第6節:最終結果発表ならびに資格試験閉会式
第3次最終面接から3日後の朝。 地下の無機質なコンクリート講堂には、厳しい面接を終えて運命の結果を待つ32名の学生たちが、一糸乱れぬ姿勢でパイプ椅子に着席していた。
ステージ上にはマカベ校長、ヤマタニ教頭、そしてサイジョウ総試験監督をはじめとする日本管轄人事室の最高幹部陣が居並んでいる。
そして再び講堂のの右端には、クロサキ、イオウダニ、ガンドウ、キトウなどといった鬼教官陣が再び学生たちに目を光らせて見張っていた。
「――これより、『IALRT資格試験 最終合否発表ならびに閉会式』を執り行う」
ヤマタニ教頭の冷徹な司会進行とともに、幹部の手によって裏返しにされた大型ホワイトボードがステージ中央へと引き出された。 「発表する」という声とともに、ボードがクルリと回転する。
――合格者の学生番号が、そこに並んでいた。
歓喜の声や感涙は即座に「失格・退学処分」となる絶対ルールの下、講堂には氷のような緊張感が張り詰める。番号を見つけた学生たちも、血が出るほど下唇を噛み締め、一切の感情を表に出さずにただ静かに掲示を見つめていた。
シムラは静かに視線を走らせ、自身の番号を確認した。 ――「42番」。 そこには確かに、シムラの番号が刻まれていた。北アルプスの山中で父親を救ってくれたあの背中に憧れ、山岳・ロボ研・陸上で「知・体・技」を研鑽し、地獄の3年間を耐え抜いた日々。ついに、念願であった国際総合新鋭救命救助部隊(IALRT / アイアラート)の正規資格を手にする道が拓けたのだ。
32名が挑んだ最終結果――掲示された合格者の数は、ちょうど【30名】であった。 番号のなかった2名の学生たちは、歓声も涙も許されぬまま、静かにパイプ椅子を引き、二度と戻ることのない養成学校の門戸へと消えていった。
「――一同、着席!」
ヤマタニ教頭の号令に応じ、残された30名が一気の狂いもなく一発で完全に同期して着席した。続いて、総試験監督であるサイジョウが演説台へと登壇した。
「……30名。よくぞこの地獄の淘汰を越え、IALRTの正規資格を掴み取った。お前たちのデータは只今をもって、スイス・ジュネーブの国際統括本部データベースへ正式登録された。……見事だ」
サイジョウは初めてわずかに目を細めたが、直後にその瞳へ冷酷な殺気を宿させた。
「……だが、決して気を緩めるな。お前たちには卒業まで、まだ【4ヶ月】の期間が残されている。明日から始まる最終調整訓練において、わずかでも不確定要素や緩みを見せた者は、その場で資格剥奪および即時退校処分とする。心してかかれ」
続いて演説台に立ったマカベ校長が、低く重厚な声で全学生を射抜いた。
「サイジョウ総試験監督の言う通りだ。資格を得たからといってプロになれたわけではない。配属後の一瞬の油断は、そのまま現場での致命的な生命事故と患者の死に直結する。残る4ヶ月、一人として気を緩めることは許さん。……以上をもって、第〇期生 IALRT資格試験を終了する!」
「全員、起立! 敬礼!」
クロサキ教官の号令のもと、30名は完璧に同調した動作で一斉に起立し、被帽のまま一糸乱れぬ美麗な敬礼と深々とした一礼を捧げた。脱帽と着帽の所作も、もはや呼吸のように無駄なく完了する。
「解散! 第A班より順に退場!」
号令とともに、シムラを先頭とした第A班の列が完璧な足取りで行進を開始した。 静かな誇りと、残り4ヶ月に向けた研ぎ澄まされた覚悟を胸に抱き、彼らは堂々とした背中で地下講堂を後にしていった。




