表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

abstruse~追放し追放される者達-The Bunishile's-~

Bunishile(追放し追放される者)達は進む。

運命神を名乗る愚者を追放する為に。

「追放し追放される者」から「追放され追放し返す者」へ。

その者達の最後の戦い。

 一角鯨(モノケロス)の中は静まり返っていた。

装甲が焼け焦げたファフニールを前に。

必死にコックピットを叩くリア。反応の無い、ファフニールのコックピット。

すすり泣く声だけがコックピットから聞こえてくる。



「・・・兄さん。」

「しばらく放っておけ、今は目の前の問題を解決するぞ。」



カルド以外を集め、会議室へと行く船員等。

その会議室の窓からは、ゆっくりと落ちていく、外郭に穴が空き、箱舟(ノア)が突き刺さったノルニルが見える。



「見ての通り、ノルニルの落下、そして終焉まで時間は残されていない。」

「・・・何故こんな事になったんだ?リア。」



箱舟の中で起きた事、自分達が見てきた物を全て話す。

その話を聞き、信じる者も居れば、半ば信じられない、という顔の者も居る。



「・・・んでよ、そのアガスとかいうのはどうなったんだ?」

「・・・分からない、兄さんが撃った後、「カプセルを調べろ」って言ったっきり・・・」

「そのカプセルの中身は、皇だ。」

「・・・艦長!?」



モニター通信に強引に回線を繋ぎ、ノルニルに突き刺さった箱舟から映像通信を行う信が、巨大なモニターに映る。

その手に掴んでいたのは皇の亡骸。



「・・・コイツだ。」

「・・・貴方が、皇を・・・?」

「皇は既に死んでいた。冷凍睡眠(コールドスリープ)機能の停止により。」

「・・・まさか、周りのカプセルは・・・」

冷凍睡眠(コールドスリープ)用のカプセルだ、これが本当の「皇」、いや・・・ノルニルに加担した者の狙いだったらしい。」

「・・・貴様、まさか・・・」

「・・・そのまさか、だ。」



軍帽を投げ捨てると同時に、皇の遺体をカプセルへと入れる。

そして、話を始める。



箱舟(ノア)をここに突き刺すまでは予定通りだったらしい。」

「ど、どういう事なんだ!?予定通り、って・・・」

「そのままの意味だろう?わざわざ箱舟(ノア)のパーツを盗ませ、「旧箱舟(ノア)陣営」の今のコイツ等に作らせる。」

「・・・そして、我々の理想であった「箱舟(ノア)を用いてのノルニルへの特攻。そこまで奴等は読みきっていた訳だ。」

「忠司や怜治、そして飛鳥のようなバカにも簡単に分かるように教えてやる。「躍らされていた」。それだけだ。」

「よ、余計わかんねえっての!」



ユウは大きく溜息を吐くと、信へと周囲を映すように要求する。

信は頷き、カメラを周囲へと回す。



「・・・見ての通り、カプセルだらけだ。そして・・・ノルニルの一番上の階層には都市があった。」

「都市?」

「ああ、人間(ヒト)が暮らせるだけの大きさの家、畑、様々な物があった。まるで「箱庭」だ。」

「・・・選民主義どころではないな。」

「・・・選民主義、ではない。理想主義者(イデアリスト)の成れの果てだ。」



再度カメラを自分に向ける。

大きく息を吸うと、話を始める。



「・・・ノアの箱舟(はこぶね)、という話については知っているか?」

「・・・えっと、悪い人ばっかりの地上を作り直そうと神様が大洪水で・・・」

「その通りだ。「選ばれし(ノア)」に「箱舟(はこぶね)」を作るように命じ、ノアは箱舟を作った。そしてその箱舟には彼の家族、そして動物達を乗せ、箱舟で大洪水の間、耐え忍んだ。」

「ノアは最後に神に献上物を与え、「約束」をした。「人を滅ぼすようなことはするな」と。」



ユウの言葉に頷く信。

忠司達は感づいていた。

箱舟(ノア)」と同化したノルニル。

そしてそのノルニルの動向。

冷凍睡眠(コールドスリープ)



