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月曜日のHRの時間は、調理室でミルクティーを作り、クラスメートにタピオカミルクティーを飲んでもらった。
「ルチル嬢! とても美味しいです! 結婚してください!!」
しつこい。結婚しないから。
アズラ様と婚約していなくてもザーヴィッラはない。
あたし、面食いだからね。
ザーヴィッラ侯爵令息は無視し、他のクラスメートと話す。
「ルチル様、これ絶対に流行ると思います」
「本当に文化祭で販売してもよろしいんですか?」
「問題ありませんわ。文化祭同日に、アヴェートワのカフェでも販売開始しますのよ」
「そうなのですね。プロが作るタピオカミルクティー、ぜひ飲みに行かせていただきます」
「ありがとうございます」
ザーヴィッラのことがなければ、1年生の時よりクラス仲はいいと思う。
たぶん自己主張の強い子がいないからだろう。
こうして、A組の文化祭の出し物はタピオカミルクティーに決まった。
作り方も難しくないため、文化祭前に練習すればいい。
4月は何もせず、5月にメニュー表や飾り付けを作り、タピオカとミルクティーの練習をすることになった。
平民の子たちがいるクラスが、何をするのか調べなきゃ。
B組には、カイヤナ様がいるから心配していない。
F組はパンだってフロー様が言ってたし、フロー様とラブラド様がいるからB組と同じように心配していない。
問題はD、E、H組だ。
オニキス様に協力してもらって調べてもらおう。
善は急げとオニキス伯爵令息にお願いをしたら、バレンタインの時に食べたチョコサンドが食べたいと言われたので、祖父という名の特急便のお取り寄せをすることにした。
チョコサンドは、チョコレートショップのメニューの仲間入りを無事に果たしている。
調べてもらった結果、E組とF組は劇だった。
両方のクラス共、平民の子たちは大道具係だそうだ。
5月初めにでも、押し付けられていないか確認すればいいだろうという結論に落ち着いた。
しかし、問題があるクラスが1つだけあった。
D組だ。
「すごい勇気だよねぇ。数人反対したらしいよ。でも押し切ったんだって」
「別に販売するのは構いませんわ。お店の方でもディスクと絹糸をセット販売し、作り方を教えていますから。それに、8本編みまでしか皆様には教えておりませんしね」
そう、D組は、去年A組が販売したくみ紐を販売するそうだ。
発言者はペリット・ダンピマルラン侯爵令嬢。
別名、縦ロール。
去年ルチルと同じA組で、ルチルに口喧嘩でボコボコにされた女の子だ。
「問題は予算ですわ。きっとディスクと絹糸のセットを購入されるんでしょうが、そこにプラスで絹糸を購入すると予算が足りないと思いますわ」
「去年は予算ちょうどって言ってなかった?」
「去年は、お父様が原価でいいと言ってくださったからです」
「今年は? 今年もルチル嬢が、アヴェートワ商会から全部購入するって言ってたよね?」
「まだお父様には話していませんが、原価で用意してくださると思います」
「そうなんだ。ルチル嬢がいるクラスはラッキーってことか」
て言っても、今年は販売価格で買っても大丈夫……いや、蜂蜜が高いからなぁ。
それに、ストローは、既存の製造元に問い合わせて作ってもらうって言ってたからなぁ。
あたしがいてラッキーってことでいいでしょう。
「予算が足りなかったら、くみ紐諦めて他のにするかもだしね」
「そうですね」
虐めがないのなら、何をしてもらってもいい。
本当に、去年のヌーみたいなことがなさそうでよかった。
と、安心したのがいけなかった。
D組のボスは、選民主義の縦ロールなのだ。
誰が苦労するかなんて、一目瞭然だった。




