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アズラ王太子殿下の誕生日が終われば、秋期テストがあり、順位発表後に秋休みになる。

今回の順位も上位者は前回と変わりなく、中間より下の順位で変動があったようだった。


秋休み初日と2日目は、夏休みと同じようにお茶会を開いた。

招待メンバーも、前回とは変えずに招待状を送った。

スペンリア伯爵令嬢にだけは、招待状を家ではなく本人に手渡ししたが、初日から帰らなければいけないからと今回も欠席だった。


お茶会の学生メンバーとは、ルチルの部屋でたまにお茶をして交流を深めていた。

ガーネ侯爵令嬢が来る時だけ、シトリン公爵令嬢はアンバー公爵令嬢の部屋に行き、徹底してガーネ侯爵令嬢を避けていた。


秋休み3日目、祖父と父に話したいことがあると時間を作ってもらった。


2人とも二つ返事で了承してくれ、今、父の執務室で3人向かい合っている。


3人以外誰も部屋に入ることを断ったことから、ルチルが話したい内容が未来の事だと祖父も父も察してくれていた。


「お祖父様、お父様、話したい未来が2つあります」


「2つもあるのか。聞こう」


「まず11月に、北の辺境の地に魔物が出現します」


「11月のいつか分かるか?」


「いえ、残念ながら今回は日付が分かりません」


11月に起こる事件は、北の辺境の地が魔物に襲われて被害が出るんだよね。


そこでアズラ様が物資を届ける役目を賜って、辺境の地で辺境伯夫人とめくるめく夜を過ごしてしまうというものだから、日付が分からないんだよねぇ。


12月になる前に出発したから、魔物が襲ってくるのは11月で間違いないはず。


「今回、ルチルや殿下は視えたのか?」


「視えていません。それに場所の特定が難しくて」


「襲われる場所に前回みたいな特徴はないのか……」


ないのよー。

辺境の地が襲われている描写が無いのよ。

襲われて被害が出たから行ってくるって話だったから、辺境の地から戻ってきたアズラ様の話くらいでしか分かんないのよ。


「分かることは……カエデの木があって、チオノドクサが咲いているとしか」


本の中で、アズラ様が言ってたこと。


「辺境伯夫人が『来年からチオノドクサが見られなくて寂しい』と言っていた。綺麗な花だって聞いたからルチルと見てみたかった」「カエデの木があったから、魔物は村に入るのに時間がかかったそうだ」と。


この2つしか、話に出てこないのよー!

助けられるなら村の半壊を助けてあげたい。


カエデの木なんて雪国にある木だから、北の辺境にはそこら辺にありそうだよね。

チオノドグサも同じで、雪の中でも咲く花だからなぁ。


でも、領地中にチオノドクサがあるんだったら「来年から見られなくなる」なんてことは無いから、纏まって咲いてると思うんだよね。

そうであってほしい。


「分かった。探してみよう。魔物の数は分かるか?」


「十数体だと思います」


「そうか。そこまでの数になると、辺境伯にバレないようにというのは無理があるな」


「そうですね。ですが、説明はできませんし」


そこなんだよね。

あたしが今回早めに伝えたのも、辺境伯に説明できないのにどう助けるかで、話し合いに時間がかかると思ったからなんだよね。


そして……もう1つは、もっとややこしい話なんだよね。


「今、考えるのはやめましょう。ルチル、もう1つも聞いていいか?」


「はい。もう1つは1年後の年末です」


「随分と先の未来だな」


「はい。たぶん色々と時間がかかるから視られたんだと思います」


「時間がかかる? なににだ?」


「薬の開発です。1年後の年末に疫病が流行ります。多くの人が命を落とします。そして、その中に……」


「誰だ? 誰がいたんだ?」


「ルクセンシモン公爵です」


ジャス様のアレというのはコレのことで、ルクセンシモン公爵が亡くなり、嫡男であるジャス様は若くして爵位を継承する。

そして、家を狙う親族に言い寄られ、蹴落とされそうになる。


そこにアズラ様が手を差し伸べて、ジャス様は公爵として持ち直すが、ジャス様はアズラ様に絶対服従になる。

アズラ様のめくるめく夜の片棒を担いで、3人でうふふなんてあったりもする。


「スファンがか……」


ちなみに、お父様とジャス様の父親ルクセンシモン公爵は同級生だそうで、学生時代は一緒にやんちゃをした仲なんだそう。


今年のアズラ様の誕生日パーティーの時に、コソッとスファン・ルクセンシモン公爵が「アラゴの弱みを知りたかったら教えるよ」と、茶目っ気たっぷりに話してくれた。


ジャス様と顔はよく似ているのに、性格は正反対のようだ。


「来年の年末に、ポナタジネット国との境にあるノルアイユ地区に魔物が出ます。ルクセンシモン公爵の部隊が応援に行き魔物は退治できるのですが、その地でルクセンシモン公爵とその部隊の人たち、周りの村の人たちは伝染病に罹ります」


「また魔物か」


「我が国でも警戒体制をとるように、陛下と話し合った方がいいかもしれませんね」


「警戒体制はまだ早い。それに、大きな実害が出ない限り難しいだろう。それよりも、伝染病をどう食い止めるかだ」


たぶん伝染病の原因は魔物じゃないか、という描写があった。

でも、はっきりと書いてあったわけじゃない。

それでも可能性があるのならと、昨日ミルクに聞いてみた。


『いるぞ。体に無数の斑点がある魔物の血がかかれば、人間など10日で死に至る。毒みたいなものだ。その魔物の血に触れた者の血を触った者も、同じ運命を辿る』とのことだった。






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