実際、探査者になった時点で専業みたいなものではある
美味しいマロンケーキとコーヒーのハーモニーに舌鼓を打ちつつ、のんびりと10時を待ちながら喋る。
リューさんや春香とは基本的に年一、盆の時にしか会わないのがこれまでだったからそれなりに積もる話もあり、新鮮な話もありって感じだよ。
「そっかあ、リューさん竜虎大学狙いなんだ。俺の知り合いにも何人かいるよ、竜大の人」
「あー、探査者の? ……お前の口から友達とか知り合いとかって単語聞くの、そこはかとなく違和感が拭えないな……いや他意はないんだけども。なんかなー」
「正直ちょっとわかる。公平には悪いんだけどさ」
「えぇ……? いやまあ、俺自身たまにずいぶん遠くに来たなって思うけどさ」
「友達とか知り合いとかって単語でそれなんだ、兄ちゃん……」
今回こうして集うことになった一番のきっかけ、つまりはリューさんの大学受験について話を聞いていたところ、まさかの竜虎大学志望なことが判明。
いわずもがな宥さんを筆頭に、カレチャの小早川さんだとか藤代さんのお姉さんだとかがいらっしゃる大学だもんで、ついそのへんを口にすると兄妹揃って失礼な反応を返してきた。
なんだよう。でも分かるよう、正直よう。
俺自身でも思うもの、去年までと大違いだわこれって……繰り返し何度でもしつこく言うけど、プロ級のボッチだったからねこちとら。
友人とか知り合いってなかなかいなかったもんよ。当時のクラスメイトのなかでも知り合いレベルったら桜井くらいで、あの子からしてみればそれだって俺なんてのはクラスメイトの一人でしかなかったしな。
それが1年経ったらこれだよ、なんのワープ進化だ? って唖然とする気持ちはすごくよく分かる。
だからうんうんと俺もうなずいていると、リーベにシャーリヒッタがリューさんの大学進学について、くわしいことを聞きだしていた。
「えーっと、今のところ成績的には大丈夫なんですかー? リーベちゃんも詳しいことはよく分からないんですけど、模擬試験とかするんですよねー?」
「おう、するぞー。一応今んとこはA判定もらってるけど、正味なところギリギリAって感じで体感的にはほぼBなんだよ。お袋にも言われちまってるしな、これで油断したら終わるってよ」
「終わんのかァ……しっかし大変だな学生ってのも。公平サンも優子もそろそろ期末テストだーって言って頑張ってるしよ、オレやリーベからしたらすげーって思うぜ」
主に学業方面での話に興味があるみたいだな、この二人。システム領域にそんな受験とかあるわけないし、ドラマとか見て現世を学んだ節がある子達だからそういうところにも想いを馳せるものなのかな。
答えるリューさんは、話を聞くに問題なさそうなラインにいるみたいだけれど、それでも母親の真理子さんには相当ぶっとい釘を刺されているみたいで肩をすくめているね。
これも去年、俺だって体験したことだ……親の釘刺し超怖い。
それを受けてシャーリヒッタも感心しきりにコメントしているけれど、そこにうん? と首を傾げたのが春香だ。
深刻な感じではないものの、拭えない違和感を覚えたというような表情で俺と優子ちゃんに尋ねてくる。
なんぞや?
「……? えーっと公平、優子ちゃん。この二人って学校は? 私達と同い年くらいよね?」
「あーっ……と。実はこの二人、年齢的には高校生なんだけどどこぞかの高校に転入とかは考えてないみたいで」
「今はずっと探査者のお仕事してるみたいだよ? そのへんはえーっと、私にもよく分かんないや」
「そ、そう、なんだ?」
いかん、思わぬ方向からざっくりした現世設定における穴を突かれてしまった!
そう、リーベとシャーリヒッタには恐るべきツッコミどころが一つあるのだ──年齢的には俺と同い年くらいなのに、学校はどうした? という割と致命的な部分が。
正直、システム領域の立場からすると学校に通うくらいならインターフェイサーとしての活動を含めた探査業をしてほしいってのがまずある。
これはコマンドプロンプトとしてはどっちでもよかったんだけど、ヴァールとリーベ、シャーリヒッタ三人ともが総意で決めたっぽいのだ。
半ばバカンス同然とはいえ、さすがに精霊知能として他にやるべきことはもっとある、という理屈である。
なのでこの子達の戸籍と来歴を創ったヴァールはそのへん、何やらストーリーを仕立てたみたいなんだよね。出身からしてどこぞかの施設って感じのファジーさなんだけども、それ以上はあまり俺も知らないからなあ。
ここは当のリーベとシャーリヒッタにご説明いただきたいところである。
「リーベちゃん達の施設があった国だと、割と教育的なところは各家庭単位の話だったりしましてー。まあ、一応日本のカリキュラムで言うなら高校卒業レベルの学力は備えてますよー」
「そんなだから学校に行く意味があんまりなくってよ! 探査者としての活動に専念するほうが稼げる上に人脈とかも作れるからってことで、そうさせてもらってるんだぜ!」
「マジかよー。さすが探査者っつーか、そっちの界隈は大概何でもありだよなあ」
「人によってはいるもんね、中学生でスキルを得たからって高校進学せずに探査業にのめり込む探査者さんとか。公平ももうちょいスキルを手に入れるタイミングが早かったらそうなってたかもだし」
困った時の便利なダミー設定、謎の国と謎の施設。このへんも深く突っ込まれると大変なんだけど、割とプライバシーかつ繊細なニュアンスも匂わせられる部分なのでリューさんも春香もそれ以上の追及はしないみたいだ。
実際、春香の言うように中学卒業までに探査者になり、高校進学せずダンジョン探査業に専念するってケースはまあレアながらなくもない。
それこそ俺ちゃんもね、去年の夏あたりにステータスを得てたらそんな選択肢は一応あっただろうし。
まあ、どう生きようとそれは個人の自由だしそもそもたらればの話だから考えても仕方ないけどね。ともかく、そんなパターンもあり得るのが探査者界隈の特徴ってことだった。
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三巻
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