58
ルチルは、2人に「この話を先にミルクにしたら、ミルクから魔物の血が原因だと教えてもらった」と伝えた。
祖父も父も眉間に皺を寄せ、目を閉じてしまう。
伝染病の原因が分かったところで、注意を促すことはできない。
北の辺境の地に魔物が出ることを言えないのと同じで、どうして魔物の血が伝染病になると分かったのかの説明ができないからだ。
腕を組んで指で腕を叩いていた祖父が、目を開けた。
「先程、薬の開発と言っていたな。薬の作り方が分かるんだな?」
「使う物だけですが……ドコアマロ草とブイアン草とボラズ草を混ぜ合わせ、煮たものになります」
「ドコアマロ草は、抗菌薬の薬草だから豊富にあるだろう。だが、他の2つは聞いたことがないな」
「スミュロン公爵に聞いてみますか?」
「尋ねてもいいが、何に使うのか聞かれたら困るな」
「でも、薬の開発となると、我々がするのはおかしいでしょう」
そう、そこなんだよねぇ。
アヴェートワ公爵家が薬を作って持っていたとは、どう考えてもおかしいんだよね。
でも、スミュロン公爵家に作ってほしいというのも怪しすぎるしね。
自然発生の伝染病なら気候や風土の問題を指摘して、学者に発見させるように仕向ければいい。
けど、今回は魔物からの伝染病なのだ。
指摘できるものが何も無い。
「お祖父様、お父様、ブイアン草とボラズ草は栽培が難しく、現時点では在庫は少ないはずです。
1年後の未来は、詳細に視ることができました。未来では、アズラ様が栽培と薬の調合を完成させていました」
「殿下が、か。そういえば、秋休みにスミュロン公爵の元、医学を学ぶそうだからな。未来で薬を完成させていてもおかしくはないな」
えええええ!? 嘘でしょ!?
アズラ様、医学学ぶの!?
なんで? どうして?
これ以上、頭良くなってどうするの!?
秋休みは、休むためにあるんだよ!
本では、医学書を読んで、サラッと思いついたみたいな感じで書かれていたな。
いつも弄りがぃ……おっと、いつも可愛いからチートだって忘れちゃうんだよね。
アズラ様は天才で何でもできる人だと、心に刻まなければ。
「薬のことは殿下に任せましょう。1年後に思いつくなら、今も作れるでしょう」
お父様、それは丸投げというものですよ。
「そうだな。ルチル、伝染病の特徴を教えてくれるか。題材があった方が、作ってもそこまで変に思われないだろう」
お祖父様も、丸投げする気満々ですね。
あたしも何も手伝えないので、丸投げするんだけどね。
アズラ様、頑張ってください。
また弄り……いえ、癒しますので。
伝染病の特徴を伝えると、「陛下と話し合ってくる」と2人は王宮へ行ってしまった。
秋休みのルチルの予定は、前半はアンバー公爵令嬢とナギュー公爵家領地に遊びに行くことになっている。
弟とミルクも連れて行っていいということで、一緒に行く予定だ。
今回の訪問で、年末のダンスパーティーのドレスのデザインを決めることになっている。
一緒に考えたいというシトリン公爵令嬢からのお願いになる。
ドレスのデザインを決める以外は、買い物をしまくる予定だ。
いつもなら一緒に遊ぶって騒ぎそうなオニキス伯爵令息は、その期間用事があるそうで、後半にアヴェートワ領の街に連れて行ってほしいとお願いされている。
チョコがけナッツを買いたいそうだ。
そのため、ナギュー公爵家での滞在が終われば、みんなで一緒にアヴェートワ領に移動することになっている。
この時に、フロー公爵令息とジャス公爵令息も参加予定だ。
アズラ王太子殿下は、「秋休みは忙しいからルチルと予定が立てられない」と泣きそうな顔をしていた。
忙しい理由の1つが医学の勉強だということを知ったのは、さっきのことだ。
会えなくてもいいから、何か差し入れを持って行こうと思った。
明日の投稿はお休みになります。
明後日はナギュー公爵家になります。
いいねやブックマーク登録、誤字報告、感想ありがとうございます。
読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。




