決めるのは躊躇ったが、ずっと一緒に居る事に関しては迷いはなかった。ルカも、仕事と関係なくリュウと一緒になりたいと思ったからだ。
しばらく経ってから、ルカとリュウはルカの旧家で暮らすようになった。そして、吸血鬼退治を続けていた。ベルモンドが死んでからも吸血鬼騒ぎはあったが、甚大なものはなかった。
そして、二人は結婚して一人の息子が産まれた。その頃の二人は幸せだった。このような日々がこれからもずっと続くようにと心から願っていた。ところが、それはそう長続きするようなものではなかった。




