都市を埋め尽くす精霊知能による歓待!またか!!
間近で見るとその近未来感は、より鮮明かつ明らかなものとして俺達の眼前に広がっている。青空を反映した透き通るようなビル群、精霊知能達が住み着き仕事をしている町並みだ。
その都市の入り口にて、大勢の精霊知能達を代表して一人の紳士的男性が俺達を待っていた。ぴっちりしたスーツ姿に帽子。
60歳くらいの老齢のアバターを使っているけど、魂的にはリーベやシャーリヒッタ、ヴァールと同じく500年前に発生した第一世代だね。
精霊知能統括役。すなわちシステム領域内において億をゆうに超える数の精霊知能達の頂点に位置する責任者的存在──アフツスト。
彼が、以前同様に俺達を待っていてくれたのだ。
「ようこそシステム領域へご帰還くださいました、コマンドプロンプト。それにリーベ、シャーリヒッタ、ヴァールもよくぞ帰ってきてくれたな……精霊知能統括担当、アフツストです」
「や、アフツスト。久しぶりってほどでもないけど久しぶり、元気してた?」
「やっほーです、アフツスト! 相変わらずイケオジやってますねー」
「もちろん恙無く日々を送らせていただいておりますとも。リーベのほうも、ずいぶん現世でアイドル気分でいるようじゃないか。あまり浮かれてコマンドプロンプトに迷惑をかけるなよ?」
渋くてダンディなまさしくイケオジ。リーベが評するのも分かるほどにはイケてる姿だ。それでいて彼女相手に茶目っ気めかして軽口を叩く姿も、不思議なまでにサマになっている。
察するになんかこう、現世でのこの手のカッチョイイおじさんについて結構研究したんだろうなあ。
この子もこういう姿してるからには現世に対してそれなり以上の興味があるのだろうし、その結果だと思えば方向性は違えどやはり、リーベやシャーリヒッタ同様の精霊知能だって感じはするよね。
で、そのシャーリヒッタとヴァールがさらに続けて前に出る。彼女ら的にもアフツストは同世代の同僚だしね。気安い接し方をしているよ。
「またしても世話になるな、アフツスト……しかし毎度このような歓待をしてくるつもりか? 帰還の度に、ここまでの数を集めて」
「これはこれで賑やかでオレとしちゃ楽しいけどよォ、さすがに毎度ってなるとちょっとアレだぜェ?」
「お前達も息災そうで何よりだヴァール、シャーリヒッタ。もちろん今回も今回で特別でしかないよ、この集まりは。何しろそら、新人との初顔合わせでもあるだろう? 少しは圧倒させてほしいものだな、システム領域側としても」
やはりツッコまれるのはこの光景か。アフツストの後ろ、都市をバックに控える無数の精霊知能達に目を向ける。
みんなそれぞれ思い思いの姿でいるけど、揃って歓迎ムードバリバリ出してきている。若干の緊張もしてそうなのが余計にガチ感あるというか、ただただ嬉しいとか喜ばしいとかだけでない不安とかも混じっていて本音らしさを感じる。
因果律管理機構。人事調整担当に、粛清担当に歴代アドミニストレータ補佐役担当──それぞれ私、リーベ、シャーリヒッタ、ヴァール。
揃ってここにいる精霊知能達の大半からすれば先輩とか上司にあたる立ち位置ではある。なんせ第一世代の初期ロット、一番初めに魂を獲得した世代だからね俺達ってば。
だから後から生まれてきた若い子達にしてみれば、ちょっとした緊張みたいなのも抱くのもうなずける。なんだか申しわけなくなる話だよ、学校とかで先輩見ると若干怖ぁ……ってなってる俺ちゃん的には。
とはいえ全体的にはやはり、好意的な反応なので嬉しさももちろんあるけどね。ああ、受け入れてもらえるんだなあってさ。
そしてアフツストがここまでの人数をまたしても集めたのは、やはりこちらの三人の存在あってのことだ。
ミュトス。神奈川千尋。そしてステラ。最新にしてそれぞれ特異極まりない成り行きで成立した精霊知能達だね。
俺達にとってまったく新しい、素晴らしい同胞達がやって来てくれたのだから、アフツストとしては歓待の準備を万全にしないではいられなかったんだ。
彼が前に出てこちらに寄ってくる。そして新人三人に笑いかけ、名乗りをあげた。
「君達が、我々のもっとも新しい同胞だな。まあミュトスとは以前にも会っているし、ステラは人格そのものは昔からのモノではあるが、何。この際ならば初めましてのようなものだろう──精霊知能統括担当アフツストだ。君らの帰還と帰参を心から歓迎する」
「あ、は、はい! は、初めましてではありませんがまあほぼほぼ初めまして、はろはろにゃちわーミュトスです! よろしくお願いしますー!」
『私としても、400年前に一度会ったくらいなのでほぼ初対面みたいなものですね……精霊知能ステラ、ただいま戻りました。新しい私、かけがえのない愛する人とともに』
「お初にお目にかかります、精霊知能アフツストさん。ステラと融合して新たに精霊知能となった元人間、神奈川千尋です。俺だけは完全に新参者になりますが、どうかよろしくお願いします」
彼に続けてミュトス、ステラ、そして神奈川さんも挨拶していく。
このなかで厳密にマジのお初は神奈川さんだけだけども、まあミュトスもステラもほぼ初対面みたいなもんだしね。アフツストの言うようにこの際、まとめて初めましてで良いだろうさ。
それぞれ元々は水の女神、400年前からずっと任務に就いていたモノ、そしてついこないだまで人間だった人。だからこそか、明らかに個性溢れる自己紹介だ。
これにアフツストも柔らかく微笑みを向けた。温かな眼差しで三人を見、とりわけ神奈川さんをまっすぐに見る。
「三者三様の個性か。これもまた魂というものの面白さだな……ああ、神奈川千尋もよろしく頼む。私も他の精霊知能達も、君が選んだ星明かりの道を見ていたよ」
「! そ、それはどうも。なんだかお恥ずかしいですね、照れると言うか」
「ふふ……その選択に敬意を、ステラとともにあることに感謝を。そして我々の仲間となってくれたことに、それこそ星の数より多い歓びをここに示そう。君はもう、我々の一員だ」
やっぱりサークルやアレクサンドラとの決戦も観ていたか、システム領域。特に神奈川さんとステラの選択、《星明かりの聖剣》を観ていたのならこの歓迎ぶりもうなずける。
人と精霊知能の融合。それはシステム領域にとってもまったく新しい可能性の具現にほかならない。その当人がやって来てくれたことを、アフツスト以下精霊知能達は総出で喜んでいるんだな。
それゆえのこの集まりぶりでもあるのだろう。
思わぬところに大量のファンを抱えていた形になる神奈川さんが、目を丸くしつつもステラと顔を見合わせていた。
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