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金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第8章 泥濘の澱

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第8章 第3節 闇路の獣(第1項)

(そら)(たか)くに()びた(せき)(らん)(うん)(ひろ)がって、

(ひる)(たい)(よう)(さえぎ)ると、(しゅう)()(うす)(ぐら)くなった。



(ひろ)()には(どう)()()きた()(ども)(たち)が、

山羊(やぎ)(ぼう)(こう)(ふく)らませて(つく)った(たま)

()いかけている。



挿絵(By みてみん)



(あか)(ひも)(しば)られた(いびつ)(きゅう)(たい)は、

()られて()(めん)()ちると(だん)(りょく)()ね、

()(そく)()()(のう)(ほう)(こう)へと(ころ)がる。



(いち)()では(しな)(もの)()()った(みせ)

(つち)(ほね)()みの(かい)(たい)(はじ)め、

(ひろ)()(かわ)いた(おと)(なみ)(はん)(ぷく)する。



わたし(たち)(けい)(しょく)()(たい)()ったものを、

(ちか)くの(なが)()()(すわ)って()べ、

(しず)かに(かた)()けを(なが)めた。



(かた)めのパンに(けず)ったチーズを()せて、

(あぶ)った(うす)()りの(くん)(せい)(ほお)()る。



チーズの(した)()いた(こう)(そう)()むと、

(きょう)(れつ)(にお)いが()(くう)()き、

(した)()(げき)する(あじ)(なみだ)(にじ)む。



ウントが(いた)がり、(さわ)いでいる。



(かれ)(たお)れた(とき)(した)()み、

(あご)()()いたらしい。



ウントの(こう)(どう)には(もん)(だい)はあったけれど、

その(てい)()のケガで()んで()かった。



(いち)()(にぎ)わいが(おさ)まりつつある(なか)

(がい)(しょう)(たち)(おど)り、(えん)(そう)をして(うたげ)(ひら)く。



(ちか)くには(ちゅう)(ろう)()(まん)(おとこ)()る。



()(ぞく)(びょう)()ばれる()(まん)(たい)



(かれ)(やと)われた(しょう)()(ふと)(ぼう)(にぎ)り、

(かわ)()った(たい)()(また)(はさ)んで()ち、

(だん)(しょう)(ふえ)(くわ)えて(えん)(そう)をする。



この(まち)ではよく()かける(こう)(けい)



『ハーフガンは(ゆめ)()る。

 (さか)(だる)()いて(たから)(ゆめ)


 ハーフガンは()(ぱら)い。

 (うみ)でもないのにふーらふら。』



()(おぼ)えのある()(しょう)に、

(だま)っていたムネモスが(くち)(ひら)いた。



「あれ…(しょう)(ぐん)(うた)、でしょうか?」



()(ぱら)いの(うた)だろ。」と、トリン。



(たい)(りく)(ほっ)(ぽう)のソーンと(たたか)った(しょう)(ぐん)が、

 この(まち)では()(ぱら)いの(あつか)いで

 (しゅ)(えん)(うた)われてるのよ。」



「それは、なぜでしょうか?」



「なぜかしらね。」わたしも(くび)(ひね)る。



この()(だれ)()からないことに、

()ったつもりの()(しゃ)になる()もないので、

ムネモスの(しつ)(もん)()(もん)(かえ)すしかなかった。



二人(ふたり)(とも)、まだ()たいものはある?」



トリンは(だま)って(くび)(よこ)()る。



()(あか)くしているムネモスが(つぶや)いた。



(うま)が…。」



(かの)(じょ)のパンを()()がずっと()まっている。



(うま)? (ひろ)()(うま)(はい)れないわよ。」



()時計(どけい)(とう)(みなみ)(ひろ)()

(いち)()として(かい)(ほう)されていても、

(はし)には(てつ)(くい)()()ているので

()(しゃ)(とお)()けはできない。



(ひろ)()には(しな)(もの)(たか)()()げた驢馬(ろば)()()

()(ぐるま)(はこ)(にく)(たい)(ろう)(どう)(しゃ)姿(すがた)(おお)()かける。



「ねぇ、なにあれ? ()(もの)?」



トリンは(はじ)めて()(どう)(ぶつ)(しず)かに(おのの)いた。



「…あぁ、(らく)()ね。」



(ひろ)()には使()(よう)(にん)()れられた(らく)()が、

(ぐん)(しゅう)(かこ)われている。



挿絵(By みてみん)



