32話 Seaside Vacation 前編
海で遊ぶだけのお話です
南国でのドタバタが落ち着いた私たちは、ここ南国に到着した際にココノハが言った「海に行きたい」という望み通りに海へやって来ていた。
南国から半日ほどの距離にある海岸は、綺麗な砂浜と綺麗な海水、そして温暖な気候により一年のほとんどの期間泳げるかなりの人気スポットである。今も多数の海水浴客で賑わっていた。
「はー、すごい人ですねぇ」
「大盛況だな」
「まあ国が管理してる人気の遊び場だからね。あちこちに屋台や宿泊施設があるでしょ、ここで得られた収益金が国家の財源とここの維持に使われているわ」
「人気の秘訣は綺麗に整えられた海水浴場だけではなく、宿でもてなされる料理の美味しさにもあるそうですわ。海の幸と山の幸をふんだんに使用した豪勢なものらしいですわよ」
シィナとリアが解説してくれる。場所と料理で人を呼んでいるのか。なるほど老若男女問わず人気が出るというわけだ。家族連れや恋人同士で来やすいのだろう。
「ま、あたしたちは別の場所だけどね。向こうにあたしの私有地の専用コテージ付きの入江があるの。ほら、あたしとリアはこれでもお姫様だからね。用心も兼ねてってのもあるかしら」
「あとはまあ、水着を着るとはいえ見知らぬ男性に肌を晒すのは嫌という理由ですわね」
「成る程」
確かに、二人の立場を考えるともしものことがあるかもしれない。人が集まる場所には必ずと言って良いほど、極少数の頭のおかしい人間がいるものだ。
「四人だけで貸切に出来るなんて贅沢ですね! 早く行きましょうよ!」
早く海に入りたくてうずうずしていたココノハは急かすように声をあげる。
「じゃあ行きましょうか」
私たちは道なりに歩き出す。少し行くと、森から海にかけて道を塞ぐように柵が立てられていた。その更に奥へと進むと、高台に建つ木造二階建てのコテージと人のいない静かで綺麗な入江が見えて来る。
「うわああ〜〜〜〜!!! 綺麗です!!!」
白い砂浜と透明な海水に目を輝かせるココノハ。今すぐにでも駆け出していってしまいそうなほど興奮していた。
「そこまで喜んで貰えると嬉しくなるわね。今コテージを開けるから、荷物を置いたら海に行きましょう?」
「はい!」
シィナとココノハが一足先にコテージに向かう。リアはその様子を見て微笑んでいた。
「ココノハちゃんったら、あんなに楽しそうにして……可愛らしいですわね」
「まったくだ。いったいどれだけ振り回されることやら」
「あら? そんなことを言っている割には楽しそうですわね」
「否定はせんよ。さて、私たちも行こうか。水着に着替えるのだろう?」
「そうでしたわ! わたくし新しい水着を買いましたの! ホシミ様、後で水着の感想聞かせてくださいまし!」
「ああ」
そう言ってリアは駆けていく。
また胸が大きくなってしまったと言っていたので新しく用意するのだろうとは思っていたがしかし、まだ成長しているのか……。ココノハが可哀想になってしまう。拗ねるので絶対本人には言わないが。
そんなことを考えながら薄青の髪を揺らして駆けるリアを追ってコテージに向けて歩き出した。
コテージに荷物を置いてから着替え(といっても私は泳がないので薄着になっただけなのだが)終わり、砂浜にシートを敷きパラソルをさして太陽を遮る休憩場所を作り上げた。
日陰に座って海を眺めると、潮風が心地良い風を送って来た。
「涼しいな……」
思わず口から漏れた感想は、押し寄せる波の音に掻き消された。しばらくぼんやりと水平線を眺めていると、コテージの方から三人の足音が聞こえてきた。
「あれ、ホシミさん泳がないんですか? 上着脱いだだけじゃないですか」
「ああ。無いとは思うが、一応誰かが溺れた時にすぐ救助に行けるようにな」
「なんだ泳げない訳じゃないんですね」
三人はパラソルの中に入ってくる。水着を着た彼女たちは、白い肌を惜しげも無く晒していた。
リアは水色のビキニだ。白いレース付きのパレオを巻き、青いリボンの付いた白い帽子をかぶっている。豊満な胸が水着からこぼれ落ちてしまいそうだ。長い髪が風に揺られている姿は非常に神々しい。
シィナは水玉模様のあるオレンジ色のワンピースタイプの水着だ。しっかりと出るところは出ており、元々のスタイルも良いので引き締まった印象を受ける。背中部分が開きすぎな気もするが似合っているので良いだろう。
ココノハは可愛らしいピンクのセパレート水着だった。胸元にふんだんにフリルが使われていて、彼女の薄い胸を目立たなくさせている。どこで見つけてきたのか、プルメリアの花飾りを金色の髪に付けていた。
「ほう、みんなよく似合っているな。とても綺麗だぞ」
素直に思ったことを述べる。
「えへへ、ありがとうございます」
「まあ、ありがとうございますわ」
ココノハとリアは嬉しそうに笑んだ。
「ホントはあたしもビキニにしようと思ったんだけどね。昔水着が外れて流されたことがあったから止めたの」
「それは……災難だったな」
確かにワンピースなら流されることはないだろう。リアみたいに紐で結んでいるものは外れやすいと聞くから、シィナも昔それで外れてしまったのだろう。
「どうせわたくしたちしか居りませんのに。シィナってば恥ずかしがり屋なんですから」
「いや、あたしが普通だと思うんだけど。脱げるの前提とかただの痴女だからね」
「リアさんが痴女いのはホシミさんにだけですし、良いんじゃないですか」
「……ココノハも随分と投げやりになったわね」
「いやだって、初対面の時にわたしに気付かずにホシミさんを誘ってましたし。あの時わたしがいなかったら即ベッドに押し倒して搾り取ってましたね」
「ちょ、ちょっとココノハちゃん!? 否定はしませんけれどそう言われるのは恥ずかしいですわ!」
「「否定しないの!?」」
「……」
海という開放的な空間と水着という薄着のせいか、内容が過激な気がする。そこで初心な反応をするほど若くはないが、どう反応して良いかは千年生きても分からない。
まあ、あまり触れないでおこう。
「それより三人とも泳ぎに行かないのか?」
「こんな美少女三人に囲まれて言うことがそれですか!! もっと欲望をさらけ出してぶつけても良いんですよ!!」
「何を言っているんだお前は」
いくら周りに人が居ないとはいえ、そうはっきりと言われると困る。
「ココノハも何言ってるのよ。リアの痴女が移ったの?」
「人を病気みたいに言わないでくださいまし!!」
「いやあ折角の貸切状態ですからね。ナニをしたって他の人に見られることはないかなって」
「阿呆か。良いからほら、さっさと行け。海が呼んでいるぞ」
追い払うようにしっしっと手を振る。
「はーい、あはっ」
「ふぅ……じゃああたしも行くわね。ほらココノハ! 準備運動しないと溺れるわよ!!」
ココノハはころころと笑いながら駆けていった。シィナもため息を一つついてからココノハの後を追いかける。
「むぅ〜……痴女は病気ではありませんわよ……」
リアも文句を言いながら大きな胸を揺らして海へ駆けていく。
リア……いや。もはや何も言うまい。
暑いので水分補給用に用意していた冷たいお茶を淹れて飲む。
「……美味い」
波打ち際で海水を掛け合ってはしゃぐ三人を眺めながらしばらくのんびりと過ごすのだった。