「・・・箱舟(ノア)をEEn保存装置とし、更にそのEEnを使って選ばれた(ノア)達を戦争の終了まで海の奥底で冷凍睡眠(コールドスリープ)させる・・・」

「・・・だろうな、そしてそれに背く君達。その君達を止める為に、奴等は番人を用意しているそうだ。「神」と呼ばれる機兵らしい。そうだろう?ディン博士。」

「・・・ディン・・・?ディン・ベルモントか!?」



血相を変え、机を叩いて立ち上がるユウ。

モニター越しに居る実父・ディン・ベルモントを睨みつける。



息子(ユウ)よ、大きくなったな。」

「貴様・・・俺は貴様のような野心家の息子ではない!!国を売り、更には運命神にまで逃げた貴様の・・・」

「・・・ユウ・ベルモント、君の思っている事とは違う。君が設計図を盗み、亡命した後、彼は拘束され、ノルニルに・・・」

「・・・どちらにしろ、この男が野心家であり、国を・・・世界を己の手で変えようとした事に変わりは無いだろう!?」

「ユウ少佐、落ち着いてください!」



忠司に宥められるが、忠司を腕で退ける。



「・・・すまない、ユウ。」

「・・・謝って何になる?それは貴様も知っているはず・・・ぐっ。」

「親子で喧嘩するなら後にして頂戴、ディン・ベルモント、分かる事を全て話しなさい。」



ユウの腹部を殴り、その場に倒すシャイナ。

そのままディンを睨みつけながら、問いかける。



「・・・ノルニルは間も無く皆が"礎"と呼んでいるEEnの発生源「デャウス」へと接触する。」

「・・・デャウス・・・?というか礎は海底に存在する、って聞いたんだけど、どうなんだ?」

「兄さん、覚えてないの・・・?ノルニルは今から「海へ落ちる」のよ?つまり、そのまま落ちれば海の中の礎に・・・」

「でもよ、怜奈、あの状態じゃ水が入ってディン?だっけ?このオッサン。も、艦長さんも全滅じゃねーか?」

「・・・ノルニルはデャウスに共鳴し、「海を割る」。」



説明を続けるディン。

海を割る、というのはそのままの意味であり、EEnを津秋海を裂き、海底をむき出しにし、そこへとノルニルを着地させる。

着地した瞬間に、ノルニルのシステムと、(デャウス)が共鳴し、EEnの過剰放出により天変地異を起こす。

その天変地異であらゆる争いを、今の世界を消し、再度世界を作り直す、そんな計画らしい。



「・・・天変地異・・・ってたってよ、EEnで起こせるのか?」

「・・・それが出来てしまうのが私の作った三機の機兵「ウルズ」「スクルド」「ヴェルザンディ」。」

「そいつ等はどこから現れるんですか!?早いところ破壊しないと・・・」

「・・・それは、無茶だ。「デャウス」の周囲に存在する3本の柱を知っているかね?」

「・・・あれは"礎"ではなかったのか?」



その信の問いかけに対し、頷くディン。



「・・・あの柱こそ「運命機(ノルニル)」の入っている揺りかご。誰が作ったかは知らないが、それに私の作ってしまった、運命機が入っている。」

「じゃあ、ノルニル・・・いや、箱舟(はこぶね)が海を割るまで・・・」

「残念ながら、な・・・」

「ふざけるなよ・・・ディン・ベルモント・・・」



腹を押さえ、立ち上がるユウ。

その表情はとても憎悪に満ちている。



「・・・運命機?貴様は運命神気取りでそれを作ったのか?」

「・・・私は・・・違う。あれを偶像として、作りたかった。動かす予定などなく、ただ、信仰の為に。こうなるとは分かっていなかっ・・・」

「分かっていなかっただと?・・・貴様・・・それでも科学者か!?科学者が作るモノは全ての事態を想定して作れ!」

「ユウ!?どこへ!?」

「・・・俺は機兵に乗る。・・・後は分かるな?」



声を荒げながらドッグへと向かう。

シャイナはそれを止めなかった。

ユウを追い、忠司は走ってついていく。



「・・・息子の言うとおりだ。私は最悪の事態を理解していなかった。」

「・・・対処法は私達にあります。貴方は、ノルニルの中で耐えてください。・・・助ける、という事もありますが、事情聴取の後、刑を決めます。」

「・・・信艦長、その中に何人の兵士が居る?何人の機兵乗りが居る?」

「・・・機兵を動かせるのは大体10人だ。」



ニールの問いかけに対し、そう答える。



「・・・では、いいな?海を裂いた瞬間、一斉にそこの穴からデャウスを囲むんだ。時間を稼いでくれ、頼む。」

「・・・・・・分かった。」

「そしてシャイナ少尉の言うとおり、対処法は我々だ。俺やユウ、忠司。そして皆で運命機を破壊する。勿論「デャウス」諸共だ。」



そう最後に一言付け足しユウ達の行ったドッグへと向かう。

 


