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 ルベルはガンマが門の外に出る。門の外は王宮結界の外である。分体結界は破られていため、完全に結界の外だ。アーセック王国では結界の外に出たことのある人間などいない。ルベルもガンマもその緊張感を感じていたが、不思議と怖い気持ちは湧いてこなかった。まだ武者震いが出るくらいの余裕があった。


 ルベルの魔法による牽制が効いたのか、ルベルもガンマも何事もなく結界の外側に出てくることができた。それに続いて王宮騎士団、勇者選抜の応募者たちも続いて出てきた。王宮騎士団の団長であるぺリルがルベルとガンマに近づいてくる。


「ガンマ殿、ルベル殿。感謝する。お陰で一番の難関だと思っていた門の外で迎え打つ作戦が実行できることになった」

「なあに、俺はいちいち統制と士気を考えないといけない立場じゃねえからな。好きなようにやらせてもらっただけだ」


 ガンマのその男気にぺリルは心の底から感謝と尊敬の念を抱いた。ぺリルは、ガンマが今は領域騎士団だと言っているのを聞いていた。領域騎士団の中には元々は王宮騎士団だったが、厳しいしきたりに嫌気が差して敢えて領域騎士団へ志願する者もいる。ぺリルには、今目の前にいるガンマはただ不器用なだけで、冷静に状況を把握して何をすべきかが分かっている。そしてそれがどれだけ困難なことであろうと、自ら先陣を切ってそれを行うことができる勇敢で優秀な指揮官である素質を見出していた。事実、ガンマの動きに呼応して王宮騎士団の士気も高まっている。


「二人とも、、しっ」


 ルベルが人差し指を口に当て、二人を制する。


「……おかしいな、何も気配を感じない」


 ルベルは周囲を見渡したが、誰もいない。てっきり魔族は門が開くのを待ち構えていてその機会をうかがっているものだと思っていた。


「そんなはずはない。落ち着け、耳だ。耳に集中しろ……」

「おいっ! ルベル。何してるんだ!」


 急にガンマの大声が近くで響いてきて、一瞬息を飲んだ。


「だから、静かにして下さい。こうしていれば遠くにいる敵を察知できるんです」


 ルベルは全神経を耳に集中した。身体強化魔法。マナやライカのように上手くはできないが、耳と目だけなら、マナと同等の能力を発揮できるようになっていると自負していた。


 すべての者達が門から出てきて、一旦門は閉じられた。門が空いている間に魔族が攻撃をしかけてくると思っていたため、一旦安堵の空気が流れた。


「ふうっ、何だ誰もいねえじゃねえか」


 ガンマが皆を代弁する。と、ルベルは微かに話し声を聞いた。


「しっ、何か聞こえる」

「ん? 何言ってんだ? 俺には何も聞こえないぞ」

「私にもだ」


 ガンマとぺリルには何も聞こえてないが、ルベルには何か微かな話し声が聞こえていた。


「これは、何だ……? 何でこんなところで話声が聞こえる? しかも単調な……そうかっ!まずいっ」

「ど、どうした? ルベル」


 ルベルが何かを察知して大声で叫んだ。


「みんな逃げろ! 一旦この場から散会するんだっ!」


 ルベルの声を聞いても誰も動かなかった。いや動けなかった。いきなり状況も分からず散会しろと言われても普通は思考はついていけず、理解できないまま立ち尽くすことしかできない。


 と、急に地面ががたがたと揺れ始めた。


「な、なんだ? 何が起こっている?」


 しばらくすると地面の揺れは収まった。が、今度は急に地面の中から大きな岩の塊が隆起してきた。その塊は一か所だけでなく、ルベルたちを囲うように円形状に出現した。


「遅かったか……。魔法の詠唱だと気づかないなんてっ」


 ルベルは気付くのが少し遅かった。もうすでにルベルたちを囲う岩が完成してしまっていた。


「と、閉じ込められたということか……」


 ぺリルは後ろを振り返って、門の上にいるはずのアンリを見ようとしたが、岩の高さが高く、門を見ることさえできなかった。


「成功したようだな」


 上から誰かの声が響く。ルベルはその声に聞き覚えがあった。忘れもしない。ヘイアンの街で聞いたあの声だった。


「おっ、君はヘイアンの街のときの。久しぶりだな」

「ああ、お前の顔は忘れてないぜ。色男さんよ。そんなところに浮かんでないでとっとと降りてこい!」


 ラーカイルはルベルを見下ろしたまま、黙ったままだった。


「どうした!? 怖気づいたのか?」

「そうではない。俺の任務はお前たちをここに留めておくことだ。戦うよう指示された訳ではないからな」


 しばらくすると、ラーカイルの元へサリュが合流してきた。


「どうやら、こっちだったか」

「はい、エルト様の計画は流石ですね。ここにいる勢力を留めておけば大丈夫でしょう」


 二人が話している声ははっきりとルベルには聞こえた。自分たちは罠に嵌めたられた。何とかしないと、と思っていると急に隣で大声が響いた。


「おらぁ、魔族さんよ。よくも俺の街をめちゃくしゃにしてくれやがったな。絶対に許せねえ! その腐った頭をぐしゃんぐしゃんにしてやるから降りてこい! そこのおばさんも一緒に相手してやっからよっ!」


 ラーカイルは挑発には乗らなかった。それは上官であるエルトの指示であったからだ。『どんな挑発にも乗るな』。ラーカイルは忠実に守っていた。


「何だと、貴様。もう一度言ってみろ」


 だが、サリュは違った。完全に怒っている。ラーカイルはとても嫌な予感を感じていた。


「おうっ、聞こえなかったか? もう年なんじゃねえの? お・ば・さ・ん」

「殺すっ!」


 サリュは目を充血させて怒りを露わにした。


「サリュ様、いけません。エルト様から止められていいます」

「いや、私は許さない。あのバカ男に立場をわきまえるよう教育してくるっ。どのみちここに留めておいても、殺してしまっても一緒だろ」


 サリュは頑固だった。そんな上官の性格をラーカイルはよく知っていた。こうまでなってしまっては何を言っても無駄であると。そして、サリュは静かにガンマの前まで降りて行ってしまった。


「やれやれ……。エルト様に何と報告したらいいものか」



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