(きん)(たい)(もう)(おお)われ、()(なか)(ふた)つの(こぶ)がある。



(なが)(まつ)()()(らく)()(かお)は、

(ほん)(えが)かれていた()(じょう)(うつく)しい。



(あか)(がお)のあの()(まん)(おとこ)が、

(がい)(しょう)()れて()(まん)する。



挿絵(By みてみん)



()(まん)(おとこ)(しょ)(ゆう)(ぶつ)らしい。



「あれが(らく)()?」トリンがわたしを(うたが)う。



(たい)(りく)()()るトリンでも、

(たい)(りく)(どう)(ぶつ)()()(かい)

(いち)()()(がい)ではわたしも()らない。



(たい)(りく)(どう)(ぶつ)で、(うま)(だい)(よう)(ひん)ね。


 (ほっ)(ぽう)ソーンと、(ちゅう)(おう)のラギリの

 あいだにある(こう)(えき)()の、

 ()(ばく)()()える(ため)使()(えき)(じゅう)


 ()()()わせる()(じゅう)ね。


 (らく)()(ぐう)(てい)だから、

 (うま)よりも(うし)(ちか)いのかしら。」



(みぎ)()(ちゅう)()(かん)()(ひら)いて

(ぐう)(てい)真似(まね)()せると、

ムネモスも(おな)()(かたち)(つく)る。



「なにも()べずに(つき)(ひと)(まわ)りしても、

 ()(なか)(こぶ)()めた(あぶら)()きられるの。


 (せい)(ぶつ)(がく)(たな)にある

 (たい)(りく)(どう)(ぶつ)(ほん)()かれてるから、

 (せい)(たい)()れて(たの)しいわよ。」



「あの()(まん)(おとこ)も、

 (ぜっ)(しょく)させたら()きられるのか?」



()(ぞく)(びょう)(おとこ)(あご)(しめ)す。



(かれ)(はな)(した)(ひげ)()やし、

(あたま)には(こん)(じき)()(はつ)(かぶ)せていた。



わたしは(おとこ)とグルグスを()(くら)べる。



()たような(きょ)(たい)()つグルグスは、

もう(ひと)つのパンを()べながら、

わたしを()(くび)(よこ)()った。



わたしはまだなにも()っていない。



グルグスの身体(からだ)

(やり)(とお)さないような(かた)(あつ)(きん)(にく)で、

()()(たる)んだ(おとこ)(くら)べるまでもない。



(どう)(ぶつ)(にん)(げん)()きるのに(ひつ)(よう)なのは、

 (あぶら)()(がい)にも(みず)(しお)(たい)(せつ)よね。」



グルグスの()っていた(みず)(ぶくろ)()にして

ムネモスに()けた。



(かの)(じょ)もまた(くび)(よこ)()った。



「ムネモスはあいつ、

 (らく)()()たことある?」



トリンが(たず)ねた。



「…はい。(らく)()

 エルテルにもたまに(はい)りますが、

 (ひつじ)ほど()()れません。


 それに(あき)といえば(うま)です。」



「なんで?」



(うま)(しょ)(ゆう)するひとは、

 ()(さん)(しゅう)()()()できます。


 ()(そう)(せん)(そう)だけではなく、(じょう)()(うま)(たび)