「・・・勇敢な若者達だな。」

「・・・誇れる兵士達です。中には一等兵や伍長も居るんですよ?」

「俺とかな。」

「あぁ、俺もだ。」

「・・・不安ではあるが、君達を見ていると、任せられるような気もする・・・さぁ、準備をしよう。」

「了解!」



 全員が準備を始めている間、ドッグでは3人が座っていた。

ユウ・忠司・ニール、3人はコンテナに座り、支給品の水を飲みながら話す。

ニールが決まった作戦を二人に話す。



「・・・本当に、これが最後の戦いですか?」

「ああ、「この世から争いの種であるEEnの発生源を消す」、つまり「EEnを消す」。」

「でも、そうするともっと、もっと争いが起きるんじゃ・・・」

「それは分からない。しかし、運命機に全てを委ねれば、争いどころか、全ての人類が消える。」

「なら・・・さっさと終わらせましょう、世界が平和になるかどうかは分からないけれど、作られた、偽者の神様なんかに殺されるのは嫌だ。」

「全く、その通りだぜ、忠司。」



強引に肩を組む怜治。

一体いつ会議室を出てきたのだろうか。



「・・・怜治さん」

「フン、バカに酒呑火砲を渡したが、なかなかに使いこなせてるな。」

「んだと!?」

「・・・褒めているんだ、言葉を聞き取れ。」



メガネを動かしながらバカにするユウ。

それに対し睨みつけ、歯軋りをする怜治

そして宥めるニール。



「・・・そういやよ。酒呑火砲は無限に撃てるんだよな・・・デャウス付近なら。」

「ああ」



無限にEEnを発生させる"(デャウス)"

