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叫びの告白

 「さて、では少し話させてもらうぞ」


「は、はい」



 逃げる気など毛頭なくなったらしいラフィーは、さっきまでわずかに残っていた堂々さをなくし、変に色んなことを話さなくなった。



 それこそが神の思うつぼなのだろう。ぼくがそう思ったのは、リザレイが「心配しなくても大丈夫。グリウ、余裕そうだから」と言ってきたからだ。



「中身は神でもね、やっぱりグリウの顔だもん。意識がないってわけじゃないだろうしさ」



 じゃあ大丈夫だね、とぼくは返す。それと一緒に、やっぱりリザレイに対して違和感が浮かんでくる。



 無意識に彼女を見つめていたようで、不思議そうな顔をされた。なんでもないよと返事して、神とラフィーの動向を見守った。



「では私から話をするが。現時点で私が知っていることは、人間好きのラフィーが地上で瀕死の子どもを見つけた。そして、その子どもに治癒を施したらしい……と。それがどのくらいのものかはわからない。確定事項はそんなところだ」



 どことなく視線を合わせなかったラフィーは、神が黙り沈黙が流れたのを感じ、瞬時に顔を上げた。



「……そうですね」


「それで。私がというか、ここにいる全員が聞きたいことがある。わかってるんだろう?」


「……」



 神は、これまでどんな意味でも顔を歪めることはなかった。が、この時は微妙に眉間のしわを深めた。



「私は真実を吐かないお前を説得してほしいと頼まれて、ここまで来たのだ。だから、なにか話してもらわないと困る。色々と手段はある。話してもらうというか、話せ。いいな?」



 彼は頬を強張らせて、静かに頷いた。



「ボクに聞きたいのは、治癒した人間がアークであるかとか、生死の理に反するほど回復させてしまったのかとか、ですよね」


「……で、合ってるのか?」



 首だけを捻って、神がぼくに尋ねてくる。



「うん。ラフィーの口から直接聞きたい」



 ぼくの答えを知ると、彼はすぐに捻った首を直してしまった。でも、苛立ったりなんてことはない。何故だか、初めて出会った相手なのに、役立ててくれるのだろうと信用できるのだ。



 それがグリウの外見だからとか、神という身分だからとか、そういうのではないとわかっていた。



 ボクに確認をとった神は再び口を開けた。



「そういうことらしいから、まずは回復させた人間は誰なのか、まず言ってもらおうか」


「これは、否定なんてしませんよ。記憶が改ざんされてなければ、ボクが見かけた死にかけの子供はアークです」


「そうか。それは認めるか」



 正直、そこの返答はどうでもいいと言ってもいいところだ。ラフィーが地上に行ける機会なんて多くない。ぼくの体が治癒されたタイミングと合致するのは偶然じゃないはず。



 なら期待するのは、次だ。



「それじゃあ」



 問2に移ろうとしている神を、ラフィーは手の合図で制止した。



「わかってます」


「じゃあさっさと言ってくれるか?」


「……」



 また、黙った。もうここにいる天使相棒が離れた沈黙だ。



 ラフィーはきっとすぐ話し出すつもりだったのだろうが、あまりにも黙る回数が多いからか、神は衝動的な行動に出た。ラフィーの胸ぐらを掴んだのだ。



「言うんだろう? 心の準備もしていないなら、簡単にわかってるとか言うんじゃない。黙るというのは、もってのほかだ」



 叱るような語調で言った。すると、倣うように衝動的に叫んだ。



「わかってますって! アークを救った時から覚悟はしてます! 地上に落とされるとか、存在を消されるとか、何されたって仕方ないって腹を決めてました!」



 ラフィーは早口で、大声でそう言い切った。ヒールも目を見開いていて、こんな彼を見るのは初めてなのか。



 耳元で叫ばれた神は、それに構わず聞き返した。



「今の言葉に、間違いはないな?」



 ラフィーは激しく呼吸をしている。先ほどとは打って変わって、荒々しくなった自分の体を鎮めながら、呟くようにして言う。



「……はい」



 神は振り返りぼくを見る。なにか言おうとしているのか。口を動かしかけたのはわかったが、それ以上の情報はもうぼくに入ってこなかった。



 頭は真っ白で、瞳は真っ黒だ。わかっていた事実のはずだ。でも、こんな身近で笑っていてくれた彼が、ぼくを――。



 理由がわからない謎の感情が、胸にお仕上がってくる。不意に口から漏れた言葉は、ちっぽけなものだった。



「……え?」

お読みいただきありがとうございます。

ナチュラルにラフィーは自白しました。でもまだ不完全なんです。まだ謎はありますよね。隠していた理由など、次話をお待ちください。

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