 (ほう)(じょう)(いわ)い、(しゅう)(かく)(さい)()()には、

 (せん)(しょく)した(ぬの)(つな)(うま)にお(めか)しをします。


 (たてがみ)(ととの)えて、()(れい)()みもします。


 (いえ)ごとに(ちが)いがあって(そう)(かん)ですよ。」



ムネモスは()(きょう)(おも)()し、

(そら)(わら)いを()かべる。



(ちか)くの(がい)(しょう)(たち)(みどり)(うえ)(じゅう)(たん)(ひろ)げ、

(おど)りや(えん)(そう)(やす)んでいるあいだ、

わたし(たち)(かい)()(みみ)(かたむ)けていた。



こうしてフランジだけで

(こう)(どう)している姿(すがた)を、(もの)(めずら)しく()る。



()(ども)(たち)(どう)()()ばした(あわ)(だま)を、

(どう)(ぶつ)のように()って(はしゃ)いでいる。



(ゆう)(こく)(はい)ったことを()らせる(かね)()る。



(てん)(ぼう)(だい)から()(こく)(いろ)(おび)()けた

ロープを()ろす(かね)()きの(かげ)()えた。



「あいつは(うま)()わりにならないのか?」



トリンは()(ちょう)(ほこ)(らく)()()()した。



()(ばつ)なものを()にして(ほこ)っても、

 ()(にん)(うま)とは(くら)べられません…。」



「ひとと(うま)には()(べつ)があるわね。


 どんなに(ちから)()ちのグゥグスでも、

 (うま)みたいには(はたら)けないものね。


 グゥグス、ウント。」



わたしは(きょ)(たい)のグルグスと

()(がら)なウントを()んで()たせた。



二人(ふたり)(なら)ばせると、

その(ちが)いは(めい)(はく)になる。



アルもイオスも()ないので、

二人(ふたり)には2(ひき)()わりになってもらった。



(しま)(にん)(げん)(たい)(りく)(じん)

 (すう)()(かい)(ふだ)(どう)()のように、

 (おな)(たち)()でこそ(こう)()として(ひょう)()される。」



(らく)()をお(めか)しをしても、

 (うま)にはなりませんものね。」



(らく)()(うま)(ふく)()せたわけだ。」



わたしが()けた(ことわざ)を、

トリンが()って()(かい)したので

(くび)(たて)()った。



「なに()てんだよ。」



グルグスに(たか)()(ども)

(となり)()っているウントが()(かく)する。



ウントに(おど)された(てい)()()(ども)()かず、

()()いた(あご)()(あわ)れみを()かべた。



(うま)(ふく)とはなんですか?」



ムネモスの()(もん)に、

(がい)(しょう)(たち)(くち)(ぐち)になにか()(はじ)めたので、

わたしがまとめて(せつ)(めい)した。



「『(はなし)(おう)(ふく)()せる』って(ことわざ)


 『()()(おう)()(つく)った』

 って(こと)()があるわよね。


 カヴァの()(ぞく)(じゅう)(みん)(あつ)めるのに、

 (のう)(さく)(てき)した(ひがし)(あたた)かい()()ではなく、

 西(にし)(さむ)(こう)()(こっ)()(きず)いたことで、

 こんな(こと)()(あざけ)られたの。


 そこから(へん)()した(ことわざ)でしょうね。」



()らない。」



()ったはずのトリンは(くび)(よこ)()る。



(なん)()にも()(いき)によって、

 ()使(つか)(かた)があってね。


 (かん)(けつ)(せつ)(めい)すると、

 『(おう)(つぎ)のように(おっしゃ)った。』と(つた)えて、

 その(こと)()(したが)うひとが()たとしても、

 あなたは(おう)ではない、という(おし)えね。


 わたしが(おう)(せん)(しょう)したところで、

 わたし()(しん)(えら)くはないもの。


 (ふく)(しゃべ)(かた)真似(まね)をしても、

 そのひとにはなれないって()()


 二人(ふたり)()った(とお)り、

 (らく)()(うま)(そう)()(かざ)っても、

 (うま)にはならないわね。」



「ふぅん…。」(うなず)くトリン。



(みみ)(かたむ)けていた(がい)(しょう)(たち)

(うなず)いてくれた。



(とう)()でしたら(みなみ)のオーブには、

 『ソーマも(ひつじ)(かわ)(かぶ)る。』

 という(ことわざ)がありますね。」



ムネモスは()(いき)(ことわざ)(たの)しみ、

(かの)(じょ)()(しき)にある()(こと)()()つけた。



「いつまで(べん)(きょう)(かい)やってんだよぉ。」



パンを()()えて退(たい)(くつ)していたウントは、

()(えい)()(ごと)(わす)れて()(まん)(くち)にする。



「ウントは()()()ってるかしら?