その周辺のEEnを吸収すればEEnを使用する兵装は使い放題だ。



「しかし、周囲は恐らく水の壁だ。それに深海、怜治、貴様のブースターを使用した戦法をして使えば・・・」

「ペシャンコ、だろ?分かってるっての。固定砲台に徹する、ユウ少佐さんよ、アンタに任せるぜ。」



肩を叩くと、己の群雲へと乗り込む。

その群雲の目に埋め込まれた光源が、輝く。

つまり起動を行ったようだ。



「・・・気の早いヤツだ。」

「そうでもなさそうだぞ。」



外からは波の音が消え、滝のような音が聞こえ始める。

それと同時にシャイナが此方へと走ってくる。



「皆、準備を!ノルニルが着水!あと数十分でデャウスに・・・」

「了解した、ユウ・宮野、準備を行う。」

「ヴェルニール・ド・アイファンズ、同じく搭乗し準備を行う。」

「俺は・・・ちょっと行くところがあります!」

「忠司一等兵!?」



忠司が駆けていったのは、ファフニール。

未だにカメラアイから光が出ている。

しかしコックピットは閉ざされたまま。



「カルドさん!」

「・・・放っておいてくれ。」

「・・・貴方は・・・貴方が守りたかった物は何なんですか!?」

「・・・友・・・家族・・・それだけだ。守れなかった。一人の友を・・・」

「忠司、退いて。」



リアが忠司を後ろへと退かす。

そして、思いきり蹴りをコックピットへと入れる。



「兄さん!アズラさん・・・だっけ。と約束したでしょ!?「またな」って!きっと、アズラさんも約束は守るだろうし・・・」

「・・・無茶だ、あの状態で・・・アズラが生きてる可能性なんて・・・」

「・・・それに、まだ守るべき人が居るでしょ!ティエちゃんに、明さん、私・・・」

「そう・・・か・・・そうだったな・・・」



コックピットを開け、出てくるカルド。

通りがかったユウを呼び寄せる。



「・・・仮積みでいい、脳波式に今一度、変えてくれ。」

「・・・カルド・・・お前・・・!?」

「頼む、EEnが使えるなら・・・全てが守れるなら・・・」

「・・・フン、好きにしろ、コックピットに入って青いコードと黄色いコードをそれぞれヘルメットの対応したプラグに差せ、それで起動する。」

「とても単純だが、本当なのか・・・?」

「・・・嘘をつく余裕があるか?」



そう一言言い放つと、自分の乗る宗近へと向かう。

カルドは言われたとおり、コードをヘルメットに差す。

そのコックピットの中は青い光に包まれる。

コックピットのハッチを閉めると、カルドはヘルメットを被った。



「・・・じゃあ、俺たちも。」

「そうだな。」

「・・・最後の戦い、っていうのかな?これ。」

「さぁ?俺達が・・・決めるんだ、最後にする、って。」

「・・・だね。」



各自、自分の機体に乗る。

そのまま、気を緩ませず、指示を待ち続ける事数分後・・・



「ノルニル落下!・・・どんどん海が裂けて行きます!」



補佐官の声と共に映し出されるモニター。

巨大な円形のノルニルがその形の通りに海に穴を開けていく。

周囲の海水はノルニルから上空へと柱か壁が立っているかのように、全て、波は弾かれる。

空を見れば、雲さえ同じ形に裂かれている。

そしてノルニルが着地した中央には「巨大な柱」

ノルニルの中央の穴に収まるように、黒く、七色の線が入っている柱。

七色の線はノルニルと接触をすると、輝き出す。



「全機兵!降下させます!準備!」

「いつでもいい、だろう!?」



ニールの問いかけに、モニター越しの全員が頷く。



「全機兵降下!」

「・・・軍鶏、いや、忠司一等兵、勝つぞ、この刀に賭けて。」

「ええ、分かってます。銀輔少佐!この刀で斬り崩す!」

「忠司、気張りすぎて滑るんじゃねーぞ?」

「そういう兄さんこそ、ね」

「いいか!?ティエ!電磁ワイヤーは使うなよ!」

「はいはーい、分かってるよカルド。」

「ニール、戻ったら一杯やるとしよう、勝てばしばらくは会えん。」

「だろうな、ユウ。その為にも勝つぞ。」

「っしゃぁ!やってやるさぁ!」

「ここから狙撃・・・は出来ませんよね。」



各自、約束や、出撃自に気合を入れ、一気に空から「水の失せた海底」へと降下していく。

パラシュートを展開する数機、そのまま落下する機兵も数機。

