第1話 皆の者、この子は忌子ではない天使だ!
エメラルドの宝石のような森。
特殊な合金で作り込まれた城。
その片隅で多くの人々が赤子の産声を聞いて涙を流した。
「生れましたわ!」
エメラルド色の長髪を一つにまとめてある。
その女性はまだ20歳にもなったばかりの輝いている女性であった。
その隣には産婆がおり。腰を低くしながら、子供を丁寧に掲げた。
1人のいかめしい男性が腰にはエメラルド色の宝剣を帯剣させながら。
ゆっくりと胸をそらし。
次に周りを見つめて、にかりとくっくっくと笑う。
「見てみろ、我が子はどうやら最強になる予定のようだ。【皆の者、この子は忌子ではない天使だ!】見てみろ、立派な角が8本もあるぞ! がっはっははは」
その言葉に誰しもが絶句している訳ではない。
王が右を見ろと言えば見る。
そして王が天使と言えば天使なのだ。
「ハルニレム、いや弟よどうやら最高で素晴らしい子供が生れたようだな、その角は大事にしておけよ、このおじちゃんが角での戦い方って奴を教えてやるからな、ロイフルちゃんんんん」
「おい、ガロン、お前は叔父になるんだよ、そうだ。そんな甘い顔見せたら、100人いる団員全てが卒倒するぞ」
「るせーこれから俺は叔父になるんだ!」
ハルニレム。この世界で最強で世界一やさしい王様。
ガロン。この世界で鉄則の掟を守るガロン騎士団団長。
この2人は弟と兄であり。
弟が王位を継ぐという不思議な事になっている。
「さてと、これからパレードとしゃれこもうぜ」
ガロンが叫ぶと。
王妃がゆっくりと眼を覚ます。
そして彼女は桃色の唇を少し濡らしながら。
「やっぱり角生えてましたかー」
ととぼけたような口調で呟いた。
「夢で見たんですよねーまぁしょうがないですねーこういうのも運命ですから、やっぱり天使みたい」
「だろ? お前もそう思うだろ? ルミー」
ルミーと呼ばれた女性は朗らかに笑う。
「はい、ハルニレム」
そうして、その日、この国に8本の角の王子が生まれたのであった。
誰も悲しむことはない、なぜなら、王が天使と言えば天使なのだから。
母親の家計が魔女であろうとも、呪われていようとも、王が愛すると決めたのだから、その女性も絶対大事にされるのだから。
★ 王都壊滅 ★
ロイフル・ゴッド・エルレイム。
エルレイム王国の長男。
厳密には双子の兄。
弟が実は生まれていたそうだ。
名前をロイ・ゴッド・エルレイム。
輝かしいパレードの裏で弟は異世界へと飛ばされていたそうだ。
そんなことを母上から聞かされた。
それが15歳の誕生日の日。
「いい、ロイフル、この世界は八個あるのよ、あなたはその八個の世界を滑る王になる為に八本の角が生えているのよ」
その言葉の意味を理解する事がロイフルには出来なかった。
だが、この国にいる人々はこの角の事を大事な天使の角だと言ってくれて、いつも優しく対応してくれた。
いつの日か、人々の祝福も暖かい視線も当たり前のように感じてきている。
「訃報、ハルニレム王異世界に飛ばされる!」
その知らせを持ってきたのはウィーバー・パリーというワイバーン乗りの七代将軍が一人であった。
彼は蒼白になりながら、全身が真っ黒い戦闘服に包まれている。
彼の視線は上を向いており、口から冷たい吐息を漏らしている。
庭に彼は虹色のワイバーンであるフレイクと共に舞い降りたのだ。
「うそでしょ」
そう叫んでいたのは、王妃であるルミーだった。
母親の表情が少しずつ歪み始めていき。
「今すぐに、防衛の陣を敷いてください。民を逃がします。異世界に」
「ブシャル―帝国はすぐさまきております。10人の滅び人がもうすぐそこまでです。逃げる暇はありません、七代将軍総出で食い止めます。王妃とロイフル殿下が異世界に渡ってください」
「ごめんなさい、それは出来ないのです。私はこの国から出る事が出来ない」
「なぜですか」
ウィーバーが青い髪の毛を逸らしながら叫ぶ。
「それが私がこの国の呪いを受けるという約束ですから、死ぬことが出来ないのです」
「それなら、王子だけでも、異世界へ」
「王子にはこの世界での役割があります」
「ですが」
「民を異世界に逃がす。それがハルニレムとの約束なのです。だから! 一刻も早く、民を城の地下に案内してください」
「なら、殿下はどうするのですか」
「この子は、私が飛ばします」
「異世界にですか?」
ロイフルが震える声で尋ねた。
だが、優しいかった母親の表情は。
見る見るうちに鋭くなっていく。
「あなたをこれから修羅に落とす事を許してください」
そう言って、母親のルミーはロイフルの額の八本の角の一つに触れると。
ただ囁いた。
「ローゴス」
と。
そして、体がふわりと浮いたと思ったら。意識が途絶えた。
夢を見ていた気がする。
遥か宙。雲の上。
遥か地平線。
いや海があるから水平線なのだろうか。
もっと勉強しなくちゃ。
エルレイム王国が見える。
禍々しい黒い塊が10個歩いている。
そして、7個の虹色のような輝きを持つ人が、1人また1人と消滅していく。
沢山の人々の光が1つずつ消えていく。
その光はどこか別な世界へと導かれていく。
だが、導かれずに、燃え尽きるような光もある。
それが人の死だと知ったのは後だけど。
夢うつつの中、足は歩いている事に気付いた。
どこかに向かっている。
暗闇の中、灰色の地平線をひたすら歩く。
小麦色の草花が1本1本咲き乱れて。散っていく。
意識の外の中で。
そこは巨大な穴だった。
いや、巨大な崖に囲まれており、中心に村がある。
自然と同化しており、沢山の木々で見えていなかったけど。
ふと眼を凝視させると。何か巨大で美しい二つの銅像が立てられている。
男性と女性だろうか。
どことなく父上と母上に見えるけど、まったくの別人のようだ。
崖に向かって体が落ちていく。
体がふわりと浮く。
そして体が重力に沿って、スピードを上げて落下していく。
ああ、このまま死ぬのか。
そう思った瞬間。
1人の老人。
額には雷のマークみたいな傷があったけど。
彼は丸坊主で、にこやかに屈託のない表情で。
「着たか!」
そう叫んだ。
空に向かって、1本の指を突き上げる。
そして。
「はいいいいいいいいいいいいい」
と巨大な叫び声おわげると。
声が爆風となり、ロイフルの体を重力から逆らうようにさせる。
体がぶわりと浮き上がり。
地面に転がる。
ぼろぼろの1軒の家が積み木のように積み上げられた石の真上に小ぢんまりと建造されている。
老人は杖を突きながら、ゆっくりと尻餅をついて唖然としているロイフルに近づいてきた。
「はて、王子よ、自己紹介からじゃて、わしの名前は色々あるのじゃが、この村ではジョド村長。またの名を神速のルーム・クラフと呼ばれて負った。その昔はただのサラリーマンじゃったがな、かっはっは」
神速? サラリーマン?
頭が追い付いていけない中で。
「途方に暮れている場合ではないぞ、修行と掃除、さらには料理、教える事は沢山あるでのう」
それから、ロイフルとルーム・クラフとの師弟としての生活が始まったのであった。