 『ソーマも(ひつじ)(かわ)(かぶ)る。』って。」



「は? そいつは(さむ)がりなんだろ?」



そんなウントの(かい)(しゃく)に、

(がい)(しょう)(たち)から(わら)われる。



(たい)()(せい)(だい)(たた)かれて、

(たか)(ふえ)()()らされた。



(にん)(げん)()(あふ)れる()(かい)(とう)ね。」



(しゅう)()するウントは(さや)のまま(けん)(そら)(かか)げ、

(みどり)(うえ)(けん)(ぶつ)していた(がい)(しょう)()(はら)った。



()(のこ)された(らく)()()(ちょう)(おとこ)



それから、

(どう)()()()(ちが)われるグルグスと(あそ)びたがる

(きん)(じょ)()(ども)(たち)(のこ)った。



ようやくパンを()()えた

ムネモスの()()いて、

わたしは(かの)(じょ)()()がらせた。



(ある)(つか)れて(あめ)()りそうだから、

 ムネモスお(じょう)(さま)のご(よう)(ぼう)(こた)えて、

 (ちゅう)(けい)(じょ)()って(かえ)りましょうか。


 お(かね)もまだあるものね。」



(ちゅう)(けい)(じょ)?」



「んだ。」



トリンの()(もん)に、

グルグスが(した)()てから()(めん)()()した。



それは(ひろ)()(ゆか)(いし)(きざ)まれた、

西(にし)()(うま)(あたま)のレリーフだった。




 ◆




(ちょう)(きょ)()()(そう)(おこな)(うま)(やす)ませ、

(こう)(たい)させる()(しょ)(ちゅう)(けい)(じょ)という。



()(だい)には(えき)とも()ばれていた。



(ほく)(たん)(どう)(くつ)(こう)から(なん)()のオーブまでには、

メルセ(りょう)とエルテル(りょう)(しゅ)(よう)()()(つな)

(かい)(どう)沿()いに、(ちゅう)(けい)(じょ)(おお)()かれている。



(ひがし)のエルテル(りょう)西(にし)のカヴァとの(こう)(りゅう)

ほとんど()く、(ちゅう)(かん)()()する

(ぶん)(すい)(がい)(ちゅう)(けい)(じょ)(じゅ)(よう)(すく)ない。



それが(げん)(いん)で、

この(まち)(ちゅう)(けい)(じょ)(しゅう)(たん)(えき)とも(さげす)まれ、

(あつか)いが()いとは()えない。



(しゅう)(たん)(えき)(うま)(たい)()させるよりも、

(けい)()(じょう)(はし)らせた(ほう)(かせ)げる、

という()(せき)(にん)()(じゅつ)()かけた。



()時計(どけい)(とう)から(きた)にある(ぶん)()(てん)

エルテル(りょう)とカヴァを(ちょく)(つう)する(かい)(どう)(ちか)くの

(ちゅう)(けい)(じょ)()()す。



わたし(たち)西(にし)(はし)(わた)って、

(かわ)(なが)れに沿()って(きた)へと(ある)く。



このあたりは(みどり)(すく)なく、

(ちゅう)(りゅう)(かい)(きゅう)(しゅう)(ごう)(じゅう)(たく)になっていて、

(へい)のない4(かい)()ての(たか)(たて)(もの)(おお)い。



(しゅう)()(みち)には()(かげ)(おお)く、

(こう)()(ちか)いこともあってか、

湿(しめ)った(かぜ)(たて)(もの)()たって(はげ)しく()く。



「いまにも()りそうね。」



トリンの(つぶや)きにムネモスが()(ばし)りして(かが)む。



「あっ、ここにもありました。


 みなさん、(はや)()きましょう。」



(ほく)西(せい)(ほう)(がく)()いた

(うま)のレリーフを()つけ()し、

ムネモスは(はしゃ)いでわたし(たち)(まえ)(はし)った。



()って! ムネモスッ。」



(かの)(じょ)()()(はい)ってしまった。



トリン、ウントが(さき)(はし)って(かの)(じょ)()い、

わたしより(うし)ろのグルグスは(おく)れていた。



「グゥグス! (はや)()てっ。」



(おく)れるグルグスを()()いた(とき)

(かれ)(くち)から(あか)(あわ)()いて()ばした。



(あつ)(むね)()るした(みず)(ぶくろ)(やぶ)れ、

身体(からだ)(つらぬ)いた()(さき)(ひかり)って()える。



(よご)れて(こく)(へん)している(ゆか)(いし)が、

(あか)(みず)()れていく。



(あたま)(なか)(はい)(いろ)(もや)(ただよ)い、

(じょう)(きょう)をすぐには()()れられない。



「ムネモスッ!」(こん)()はトリンが(さけ)んだ。



(ひざまず)き、(たお)れるグルグスから(かお)(そむ)けると、

(せん)(とう)にいたムネモスは(おとこ)(つか)まり、

(くち)(ぬの)(ふさ)がれていた。



ムネモスの(のど)(もと)(たん)(けん)()せつけられて、

(べつ)(おとこ)(たち)()()()()せ、

わたし(たち)()(かこ)む。



「グーグスになにしてんだ!