 大体の機兵はノルニルの上へと着地する。



「全員!"(デャウス)"に一斉放火だ!」



ユウの指示に従い、銃器を持っている者達はデャウスへ向け、一斉放火を行う。

全く効いていないデャウス。それでも撃ち続ける。

そんな時、一機の機兵が飛鳥の乗っていた群雲の胴体を引き裂き、海へと投げ飛ばす。



「飛鳥!?」



怜治は叫ぶ。

既に真っ二つに裂かれてしまったであろう飛鳥に向け。

飛鳥の居た場所には、「赤い機兵」が立っていた。

腕にはリアのシュヴァルツとよく似た兵装、暗器だ。

チェーンソーではなく、それは「剣」。そのまま長剣の刃を生やしたような武装を両手に出していた。

機体自体が生きているかのような動きをとり、手招きをする。



「・・・ふぅん、私とやろうっていうんだ!」



チェーンソーと剣がぶつかり合う。

ガリガリガリ、とチェーンソーが剣を削る音がするが、右手を振るう赤い機体。

すると剣を削ろうとしていた右手が跳ね飛ばされる。



「な、なんていう出力なの・・・」



驚きのあまり、防戦一方へと追い込まれる。

そこに、ティエの機体、リンドヴルムが長剣を手に持ち、後ろから切りかかる。



「あ、ありがと。」

「・・・リアさん死んじゃうとカルドが悲しむから、ね。」



 一方、デャウスの周辺に居た機体は散り散りになっていた。

突然周囲から現れた緑色の機体と青色の機体。

緑色の機体は手から炎を出し、青い機体は盾と斧槍(ハルバード)を持っていた。勿論、EEnの刃が付いている。



「きゃあっ!」

「怜奈!?テメェ!!!」



緑色の機体に蹴り飛ばされる怜奈の群雲

怜奈の群雲を支えると同時に片手で酒呑火砲を放つ怜治の群雲。

反動でブレてはいるが、数発は命中している。

だが、その横に居た機体が爆散させられた。



「今のは!?」

「大河君!?」

「・・・クソ、テメェ!どんなインチキだ!!」



大破したのは薄緑、跡形も無く、灰へと変わっていた。

「インチキ」ではなく、発火させられたのだ。

チャージしていたレールガンに焼夷弾頭を銃口へと数発、一瞬の内に叩き込み、破裂。

そのレールガンに溜め込まれていたEEnが爆発して機兵自体にも伝わり誘爆。

これが一撃必殺のトリックだ。



「だけど、この機体は・・・軽い!」



榴弾砲を撃ち込むと、腕で防ぐ動作はしたが、緑色の機体は後ろへと押し込まれる

機体自体はとても軽いようだった。

 尚、青い機体は、ハルバードを振り回し、迂闊に近づけない状態・・・であったが。



「行くぞ!忠司一等兵!」

「はいっ!」

「俺がヤツの槍を防ぐ!二人は突っ込んで!」



カルドは巨大爪にEEn刃を展開させ、ハルバードの柄を掴む。

正しくは「爪と爪の間に挟みこむ」。



「EEn・・・放射!」



爪からEEnを放射し、爆発を起こす。

ハルバードの柄を折り、膝を付く。



「今だッ!」

「そこッ!」



二方向からの袈裟懸け。

その剣を盾で防ぐ。

防がれた事を確認し、EEn刃を展開した瞬間、盾から衝撃を発生させ、二人を飛ばす。

銀輔の乗っていた正宗の下半身が滝のように落ちてくる水の壁へと入ってしまう。



「銀輔少佐!!」

「・・・脚だけだ、中身は無事だ・・・若造等・・・任せるぞ。」



上半身だけ残った正宗。

それを少し見てから、再度刀を構えなおす群雲。



「カルドさん!俺が一撃入れます!」

「・・・その盾にEEnは効きそうにないだろう!?」

「ならば・・・!」



EEnを刀から消し、実体剣として扱う。

そのまま刀を振り下ろそうとする。

当然青い機体は盾を構える。



「掛かった!」



フェイントからの袈裟懸け。

その一撃は、盾を持っている腕を斬り落とす。

盾を奪い、持ち上げると、その盾で青い機体を殴りつける。



「今です!」

「貫く!!」



片腕の爪を「本来コックピット」に当たる部分へと突き刺し、貫通させる。

そしてもう片腕を反対側から胴体と脚部、同時に貫かせる。



「忠司君!」

「まず一機!!」



爪を引き抜くカルドのファフニール。

機体を蹴り、後退する。

銀輔の使っていた刀を拾い上げ、二本の刀を無防備な頭上から一気に振り下ろす。

