結末
そう言って、笑顔でヒラヒラと手を振ったノヴァに応えるように――不意に優菜達の頭上の空間が裂け、現れた黒い空間に吸い込まれるように優菜の体が浮いた。それに慌てたリュカオンが、優菜の名前を呼んで腕を掴んだが、彼女の体はずっと引っ張られ続けている。
「ユウナ!」
「なっ……何よこれっ!?」
「何だよ、余裕あんなー……昔の文献で、読んだんだわ。一回だけ、二人目の聖女が呼ばれたけど……一週間くれーで、ソイツは今みたいに吸い込まれてこの世界から消え去ったんだとー」
「「「えっ!?」」」
「恵達はともかく、何で皇太子が知らねぇんだよ? 平和ボケかー? 魔王にとって、聖女は要注意人物だと思ったから事前に色々、調べて出てきた話だけど……ま、元の世界に戻るんじゃねー? 知らねぇけど」
「元のって……やっ、嫌よ!? 戻っても、落ちこぼれるだけだもの!? ここにいたら、わたしはイケメン達に守られて、愛されて……っ」
空間の裂け目に呑み込まれそうになるのを、自分からもリュカオンの腕を掴みながら必死に抵抗している。
落ちこぼれという単語を聞いて、今更だが自分が優菜の勉強を肩代わりしていたので、いなくなったことで負担がいったのだと思い至った。
だが、しかし。
「そんな理由で、親を捨てるのっ!? あんなに、可愛がられてるのに……私には、もういないのにっ」
「何よ、偉そうに! わたしがどうしようと、アンタに関係ないでしょう!? って、ちょっと! ボケッとしてないで、助けなさいよ!? アンタ達もっ」
恵は、つい我慢出来ずに叫んでしまった。本音だけではなく、涙までポロポロとこぼれ落ちた。
そんな恵を憎々しげに睨んで、優菜が怒鳴り返す。お互い腕を掴んであがいているが、下手に掴み直そうと手を動かしたら、逆に離れてしまいそうで動くに動けない。それ故、映像には映っていないが、部屋に他にいるらしい相手に声をかけている。
「……恵を泣かせるなよ、馬鹿女。ムカつく」
「やっ……!?」
だが、我に返ったようにリュカオンと優菜に駆け寄ろうとした男達は、低くなったノヴァの声に怯んで動きを止めた。
その隙を突くように、そしてリュカオンと優菜を引きはがすように強風が二人に吹きつけた。一瞬、けれど確かに手の力が緩んだことで優菜はリュカオンから離れ、その体は宙に浮いて一気に空間の裂け目へと吸い込まれてしまう。
「バイバーイ♡」
「いっやあぁぁぁぁぁっ!」
そして再び笑顔で手を振ったノヴァと、唖然とした恵達。更に一部始終を見ていた人々や魔族の前で、二人目の聖女だった優菜は絶叫しながら呑み込まれ、裂け目が閉じたことで完全にその姿を消したのだった。