 ()(きょう)だぞ! てめえらぁ!」



(いか)りに()くウントが、

(さや)から(けん)()いてしまう。



()ちなさいっ! ウントッ!」



フランジでしかないわたしの(めい)(れい)は、

()()(むな)しく(ひび)く。



()(えい)一人(ひとり)(ふく)(すう)(おとこ)(あい)()(けん)()いても、

(かず)()(てん)(かな)わない。



(ゆう)(かん)()(ぼう)(ちが)いを、(かれ)()(かい)していない。



グルグスを()した()(ひげ)(おとこ)()かって、

ウントは(けん)(おお)()りして

(くう)()(おと)()らした。



ルービィから()(えい)(みと)められても、

()(あさ)(かれ)(けん)(さき)(ふく)さえ(かす)めない。



(たい)する(ひげ)(おとこ)(ふと)(うで)(よこ)()る。



ウントの(あたま)を、(ゆか)(いし)()()とした。



(いっ)(しゅん)()()(ごと)だった。



()(えい)(おとり)にして(はし)って()()すことも、

ムネモスが(つか)まった(じょう)(たい)では、

わたしには(せん)(たく)できなかった。



「これで二人(ふたり)だぜぇ。」



ウントを()った(ひげ)(おとこ)(いき)()き、(つぶや)く。



「これまでの(ばい)(しょう)(きん)(ぶん)

 (きょう)(いく)してやんねえとなぁ。」



どこかの(まど)から(だれ)かが()ていたのか、

(おんな)(かん)(だか)(さけ)(ごえ)がする。



わたしの(しん)(おん)(たか)()る。



「トリン…。トリンッ!」



わたしはトリンの()()って身体(からだ)()せる。



「なに、こいつら。」



(じょう)(きょう)()()めず、(こん)(らん)しているトリン。



(だま)って。()()いて。」



「おいっ! ムネモスを(はな)せっ!」



ムネモスを(こう)(そく)する(おとこ)()かって、

(かん)(じょう)()かせるトリンが(さけ)んだ。



わたし(たち)(かれ)らに(めい)(れい)できる(たち)()にはない。



(なん)()()(おぼ)えのある(ひげ)(おとこ)



挿絵(By みてみん)



(かれ)らは(まち)西(にし)(がわ)()(はい)するユヴィルの(よう)(へい)



「トリン、(しず)かにして。」



「わたしに(めい)(れい)しないでっ。」



(てい)(こう)すれば(つぎ)はムネモスが()ぬわよ。」



トリンはそれを(あたま)()(かい)していても

(かん)(じょう)(たか)ぶり、(いき)(あら)(あら)しい。



()(えい)のグルグスとウントはもう(うご)かない。



わたしの身体(からだ)(きゅう)(げき)(ねつ)(うしな)い、

(つめ)たくなって()(ぶる)いした。



()()()れなさい。』



サンサの(こと)()(おも)()かぶ。



ユヴィルの(よう)(へい)(しゅう)(だん)(あい)()に、

わたし(たち)だけで(かな)うはずはなかった。



(あい)()(ほん)(しつ)()ること。』



(かの)(じょ)(こと)()()()(かんが)えて、

わたしは(ちい)さく(いき)()い、

できるだけ(おお)きな(こえ)(たず)ねた。



今日(きょう)はユヴィルは、(かく)れて()てないの?」



(だん)()()ねえなぁ。」



(よる)(やかた)()(えい)二人(ふたり)(ころ)せて、

 これで(まん)(ぞく)したのかしら?」



「サンサってのはお(まえ)か?」



「こんなに(うす)(ぐら)()()では

 (しょう)(めい)もできないわね。」



(かれ)らがサンサを『()(のこ)りの(きず)(もの)』としか、

(にん)()していないのは()かっていた。



フルリーンとの(そう)(どう)()()っていた

()(えい)のグルグスを(ひょう)(てき)にしての(けい)(きょ)



わたしは(くび)()げていた、

(ちょう)(そう)(しょく)がされた(ぎん)(かぎ)()()す。



(おび)(ひも)(むす)んだ(せい)(どう)(かぎ)(かさ)ねる。



「あなた(たち)()(えい)(ころ)してくれたせいで、

 これではユヴィルとの(しょう)(だん)

 ()()えてしまうわね。」



(しょう)(だん)だぁ?