真っ二つに裂かれる青い機兵。

そのまま、爆発し、吹き飛ぶ。



「クソ、どういう仕掛けだ!?」



 緑の機兵は攻撃を受けたかと思うと、すぐ横に現れ、炎を纏った拳で殴りかかる。

更には地面から炎を噴出させ、わざと避けさせてからの右ストレートだ。



「読まれすぎだ、貴様ら!」

「んな事言ったって!」

「動きが分からないんです!」



無茶苦茶に撃ち続ける二人の前にユウの宗近が立つ。

その足元には赤い光。



「少佐!足元!!」

「・・・避けたら殴られる・・・ならば!」



炎が噴出す数秒前。

目の前では、白面九剣で頭部を貫く

炎は噴出さず、足元には赤い光が線のように。



「撃て!」

「はい!」

「了解だ!」



両側から銃機関銃と酒呑火砲が襲い掛かる。

緑色の機兵も成す術無く、爆散。

 それとほぼ同時に、リアとティエは赤い機兵相手に死闘を繰り広げていた。



「一気に行くよ!はい!」

「うん!」



ティエのリンドヴルムの長剣を片手しかないシュヴァルツが受け取る。

両サイドから斬り掛かるが、相手の長剣に防がれる。



「消えた!?」



防いだ瞬間に消える。

消えたかと思い、周囲を見回すと、最初のように手招きをしている。



「バカに・・・するなァ!」



飛びかかるが、連続斬りがシュヴァルツに襲い掛かる。

かなりの損傷だ。



「・・・この機体の動き・・・リアさん!もう一回斬りかかって!」

「でも防がれるんじゃ」

「私に考えがあるの」



ティエは口元を笑わせる。

再度、リアが斬りかかると、防がれる。

そして瞬間的に後ろへと下がり手招きをしている。



「やっぱりね!」



両腕からハープーンガンを撃ち出し、真っ直ぐに赤い機体を貫き、突き飛ばす。

突き飛ばされた赤い機体は滝のような水の壁へと入り、グシャグシャにつぶれてしまう。

その機体の塊から繋がれたワイヤーをリアのシュヴァルツが叩き斬る。



「・・・よし!」

「うん!」

「そっちも終わったか、じゃあデャウスの破壊を・・・」

「そうは行かないな。」

「貴様・・・まさか・・・」



全員のモニターに強制通信を行っていたのは「ディン・ベルモント」

ユウは唇を噛みながら一気にデャウスへと斬りかかる。

が、デャウスから光が発され、地面へと倒れる。

周囲に居た機兵全てがその場で倒れる。



「・・・悪いが、運命は私が決める。戦いの無い世界の為に、だ。」

「・・・私利私欲の為に・・・EEnを・・・使う、というのか・・・!?」

「・・・私利私欲?・・・否。箱舟による世界の再生だ。このデャウスを使い、海を荒れさせ、全てを一度海に戻す。」

「・・・全てを海に・・・?」



頷くディン。

その表情は野心家そのものだった。



「・・・貴様は・・・どこに・・・居る・・・」

「デャウスの中だ。」

「・・・デャウスを・・・破壊すれば・・・」

「・・・さぁ出来るか?立ち上がることすら出来ない君達に・・・このデャウスと箱舟の破壊、それは・・・」

「可能だ。」



黒かったファフニールが、真っ白に輝き、立ち上がる。

両腕の爪を落とし、真下に落ちていたリンドヴルムの長剣を拾い上げる。

背部のEEn保存装置からは過剰供給されたEEnが放出されている。



「・・・な、何故・・・立ち上がれる?」

「・・・ファフニール自体がEEn変換装置として作られていてだな。・・・大気中のEEnを吸収し、自身のエネルギーへと変える。」

「・・・そうだね、カルド。」



ゆっくりと立ち上がるリンドヴルム。

リンドヴルムも剣を拾い上げる。



「・・・旧箱舟(ノア)陣営の機兵には大体、EEnに結びつく何かが装備されている。」

「なっ!」



赤く輝く刀身の長剣。

その長剣をデャウスの中央へと突き刺す。

光が薄れていくデャウス。



「・・・EEnを放出して、みんなを縛っても、私達だけは無駄。」

「や、やめろ!・・・EEnが消えれば・・・不自由・不快・無駄な争いが続くぞ!?それでも・・・君達はいいというのか!?」

「誰が・・・不自由だ・・・」



立ち上がるユウの宗近。

装甲が剥げていく。

そして片手でリンドヴルムが突き刺そうとしていた長剣を奪い取ると、カルドとティエへと語りかける。



