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ドアマットヒロインは魔王のお気に入りになる  作者: 渡里あずま


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ドキドキ(ときめきではなく恐怖)

 眩しい光に、目を閉じて――次に目を開けた時、恵は石造りの部屋の中にいた。

 一人ではなく、ファンタジー映画で見るような格好をした外国人から遠巻きに見られている。訳が解らず辺りを見回すと、赤い髪をした二十歳くらいの美青年が近づいてきていきなり恵の前に跪いた。


「聖女様」

「……え?」

「あなたは、この世界の瘴気を浄化出来る聖女様だ」


 そして訳の分からないことをキラキラ笑顔で言い切ったかと思うと、恵の手の甲に口づけてきた。

 ……断りなく、とは思ったが周りから止められなかったので、ここでの挨拶なのかもと思って我慢することにした。代わりに言葉も通じるようなので、聞きたいことを聞くことにする。


「聖女……ですか? あの、あなたは?」

「私は、この国の王子だ。リュカオンと呼んでくれ」

「えっ……」

「あなたにはぜひ、名前で呼んでほしいし……あなたのことも、名前で呼びたい」


 青い瞳を笑みに細めての言葉だが、整った顔と美声で言われてもうっとりする前に、距離の詰め方が性急過ぎて怖いとしか思えない。

 とは言え、先に名乗られてしまえばこちらも名乗らない訳にはいかなくて――泣きそうになりながら、いや、我慢出来ずに目を潤ませながら恵は答えた。


「……恵、です」

「メグミ……怖がらなくて良い。君のことは私と、この国が守るから」


 いや、まずリュカオン達や、今のこの状況自体が怖い。

 ……そう思いつつも、下手に刺激をして状況が悪化するのも怖くて、恵は何とか笑って誤魔化すことにした。



 あの後、恵は目を覚ました石造りの部屋から、豪華な部屋へと移動した。そして、いきなりのことで疲れただろうとお風呂に入れられたり、部屋同様に豪華な料理を出されたりした。

 時計はないが窓の外からの光を見る限り、今は午後くらいだと思われる。

 しかし、夜にはまだ早いが一度に色々とあり過ぎて恵はすっかり疲れ果てていた。それは傍から見ても解ったのか、ロング丈のメイド服を着た女性達に「まずはゆっくりお休み下さい」と言われていたので、お言葉に甘えて横になることにした。

 ……展開に戸惑うばかりだったが、異世界転生や聖女召喚はネット小説や漫画で履修している。

 詳しくは、明日以降に話を聞くが――優菜がいない今、恵が調子に乗って馬鹿をやらなければ少なくとも嫌われずには済むんじゃないだろうか?


(ちょっと、いや、かなり怖かったけど……いるって言って貰えるように、頑張ろう)


 そう心に決めて目を閉じた恵だったが、その決意はやがて打ち砕かれることになる。

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