 ()(むすめ)がよぉ、なんだその(かぎ)は。」



「マルフが()しがっている、

 (げき)(じょう)(けん)()(つな)がるものよ。」



「はぁ?」()()(おとこ)(ひく)(こえ)(ひび)く。



(とっ)()(てい)(あん)で、(なか)には(ちょう)(しょう)する(もの)もいた。



わたしは()()らさずに()げる。



(せい)(どう)(かぎ)(よる)(やかた)(とど)ければ、

 わたしの()(もと)(しょう)(めい)できる。


 この(ぎん)(かぎ)は、

 ユヴィルの()(ごと)()(かん)した()(しょ)(かぎ)よ。


 あなた(たち)で、(たい)(せつ)使(つか)いなさい。


 カミーリャの(はな)()(まえ)に、

 その(つぼみ)()としたくはないでしょう。」



わたしは(ふた)つの(かぎ)を、(あし)(もと)()とした。



挿絵(By みてみん)



「わたし(たち)をユヴィルの(もと)(あん)(ない)しなさい。


 (かれ)を、(こう)(しょう)(せき)(すわ)らせるつもりが

 あるのならね。」



「なにが(もく)(てき)だ?」



(ひげ)(おとこ)から()()らさずに、

わたしは(あご)()()す。



「ユヴィルの()わりが(つと)まるの?


 (こう)(しょう)(せき)(よご)したあなたに。」



(しゅう)()(よう)(へい)(たち)から、

(ひげ)(おとこ)()(せん)(あつ)まる。



わたしを(にら)み、(ちか)()(ひげ)(おとこ)



()(まえ)(いっ)(しゅん)(まっ)(しろ)になった。



(ひら)()(たた)かれたと()かり、

(ゆれ)れる身体(からだ)()(あし)(ちから)()れた。



(ほお)(はな)(はげ)しい(いた)みに()えながら、

それでもわたしは()(しょう)する。



(ひろ)いなさい。


 いまの()(こう)はそれで(ゆる)してあげる。」



(しゅう)()(よう)(へい)(たち)(ひげ)(おとこ)(うなが)すので、

(かれ)(した)()ちをして(かぎ)(ひろ)った。



(じじい)(れん)(らく)がつくまで、

 お(まえ)らは(やかた)には(もど)れねえぞ。」



その(こと)()()いて、

わたしは(あさ)(あん)()(いき)()く。



(けん)(めい)(はん)(だん)ね。」



(はな)()(くちびる)()れる。



()(ふだ)(かく)したまま、

(かれ)らを(こう)(しょう)(せき)()かせることができた。



わたしを(きょう)(かつ)する(もく)(てき)

(おとこ)から(たた)かれることが()かっていたら、

(いた)みを(かく)()した身体(からだ)

(はん)(しゃ)で、(こわ)()っていたに(ちが)いない。



(うわ)(くちびる)()れた(はな)()(くち)(ぬの)(おさ)えると、

(くち)(なか)(どう)()(あじ)(ひろ)がった。



(かの)(じょ)をこちらに(わた)しなさい。


 ()(ども)()げられるような

 ()(ぱら)いでもないでしょう。」



わたしはムネモスを()()んだ。



(ひげ)(おとこ)(あい)()(かの)(じょ)(かい)(ほう)される。



(ひげ)(おとこ)()()()たず、

また(どく)(だん)(こう)(どう)をすれば、

ユヴィルの(かお)をさらに(つぶ)すことになる。



()りかかるムネモスを(ひだり)(うで)()いて、

わたし(たち)(よう)(へい)(たち)(かこ)まれながら

(もく)(てき)(ちゅう)(けい)(じょ)()かった。




 ▶

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