「・・・お前等・・・生存者を一角鯨(モノケロス)へと運べ。」

「ユ、ユウ・・・まさか。」

「バカ言うな。親の不祥事は・・・俺が・・・負う。」



装甲が全て剥げ「零」が見えた状態の宗近、それはもはや宗近ではなく、「零」。

まず白面九剣の九本の剣全てをデャウスへと突き刺す。

腕に装着されていた白面九剣をそのまま落とす。



「・・・運び終わったようだな。」



周囲を見ると、機兵は無く、ユウの「零」とデャウスの1VS1だ。

ユウは零の掌でデャウスへと触れる。



「・・・運命神にはなれない。」

「・・・ユウ・・・」

人間(ヒト)人間(ヒト)として生きるしか道は無い。神に成り代わろうなど・・・笑止!」



長剣を突き刺し、デャウスにEEnを逆流させる。



「・・・そして神気取りの人間が、自分より劣った人間を「追放」する事など、絶対に・・・赦されないことだ。」

「あ、あぁ・・・私の・・・野望が・・・体が・・・」

「・・・そして偽の神に「追放された」者が、その神を「追放」しようと、反旗を翻す。それもあってはならない。」

「そんな事より・・・ユウ・・・今ならまだ・・・動く・・・どうだ?私と共に・・・」

「ふざけるな。」



耳を傾けぬディンの言葉。

それに対し一言と行動で返す。

長剣を蹴り、深く突き刺し、恐らく中に居るであろうディンの胴体を貫く。

モニターに映るディンは吐血しながら、薄れていくEEnの光を浴びていた。



「・・・悪いが、俺は生きる。貴様の愚かさを伝えながらな。「最期まで神に成り代わろうとした男の正体」。それが貴様だったという事。」

「・・・争いは・・・消え・・・ない・・・」

「そうだろうな。」

「・・・EEnは巨大な争いを生む・・・だけだ・・・根本的には・・・消せ・・・ない。」

「・・・人間は、一歩、一歩、踏み出す。神の手など借りずに、だ。」



剣を引き抜くと、再度、突き刺す。

今度こそ、デャウスも、ディンも停止したようで、EEnの反応が消えていく。



「・・・終わりだ。」

「ユウ少佐、早く戻らないと・・・」

「・・・・・・親のケジメは俺が・・・」

「何を言ってるんですか!」

「貴様!?」



ユウの零を抱え、走る忠司の群雲。



「・・・ケジメっていうのは死ぬ事じゃなくて、生きて償う事じゃないんですか?それに正体を伝えるのも・・・」

「・・・・・・フン・・・運べ。」

「・・・はい!」



一角鯨(モノケロス)へとユウの零を運ぶ群雲

運び終わると、すぐに一角鯨(モノケロス)は飛び立つ。

 その窓からは、海が段々と元に戻る様子が見られる。

 再度波を打ち始め、ノルニルが落下した穴など、無かったように。

 世界で戦っていた機兵達も、段々と機能が止まり、最終的には、全て動かなくなった。

 一角鯨(モノケロス)は飛び続け、中央へと戻る。

 一つの破滅と野望を打ち砕いた英雄達を称える式典。

 そして、軍の解体。

 全ての国へ「(デャウス)」の消失を通信で告げ、停戦を伝える。

こうして、また新日本は「昔のように」、戦争を行わない国として動き始めた。

小さな争いは無くならないが、機兵同士での争いと、礎を求めた戦争をしていた頃に比べれば、「無い」に等しくなった。





 この戦いに終止符が打たれてから、10年が経った。




 新日本、元中央基地

忠司は工場となった中央基地で、働いていた。

同僚には怜治と銀輔、そして怜奈。

銀輔は本来定年だが、体が「半機械(サイボーグ)」という事で働いていた。



「本来なら、忠司は何階級上がったんだろうな。」

「さぁ?平和ならいいじゃん、怜治さん。」

「まぁ、始まりと同じだね、3人で働いて、上司に銀輔少さ・・・じゃなくて、銀輔工場長。」

「貴様ら!喋ってないで手を動かせ!」

「「「はい!!」」」



鬼教官っぷりは健在であった。

EEnの無い今、この工場では電気で動く家電を作っていた。

それを提案したのが「鬼工場長銀輔」だ。

「昔存在した三種の神器」とも呼ばれた家電を作っている。



「しかしよ、平和になったはいいが、まだまだ、都市は少ないよな。」

「それはどんどん増えてくと思うよ。」

「10年、いや、もっとかな。だけど、きっと増えるよね。」



 

