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ハチソン効果

 ここらで終わりかというと、そうではなくて、これから「一分で分かる場の量子論」が始まる。ひつこいようだが、なんせ一分なので省略しまくりである。その辺はご容赦願いたい。


 しかし、そうはいっても場の量子論を一分で解説するのはさすがに無理がある。第一、筆者自身が理解しきれていない。ここでは一番簡単なゲージ理論を説明する。


 全ては量子力学で説明される、物質の波動性と粒子性から始まった。不確定性原理でいろいろ説明されるが、これを理解しろという方が無理である。アインシュタインも最後まで受け入れなかった。波動だったり粒子だったりどっちだ、というわけだ。


 場の量子論では、波動も粒子も「場」であるということで一応この矛盾を解決している。ただし、それで全てが説明できるわけではない。今のところ、標準理論でそう説明されているということだ。


 つまり、


 粒子=波動=場


 というのが現代の認識である。

 ゲージ理論とは、ゲージ原理に基づく場の理論である。

 ゲージ原理とは、ゲージ変換に対して不変な場が存在するという要請である。


 ここで、「対称性」という言葉が出てくる。ゲージ理論では、対称性によって力を分類できる。「対称性」とは、リー群とかリー代数とか呼ばれる数学のことで、ゲージ変換をこの「対称性」で分類する。


 U(1)だと電磁力


 SU(2)だと弱い力


 SU(3)だと強い力(核力)


 こんな感じである。


 このU(1)だの、SU(2)だのSU(3)だのがリー群で、「対称性」のことだ。ある「場」にU(1)だの、SU(2)だのSU(3)だののゲージ変換をすると、三種類の力に変換できてしまうのである。このあたりになると、物理というより数学になってしまって、イメージが全くつかめない。


 そしてゲージ理論で説明されるのがゲージ粒子、つまりボース粒子、ボソンである。

 これも一行で説明すると、光などの、非物質粒子のことである。


  では、ゲージ理論では、方程式は何で書かれているのだろうか? テンソルか?


  答えはスピノルという、複素行列である。つまり、


  「この宇宙はテンソルで記述できる」という前章の主張は、


  「この宇宙は複素数で記述できる」


  に訂正されるのだ。しかもゲージ理論では、「対称性」が重要なので、「対称性」さえ満たせばスピノルでなくてもかまわない。別の何かで記述できる可能性がある。

  つまり将来、別の数学的表現に理論が変わるかもしれないのだ。


 以上で「一分で分かる場の量子論」(というか「一分で分かるゲージ場」)は終了だが、やはりここから話は飛躍する。ここから始まるのは著者の妄想であり、あまり真剣に受け取らないでほしい。SFでも読むつもりで流してもらいたい。


 ゲージ理論では、波も物質も場であり区別はない。

 ここでマイクロ波兵器のエッセーを読んでくれた読者もいるかもしれない。マイクロ波は、水分子に照射すると振動させて発熱させる。


 実は全ての物質には固有振動数というものがあり、この周波数の音波や電波に共振する性質がある。


 ところで、ゲージ理論によれば、波動(音波・電波)も物質も場であり、区別はない。


 ならば、真空にも固有振動数はあるのではないか?


 すぐに思いつくのは、宇宙マイクロ波背景放射や、シューマン共振くらいだ。

 宇宙マイクロ波背景放射はおよそ160GHzであり、ミリ波である。一方シューマン共振は超長波であり、ずっと低い周波数である。


 真空を共振させたら、何が起こるだろう?


 ハチソン効果という現象を思い出した。


 一気に香ばしくなってきた。


 ハチソン効果とは、ハチソンという、カナダの発明家が行った実験で確認されたとされる、反重力現象である。


 ハチソンの実験は、テスラコイルなどを用いて高周波を発生させていたようだ。それでも、数百kHzであり、ミリ波にはほど遠い。また、実験装置もそれほど大規模なものではなかったようだ。


 もしも真空に固有振動数があるなら、複数の周波数が存在するのかもしれない。テスラコイルを使った実験は高校生でもしているし、YouTubeにもたくさんの動画がある。もし数百kHzでハチソン効果が起こるなら、既に発見されているだろう。似たような反重力現象として知られている、ビーフェルド-ブラウン効果なら、再現動画がいろいろある。


  同様に原理が不明な、EMドライブの論文では2GHz周辺が使われている。何か関係があるかもしれない。

 テスラコイルは共振回路だが、電気回路は複素数で記述できる。このアナロジーから、ラビ振動が導かれる。複素数は共鳴と関係があるようだ。複素周波数を使えば複素エネルギーにアクセスできるというのは、さすがに安直すぎる気がする。電子スピン共鳴もマイクロ波である。何か関係があるのかは、今のところ分からない。


 もっと複雑な条件があるから、再現できないのかもしれない。

 例えば複数の周波数に順序があるとか。複素周波数ならラプラス変換とか。ここまでくると完全に妄想である。


 筆者にもっと余裕があればクラウドファンディングで資金を集めて実験するのだが、残念ながら、そんな余裕はない。誰かやってみてくれないだろうか。


 ◆


  スピノルは複素行列だと書いたが、正しくは複素ベクトルらしい。じゃあベクトルでいいじゃん、とはならない。スピノルはジャイロスコープのようなもので、回転しているベクトルだからだ。


  しかも、通常の回転ではない。三次元回転するベクトルはSO(3)で表現されるが、スピノルはSU(2)で回転している。所属するリー群が違う。それではどこで回っているかというと、複素空間で回っているのだ。


  理系にしか分からないと思うが、電気回路のフェーザを複素空間に拡張したもの、といえばイメージしやすいかも。ちなみに複素平面での単位円上の回転は円周群と呼ばれる。そしてこのリー群はU(1)である。つまりフェーザはU(1)なのだ。スピノルについては、複素行列が誤りかというと、ユニタリ行列はSU(2)なので、間違いではない。ベクトルとのアナロジーの方がイメージしやすいだろう。ブロッホ球だと複素数の部分が省略されていて分かり難い。



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