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シトリン公爵令嬢たちが遊びに来る日になり、転移陣の前で待っていたら2組とも時間丁度に現れた。


久しぶりという挨拶をして、お茶にするか? 遊びに行くか? と尋ねたら、遊びに行きたいと言うので、弟も誘ってアヴェートワ領最大の市場がある街に行った。


この市場では、アヴェートワ商会が扱っているほぼ全ての商品が手に入る。

レストランもカフェももちろんあり、ホテルは国内外でホテルを展開しているピャストア侯爵家のホテルになる。


「王都の街より大きいんじゃない?」


「そうなのですか? 王都の街には数回しか行ったことがないから分からないですわ」


「すごいわー! 可愛いアクセサリーショップが沢山ある!」


「えー! 先にカフェに入りたいー!」


「オニキスは食べ物ばっか! どうせ買い物に疲れてカフェに入るんだから、先に買い物よ!」


2人にジャンケンを勧めて、シトリン公爵令嬢が勝った。

シトリン公爵令嬢が、隠すようにしていた小さなガッツポーズが可愛かった。


アクセサリーショップをいくつか回り、帽子や靴等は男の子2人も物色していた。


「あ、そういえばオニキス様。あそこのお店、気に入られると思いますよ」


そう言って案内した店は、ドライフルーツのお店。


「ドライフルーツ? 俺、そんなに好きじゃないんだよね」


「まぁまぁ、店内をよく見てください」


ここのドライフルーツは、全てチョコがけ、またはチョコを染み込ませている。

ホワイトチョコ、ミルクチョコ、ダークチョコと様々だ。

そして、チョコがけにはナッツ類もある。


「え? え? 新商品? 新しいお店?」


「いいえ、これらはいちご丸ごとチョコと同時期に作った物で、お店もその時に作ったんですよ。アヴェートワ領にしかないスイーツのお店なんです」


アヴェートワ領だけの目玉は他にもあるけど、この店は1番の目玉だろう。

知ってしまった人は、このフルーツチョコたちを買いにアヴェートワ領まで来るのだ。

アヴェートワ領にお金を落としてくれるのだ。


「なんでもっと早く教えてくれなかったの。これなら寮の部屋に置いておけるじゃん」


「私も知りたかったわ」


「すみません。アヴェートワ領に来てくれた人限定の商品ですから」


オニキス伯爵令息は、チョコがけはナッツ類、チョコ染み込ませは全種類買っていた。

シトリン公爵令嬢とアンバー公爵令嬢、ジャス公爵令息は、気になった物を数点買っていた。


少し疲れたのでカフェでお茶をし、この日は帰路に着いた。

1週間あるので帰り間際にお土産を買いに、もう1度来ることになったからだ。


次の日の朝からは訓練が4人になるので、祖父だけでは大変だろうと父も教えてくれることになった。

なんとアンバー公爵令嬢も参加したいと、自分の木剣を持ってきていたのだ。


昼食時に会った4人は、弟とオニキス伯爵令息が疲れ切っていて、ルクセンシモン公爵家の2人は疲れ知らずなのか昨日よりも元気に見えた。


その日の午後は川下りをした。

昼食後にズボンを渡されたシトリン公爵令嬢とアンバー公爵令嬢は不思議そうに着替えていたが、川の上流に着くなり顔を輝かせていた。


普通の令嬢は、川下りしたいなんて怒られるからね。

アヴェートワ公爵家が特別なのよね。

ただ単に、我儘を聞いてくれるとも言うけど。


小船に2人ずつ乗り、オールで川を下っていく。

もう何回も遊んでいるルチルと弟は2人一緒に、オニキス伯爵令息とジャス公爵令息、祖父とシトリン公爵令嬢、父とアンバー公爵令嬢のペアで小舟に乗った。


さすが祖父と父は紳士で、川の魚を教えたり、川辺に見える花や木にとまっている鳥を教えたりして、令嬢2人をもてなしていた。

残りの2隻は途中から勝負をはじめてしまい、川下りに慣れているルチルたちが勝った。


ゴールの川下では、侍従や侍女たちがお茶の準備をしてくれていて、ジュースとゼリーを楽しんだ。

お茶が終わると羽子板を楽しみ、夜はBBQをして蛍鑑賞までした。


次の日からもチーズフォンデュを外で食べたり、羽子板やバレーボールをしたり、粉からうどんを作って食べてみたりと大いに楽しんだ。

夜は、みんなで作りかけのパズルをしながら、その日の感想を言い合った。


帰る日の前日、お土産を見に、また市場に来ていたルチルたちは日用雑貨のお店に入った。

置物や筆記用具が並んでいる中で、オニキス伯爵令息が手のひらサイズのウサギのぬいぐるみを触っていた。


「買われないんですか?」


「好きそうだなって見てただけ」


誰が? とは聞かなかった。

聞ける雰囲気ではなかった。


「では、お土産に買われたらよろしいのに」


「ううん、いいんだ。ぬいぐるみではもう無理だから……」


泣いているような横顔に、ルチルまで泣きたくなった。


どうしてこんなにも主要キャラと絡む人なのに、本には出てこなかったんだろう。

オニキス様の背景だけが分からない。

助けてあげたくても、助け方が分からない。


「ジャス、そんなもの買ってどうすんの?」


ぬいぐるみを元の場所に置いたオニキス伯爵令息は、いつもの明るくてチャラい雰囲気に戻っている。


「ガーネが何か買ってこいって五月蝿かったんだ」


ガーネ様、五月蝿いって言われてますよ……悲しいですね……

でも、蛇の絵が描いてあるペンはない……


「ジャス公爵令息、蛇のペンより花のペンの方がよろしいかと」


ジャス公爵令息に、穴が空くんじゃないかというぐらい真っ直ぐに見つめられる。


「あの……何か……」


「ジャスでいい」


「え?」


「お! やったね、ルチル嬢。ジャスとようやく友達になれたね」


嬉しい! ジャス様って呼んでいいってことだよね!

やったー!


こうしてルチルは、ジャス公爵令息をジャス様と呼べるようになった。


楽しかった1週間は、あっという間に終わった。

「帰りたくない」と言うオニキス伯爵令息を引きずるように、2組は帰って行った。






昨日はピャストア侯爵令嬢を公爵令嬢と誤字っていました。正しくは『ピャストア侯爵令嬢』です。ご報告くださりありがとうございます。本当助けていただいています。


明日はヴァルアンデュ領になります。少しずつ物語が動き始めます。


いいねやブックマーク登録、誤字報告、感想ありがとうございます。

読んでくださっている皆様、ありがとうございます。書く力いただいています。

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