 ドイツ軍基地、研究室。

そこではユウとシャイナが研究をしていた。

此方では家電ではなく、科学的な方面だ。



「・・・しかし、信じられんな。」

「何がよ。」

「・・・この俺が50の・・・ぐっ!殴るな!」



思い切り殴るシャイナ。

ユウとシャイナは戦争後、結婚をした。

夫婦揃って軍の研究者だ。

「軍」という名前が残っているだけであり、行っていることは「大戦」によって失われた自然を取り戻す技術の研究だ。



「・・・しかし、ユウも30越えかー」

「・・・煩いな・・・気が散るだろ。」

「・・・昔に比べて丸くなったわね。」

「・・・アンタの場合体系・・・俺が悪かったから足を踏むな。」



溜息を吐くシャイナ。

窓をずっと見つめていた。



「ユウの性格が良くなったのは、そういえば、忠司一等・・・じゃなくて、チュウジ・イシダのお陰よね。」

「・・・・・・あぁ、そういえばそうだったな。・・・バカだが、いい「友達」、だ。」

「・・・ふふっ・・・」

「何がおかしい!?」

「・・・何でも。」




 ドイツ、住宅

カルドとリアが昼食を取っていた。

大戦後、二人はまた昔のように暮らしていた。



「・・・ふぅ。」

「どうしたの?兄さん。」

「いや、何というか、普通だな、って。ははは。」

「・・・普通?」

「・・・なんていうか、俺たちはずっと戦ってた。あの後も「暴徒鎮圧」やら何やらでちょっとだけ戦ってたし。」



EEnを崇拝する宗教団体を潰したりと最初の数年に少しだけ、軍としての活動があった。

勿論銃撃戦やそこらだ。機兵はもう使えないから。



「でさ、普通って良いよな。」

「うんうん。」

「・・・それだけだ。」

「えぇー・・・それだけ?オチはー?」



 

 イギリス、キャンプ。

ヴェルニールは、未だ軍の教官として、キャンプを開いていた。

そのキャンプにはティエが参加している。

というか半強制参加であった。身寄りが無い為、ニールの養子として迎え入れられた。



「動きが鈍いぞ!お前達!」

「おとーさん」

「ここではニール教官だ!」

「教官!だるい・・・」

「この程度で音を上げるな!英雄だろう!?」

「はーい」



気の抜ける返事で答えながらも、身体を動かし続ける。

他の数人も同じように動いているが、かなり激しいらしく、全員疲れている。



「もういいぞ。」



その一言で全員が崩れ落ちる。



「・・・おとーさん・・・」

「教官と呼べと・・・まぁいい。何だ?」

「・・・カルド、何してるかなぁ。」

「今は軍を退役してリアと暮らし・・・」

「ちょっ、何でそんな大事な事を教えてくれなかったの!?」



胸倉を掴み、表情を変え、立ち上がる。

先ほどまで疲れていたとは思えない動きだ。



「行くよ!ドイツ!」

「ちょちょっと待て!そんな事は出来ないぞ!?仮にも教官だからな!?」

「じゃあ私だけでも!」

「それは心配だ!」






  突発した技術が無くとも皆、元通りの生活、いや、元より「安らか」な暮らしを送り続ける。

 神に追放(Bunish)され、追放者(Exile)、否。"Bunishile"、"運命に追放され、運命を追放する者"として運命と戦った者達も。

 だが、彼等はBunishileではなくなっても、戦い続ける。



 自分達の進む道に"永遠の平和"を作り出す為に。

 "追放無き世界"の為に。


初作をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

「戦により荒廃した世界観」と「戦うロボット」が真っ先に浮かび、書きたく書いた作品でしたが、如何でしたか?

設定がぶっ飛びすぎていたりEEn万能すぎるだろ、という描写が多いのは自覚があります。

拘りすぎた結果です・・・次回から猛反省して書きます。

どの辺拘ったか、と言いますとズバリ

「「飛ばないロボット」もとい「飛べないロボット」が地上で大暴れ。」

これです。

近日のロボットはブンブン飛んでたり宇宙空間だったりな感じなイメージが私の中では強く、ふと思っちゃったのです。

「あれれ?地上だけで戦闘したらどうなるんだ?」と。

結果、書きたくなり、筆もといキーボードが動きまくりました。

が、空中戦闘描写がちょっとだけ入っちゃったり、移動では飛んじゃったり、「完全地上戦闘」は達成できませんでした。

うーむ、難しいですね。 

そうそう、余談となりますが、実は「飛ぶ予定」もあったりしました。

毎回サブタイトルに付く「Depth」、Depthとは深さを意味します、つまり・・・

「高さを意味する単語でサブタイトルを付けて飛ばそう!」なんて考えてた時期もありました!

結局「どう飛ばそうか」や「飛ぶとしたらどう戦うの?」やら問題点が出て来てお蔵入りになってしまいました。

機会があったら、ちょっと興味があるので書いてみたいですね。


長々と後書きをすみません。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