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【完結済】堕神ノ書 〜異界支配の始原〜  作者: せつな
第四章【仮面の再出発】
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【囚われの対話】


ネザリア城・応接室


静まり返った室内に、微かに魔力が揺れる。

巫女は椅子に腰をかけ、結界の中でただ黙っていた。

対面に座るせつなが、その瞳をじっと見据える。


『――わざと捕まるような真似をしたのは、なぜだ?』


問いは静かだが、その奥にあるのは明確な威圧と――探るような観察の眼。


巫女は一瞬、目を伏せたまま黙していた。


だが次の瞬間、ふと目を上げ、淡く微笑む。


「……気づいていたのですね」


『当然だ。“逃げる意志”も、殺意ある“反撃の魔力”もなかった』


「私は……“ここ”に来ると、夢で視ていました」


じゅぴが目を細めて反応し、リィナが興味なさげに脚を組み替える。


「あなたと……この部屋で対話する未来を。私はそれを、“見た”んです」


『予知が、確定の未来を映すとは限らない』


「ええ。でも……“見た未来”に自ら歩み寄るのも、また、私の意志です」


静かにそう語る巫女の声に、芝居や誤魔化しの気配はなかった。


せつなはしばらく黙ったまま、巫女の顔をじっと見つめる。


その視線の奥にあるのは――“道具”か、“敵”か、“未知の可能性”か。

いずれにせよ、この対話がそのすべての分岐点となるのは間違いなかった。


『……続けろ』


せつなの低い声が落ちた瞬間、

部屋の空気が、まるで一層の緊張を纏ったように張り詰める。


しかし巫女は、怯えるでもなく、

かといって挑むような敵意も見せず――ただ、静かに口を開いた。


「……私は、“あなた”に興味を持ちました。いいえ、“見せられた”のです」


「この世界の理を覆し、神々が恐れ、国が滅ぶ未来。

そして、その中心に――あなたが立っている未来を」


じゅぴが片眉を上げ、リィナが小さく鼻を鳴らす。


「王国が滅んだとき、それは確信に変わりました。

“絶対的な存在”が、確かにこの地に現れたのだと」


彼女の瞳は、恐怖ではなく――熱を帯びていた。

まるで、運命に引き寄せられた者のような、奇妙な信仰にも似た色。


「私の“予知”は、選択肢を示すだけです。

でも、あなたは……どの未来にも“干渉”してくる。

それはもう、“運命の域”を超えている」


巫女は立ち上がり、結界の内側からそっとせつなを見上げた。


「ですから、私は……“自ら選びました”。あなたに捕らえられる未来を」


「私の力が、あなたの“行く先”を測るのなら――」


「……それを、見届けたかったのです」


部屋に沈黙が落ちる。


じゅぴが静かに髪をかき上げながら、小さく呟いた。


「なるほどっすねぇ……“自分の意思で檻に入った鳥”ってわけっすか」


『……未来を視る力。それが本当に使えるのなら――』


せつなが立ち上がる。


重厚な鎧の足音が、床に響く。


『――その力、我の“歩み”に利用させてもらう』


「……構いません」


「けれど、“力”には対価があります。

……それでも、望まれるのなら、私は差し出す用意があります」


その声音に、どこか“覚悟”の色が混ざっていた。


白銀の髪が、静かに揺れた。


せつなは無言のまま、ただその言葉を受け止めていた。


赤い一つ目が、じっと彼女を見据えたまま、淡々と命じる。


『この者を、最上位のもてなしで迎えろ。

城の上層を空け、専属の世話係を一人つけておけ』


「了解〜っす♡」


じゅぴがぴょんと跳ねてから、ぱちんと指を鳴らす。


「うちの“最高級のおもてなし”っすよ? 安心してくつろいでほしいっす♡」


その横で、リィナは不満げに頬を膨らませながらも、無言で命令に従う。


「ふふ……まるで、客人ね。捕虜なのに」


「捕虜って言葉は嫌いっすね〜。だってここ、“選んできた場所”っすから♡」


じゅぴの言葉に、巫女はふっと笑った。


せつなはその光景を、ただ静かに見ていた。



ここから、未来は確かに動き出す――

この“白銀の巫女”を手にしたことで、ネザリアの影は、さらに深く、さらに広く――世界を覆い始める。

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