【動き出す影】
先日、日間ランキング234位に載ってました!
本当に皆様のおかげです。ありがとうございます!!
初めての小説投稿で、しかも異世界ファンタジーという大激戦ジャンルの中で――
まさか自分の物語が、ランキングに載るなんて夢みたいです。
一人でも多くの方に読んでもらえて、反応をいただけて、
ここまで続けてこれたことがただただ嬉しいです。
これからも、もっと面白く、もっと心に残るような物語を届けられるよう頑張っていきます!
応援、本当にありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします!!
ネザリア城・指令室
巨大な戦略盤の上で、複数の駒が淡く赤い光を放つ。
じゅぴがひとつの印を指でつつくと、その輪郭がくっきりと浮かび上がる。
「“眠りの縛鎖部隊”っすね。ついに動いたみたいっす」
「場所は神聖連合領の南端、“聖封の境界”……まっすぐ来るとしたら、あと数日っすよ〜」
「……ずいぶん、堂々と動いてきたねぇ」
リィナが笑みを浮かべながら、刃の柄を撫でる。
「対策は?」
「準備万端っす♡ 逆に……せつな、どうするっすか?」
漆黒の王は、地図から目を離さずに静かに言った。
『迎え撃つ。出撃の準備を整えろ』
じゅぴがニッコリ笑う。
「は〜い♡ じゃあ、城全体に通達いれるっすね〜!」
神聖連合領・交易都市アールフェン
アールフェン冒険者ギルド・第七支部
ギルド内は、どこか落ち着かない空気に満ちていた。
「なんかさ……軍の動き、ちょっとおかしくない?」
「今朝の便も止められてたらしいぞ。神聖連合の“奥”でなんか起きてるって話だ」
セリナは何気ないふりで、噂話を拾いながら耳を澄ませていた。
(……やっぱり、もう動き出してる。)
グレンたちの一団も、冒険者に紛れてギルドの片隅に座っていた。
その視線は周囲の動きと、セリナに向けられている。
(空気が、確実に変わっているな……)
グレンは静かに、目の前の依頼書を伏せた。
(この都市も、じきに巻き込まれる。“盾”として、何を選ぶかだ)
セリナがふと彼に目をやる。
ふたりの視線が交わる。
(……せつな様、私はこの街をどうすれば……)
仮面の奥で、小さな問いが浮かぶ。
だが、今はまだ――
それに答える言葉を、彼女は持っていなかった。
神聖連合領・交易都市アールフェン
ギルド支部裏・静かな路地裏
午前の光が白い壁に差し込む中、セリナは一人、人気のない場所で目を閉じていた。
そして――《幻響連絡》が、静かに繋がる。
『――セリナ』
その声だけで、すぐに分かる。
せつな様だ。
「はい。セリナ、応答しております。アールフェンに異常な動きはありませんが、神聖連合の部隊は確実に動き出しています」
『……承知している。グレン達からの報告でも確認済みだ』
わずかに間を置き、せつなの声が、さらに静かに落ちてくる。
『……セリナ。お前がこれまでの潜入で、親しくなった者たちについて――我の庇護下に置こう』
「……え?」
言葉が一瞬だけ、思考に引っかかった。
『お前が選んだ者たちならば、それは我が“許す範囲”に入る。』
『アールフェンの民、その街、その空気――“お前が守りたいと思ったもの”を、我は尊重する』
(……せつな様)
言葉にはされない感情が、胸を満たす。
(私の“情”を、否定しないで……認めてくれるのね)
『ただし、神聖連合は別だ。奴らだけは、例外なく潰す』
『アールフェンを戦場にしたくなければ――“邪魔をさせるな”。止めておけ』
セリナは深く息を吸い、静かに頭を下げた。
「……かしこまりました。必ずや、支障を出さぬよう努めます」
『任せたぞ、セリナ』
通信が途切れ、静寂が戻る。
風の音だけが耳に残る中で、セリナはそっと目を開いた。
(……なら、私はこの街を“護る”。
せつな様の手が触れなくても済むように――その前に)
仮面の奥の瞳が、決意の色を灯す。
彼女は再び、ギルドの賑わいの中へと歩を戻していった。
神聖連合領・交易都市アールフェン
アールフェン冒険者ギルド・第七支部
その日、セリナは受付前で依頼書に目を通しながら、ふと足を止めていた。
耳に入るのは、冒険者たちのいつもの雑談。街の騒がしさ。何気ない日常。
だが彼女の内心には、先ほど届いた“声”がずっと残っていた。
《お前が報告した者たちは、我の庇護下に入れる。》
せつな様の、あの静かな命。
(……本当に、“この街”を守る気でいてくださるなんて)
彼はあくまでも、敵意にのみ刃を向ける。
道を踏み外さぬ者に対しては、その力すら“盾”にする。
セリナは依頼書を元の場所に戻し、受付嬢ミラに微笑んだ。
「今日は、依頼は見送ります。……街を、少し歩いてみようかと」
「えっ、セリナちゃんが? めずらしいね」
「ええ……何となく。風を感じておきたくなって」
ギルドを出た彼女の足は、そのまま街を一巡し、仲間たちが集う場所――
ルカや他のギルド員たちが集まる食堂へと向かった。
「よう、セリナ。何だ、今日は依頼に行かないのか?」
「少しだけ、様子を見ておこうかと思って」
(“異変”の気配が、もし街に広がったら――
私が、最初に止めなければ)
笑みの裏で、彼女の視線は仲間一人ひとりの顔を、さりげなく確認していた。
その頃、同じ街の離れた一角では――
グレンたちが、淡々と街の巡回を終え、報告のまとめを行っていた。
「……神殿周辺の警備が強化されてる。巫女関連だな、恐らく」
「街の商人たちは妙に警戒してる。まだ噂の段階だが、緊張は確実に高まってる」
グレンは、セリナの姿を思い浮かべながら、短く呟いた。
「……あいつも動き始めたか。仲間を守るために」
その背中が、“かつての戦場”でのものに戻りつつあることに、彼は気づいていた。
そして――ネザリア城・作戦塔
じゅぴとリィナが、作戦卓の上で陣形図を並べ、何やら言い争っていた。
「そこの部隊、もっと前に出せば早く潰せるっす!」
「だめよ。それじゃ“すぐ死んじゃう”じゃない」
「早いほうが楽っすよぉ。じゅぴ式無慈悲殲滅プラン、試してみたいっす♡」
「……せつな、どっちがいい?」
せつなは椅子に深く腰掛けたまま、静かに告げた。
『どちらでも構わん。ただ――“我が意志に背くもの”に、情けをかけるな』
ふたりは顔を見合わせて、同時に笑った。
「了解っす♡」
「もちろん、殺し甲斐があるねぇ……ふふ」
その様子を見守っていた白銀の巫女は――
ほんの少しだけ、口元をほころばせた。
「……変な人たち。でも……きっと、まっすぐな人たち」
その微笑みは、まだ小さく、だが確かな変化を告げていた。




