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踏みにじられる日々

「優菜が言ったから、お前はここにいられるんだ。いいか、くれぐれも調子に乗るんじゃないぞ?」


 伯父からは優菜がいない時に何度も、念を押すと言うよりも釘を刺すようにそう言われた。


「居候なんだから、少しは家のことをやってちょうだい」


 伯母からはそう言われ、当時いた家政婦の家事仕事を手伝うようになり――やがて恵がいることで金がかかるからと家政婦は辞めさせられ、代わりに恵が家のことをするようになった。


「優菜ちゃんと仲良くして、ずるい!」

「可哀想ぶって、優菜ちゃんを独占するなんて最低っ」

「冴木は優しいんだから、お前、もうちょっと遠慮しろよ!」

「安原はもっと、自立しないとな。いつまでも、冴木に面倒見て貰えると思うなよ?」


 同級生達や教師からは、恵が優菜を束縛し独占しているとよく言われた。暴力を振るわれる訳ではない。けれど無視をされたり、陰口を叩かれたりした。最初は違うと言ったのだが、聞いて貰えなかったのと優菜が恵を離さないので、今では下手に刺激しないように黙っていることしか出来なくなった。

 もっとも、いくら辛くても学費を払って貰っているからと学校を休むことは出来ない。

 更に家では、引き取っているのだからとご飯支度や掃除洗濯、あと優菜の宿題をするように言われてやっている。ただ恵の顔を見たくないからと、伯父夫婦はわざわざお金をかけて恵の部屋には風呂とトイレが設置されていた。だから学校に行く時と、家事をする時以外は恵は部屋に引きこもっている。

 とは言え、食材は食べれば無くなるものだ。だから今日のように数日に一度、優菜を家まで送った後で恵はセーラー服姿のまま一人、スーパーへ向かった。

 ……歩きながら今までのことを振り返っていた恵は、これからのことを考えて深いため息をついた。

 季節は、七月。そして今、恵は高三である。

 やることがなく、部屋で勉強ばかりしている恵は高校進学の時同様、優菜が「一緒に行きたい」と言ったから、大学進学することになりそうだ。成績的には大抵のところには行けるが、進学しても今まで通り、優菜は課題や宿題を恵にやらせるつもりだと思われる。


「私をいるって言ってくれるのは、優菜ちゃんだけ……でも、ずっとこうだと……辛いなぁ」


 誰か、私自身を必要としてくれないかな。

 恵がそう呟き、ぽろりと一粒、涙を零すと――不意に恵の足元に光輝く魔法陣が現れ、彼女は唐突にこの世界から消え失せたのだった。

季節を五月から七月に変更しました。

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