おいでやす未来都市・リターンズ
システム領域の大草原をテクテク歩く。多少歩くとすぐに見えてくるのが精霊知能達が創り上げた都市だ。
何を参考にしたんだか、"昔の子どもが考えていた未来都市"的なSFチックな光景が広がっている……なんかこう、ガラス張りのビルが立ち並んでいたりチューブ状の道を車が走ってたりするね。
「す……すげえ。あ、あれが精霊知能の住む、システム領域の町」
『改めて見るとすごい……私は聖剣担当として永らくこの領域にはいませんでしたけど、今こんなことになってるんですね』
「あからさまに現世のカルチャーに影響を受けているからな。悪いことではないが、やはり昔の姿を考えると面食らうのはたしかだ」
「昔のシステム領域なんて、本当に味もしゃしゃりもない情報空間でしたもんねー」
いの一番に驚いた神奈川さん。そりゃ話に聞いて知識として持ってはいたろうけど、実際に見たら圧倒されるよな、こんな光景。
ステラも同様に目を丸くしている。彼女も聖剣管理役として数百年、データ領域に身を潜めて在り続けてくれたからシステム領域に居着いていたわけじゃなかったしね。
しかもこの100年ほどは現世日本の山奥に居を構えていたわけで、こうなってからのシステム領域についてはなんら実感を得てはいなかったろうしね。
そうでなくとも今時こんなデザイン、現世じゃ創作でだってなかなか見ないレベルにコッテコテの未来都市って感じだもの。
さすがにそこに住む精霊知能達は割と現世的な風貌だけど、これで全身ラメ入りぴっちりスーツ謎のアンテナ付きとかに身を包んでたらもう完璧だもの。
こうなる前の、0と1が連なるだけの空間だったここを知っているヴァールやリーベからすると、そんな神奈川さんやステラの反応は苦笑いしつつもうなずくのもやむなしってなものだろうさ。
「うっし、じゃあさっそく行くぜェ。ちなみに今回も精霊知能達が出迎えてくれてるぜェ。父様やヴァール、ステラの帰還はもちろんのこと最新の同胞たる神奈川やミュトスの歓迎もしたいからなァ」
「えっ……またアレやんの?」
「さすがに今回はないだろうと思っていたが、そうか神奈川とステラとミュトスのことがあったか……」
「たしかに何やら、都市にはとんでもない数の精霊知能が見えてきてますねー」
案内役を買って出て、先導して歩き出しがてらも思いがけない言葉を放つシャーリヒッタ。
出迎え……即座に思い返すのは以前の帰還時。何もここまでと思ってしまうほどの大量の精霊知能が一つところに集結し、たった一言の"おかえりなさい"を俺とヴァールへ告げるために集まってくれた、あの瞬間だ。
ヴァールも同様に想起したのだろう。俺と顔を見合わせ、揃って戸惑う。
もちろん、アレは心底から嬉しかった。隠れていただけの私をも温かく受け入れてくれた精霊知能達に、とても言葉では表せられないほどの感謝を抱いたのは間違いない。
しかし、しかしだ。物事には限度がありやしませんか? と思ったのも事実なのだ。ビルのなかから道も空も何もかも埋めるほどの数の精霊知能はほとんどホラーだったよ、しかもそれでいてごく一部だけ集めたってんだからね。
遠目に都市を見たリーベも示すとおり、あと10分は歩かなきゃ到達しないって距離からでも都市の様子は当然見える。すごい数の精霊知能が集まっているのが確認できた。
圧巻の光景だよ、魂の格的には概念存在の最高峰たる創造神クラスにも勝るようなのが今、都市の天と地を埋め尽くすかってくらいに入口に集まってきているのが分かるもの。
俺と、ヴァールと。そして神奈川さんにステラ、ミュトス。滅多に帰ってこなかったか、あるいは新参の5人の出迎えってことで気合が入ってるのは分かるんだけどね。
にしてもこれはすさまじいよ、さすがに。
「い……今からあの群れのなかに飛び込んでいくんでガンス!? ちょ、ちょっとさすがに予想外の光景に思わずビックリ桃の木山椒の木なんでごぜーますが!」
『さ、さすがにこれはすごい……私の千尋の初めてのシステム領域だもん。これくらいしてもらえるのは、すごく光栄だし誇らしいけど』
「いや、お、俺としちゃ過分にもほどがあるというか、そもそも俺だけでなくて山形さん達の帰還だってのもあるからだろうし」
「どちらにせよあの数に今から突っ込んでいくのは間違いないんだぜェ」
「怖ぁ……」
「もちろん善意なのは理解していても、この数はインパクトしかないな……」
さしもの明朗ミュトスちゃんも、ヤンデレ気味のステラさんも、そんでもってイケメン神奈川さんも精霊知能で山ができてるってなほどの光景には驚き、そして今からあそこに向かって歩いていくことに冷や汗すら流している。
俺だってそうだし、ヴァールですらそうだよ。前の時もそうだったけど精霊知能達って割とこういうの好きなんだろうか? 単なる帰還でこの盛り上がりなあたり、やはり現世の影響を受けてお祭り騒ぎが好きだったりするのかもしれない。
いずれにせよ、立ち止まってもいられない。とにかくあそこに行かないと話が進まないのだ。
ヴァールの言うように別に悪意あってのことでなくむしろ善意だからね。それを無碍にするなんてできないし……それでもあの数に突っ込んでいくのかあとやはり気後れはしつつも、俺達はテクテクと歩いて草原から都市へと向かっていった。
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