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枕が変わると眠れない。
なんて言うけどそれ絶対ガセだと思う。
目が覚めた瞬間、状況を把握していながらそう冷静に考えてしまう自分に腹が立つ。
怒りにまかせて跳ね起きた。ベッドの上であることを忘れていたから予想以上に揺れたが、気にしない。それよりも時間がやばかった。
だいたい、引っ越し翌日にいきなり登校、というのがおかしいのだ。
無理だし。片づけすら終わってないし。
心の中で愚痴りながら、やはり新調したパジャマを脱ぎ捨て、制服に袖を通した。慣れていないから、途中途中で引っかかる。
………イライラする。
同じくいびきをかいて眠っていた妹をたたき起し、階下に降りた。
朝ごはん?そんなの食べる時間なんてない…
私の新しい町、新しい世界での新しい朝は、びっくりするほどあわただしく始まった。
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「群馬県から来ました、山本佳奈です。今まで田舎にいたもので、都会の空気に戸惑っていますが、仲良くしてくださると、ありがたいです」
そして背後。
黒板にはやたらとひょろひょろとした字で、私の名前が書かれている。
最悪な状況―――つまり遅刻は回避できた。………が。
なぜか、空気はびっくりするほど硬かった。これが都会の学校?ちょっとやかも……
「………」
にこにこしながら、私は首をかしげた。
あの……自己紹介終わったんですけど?
体つきもやたらとひょろひょろとした担任を仰ぐと、「あ……」と言って、担任はおどおどと周りを見渡し、
「じゃ、じゃあ……山本さんはあ、あの一番後ろの……相川さんの隣へ…」
「あ………はい。」
声もひょろひょろとしていた。
とことこと歩いて、指示された通り、一番後ろの席へと向かった。
相川さん、
彼女か。
………………よし。




