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金貨の娘  作者: 之#u4e4b
第7章 群羊の空

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第7章 第3節 流水の渦(第2項)

挿絵(By みてみん)



(みずうみ)から(なが)れてきた(みず)(とう)西(ざい)(わか)れ、

(はば)(ひろ)(かい)(どう)(とう)西(ざい)(なん)(ぼく)(こう)()する()(しょ)

(もく)(てき)(みせ)があった。



「あの(かん)(ばん)のお(みせ)よ。」



サンサが(あご)(しめ)した(ひつじ)(かん)(ばん)



(まっ)(くろ)(かお)(しろ)()(ひつじ)



(かい)のバルコニーは

()(ども)(ふく)()される(じゅう)(たく)()ねていて、

(くら)(れん)()(づく)りの(ふる)びた(たて)(もの)だった。



「ひっ! なに! (いや)っ!」



(かん)(ばん)()()げていたらサンサが(さわ)ぎ、

わたしの(ほう)(はし)って(もど)ってきた。



(わす)(もの)でも()んだ?」



(ちが)っ、(ちが)うわよ。アレっ!」



(みせ)(いり)(ぐち)()()がる()(あし)(けもの)は、

(かん)(ばん)(えが)かれている(ひつじ)(うま)よりも(ちい)さい。



パンの()(いろ)をした(わか)(いぬ)が、

(ひざ)ほどの(たか)さがある(いし)(よう)(へき)(うえ)()ち、

(まる)まった尻尾(しっぽ)()ってわたし(たち)()(むか)えた。



挿絵(By みてみん)



(いぬ)だ。」



()まれるわよっ。」



(からか)うように()うサンサの

(けい)(こく)()()して(ちか)()ってみた。



(みせ)(まえ)(がい)(しょう)(すう)(にん)()っていても、

この(いぬ)(かの)(じょ)(たち)には(きょう)()(しめ)さない。



(くび)(かわ)(ひも)とロープで()(めん)(けい)(りゅう)され、

(いぬ)(いっ)(てい)(きょ)()()(じょう)(ちか)()けなかった。



(いぬ)はこの(まち)では、

(ぼう)(はん)(もく)(てき)()われる(どう)(ぶつ)だと

スーは()っていた。



(とう)()んでいた(ころ)のネルタでは、

(しゅ)(りょう)(もく)(てき)(いぬ)()うひとを(おお)()かけた。



(いぬ)はよく()(はな)使(つか)って()(あな)()つけ、

(あし)(あな)()り、()えて()(もの)()()す。



()(もの)(なが)(こう)(ふん)(きば)()んで()()めたり、

(りょう)()(まえ)(さそ)()()(ごと)(あた)えられる。



()んだ(にん)(げん)(たましい)がやって()(めい)(かい)には、

()()そうとする(もう)(じゃ)(むさぼ)()(ばん)(けん)

(しん)()(とう)(じょう)する。



(はん)(しん)(はん)(にん)(えい)(ゆう)(ばん)(けん)()()って、

()(じょう)()()した(ぼう)(けん)(たん)(のこ)っている。



(いぬ)()うひとは、

(しん)()(えい)(ゆう)(あこが)れがあったのかもしれない。



イオスは(ぜん)(しん)()(さか)()てて(うで)()()す。



()(かく)をしながら

わたしの(かた)(くび)(あたま)にまで(のぼ)った。



(いぬ)(さん)(かく)(けい)(みみ)()ててこちらに()け、

(つね)尻尾(しっぽ)()てている。



(あら)(いき)(づか)いで(こう)(ふん)する姿(すがた)が、

(ちい)さなイオスからは

()(かく)()えているのかもしれない。



わたしは(いぬ)(おどろ)かせないように(しず)かに(かが)み、

(かる)(にぎ)った()(はな)(さき)()した。



尻尾(しっぽ)()んでしまうわっ。」と、サンサ。



(あい)()(おこ)らせるという()()()(まわ)しでも、

こちらに(こう)()(しめ)して()った(いぬ)尻尾(しっぽ)

()みようがない。



わたしが()ばした(こぶし)に、

(いぬ)(くろ)(はな)(さき)(ちか)()けてから()める。



わたしに()びつこうと

(うし)(あし)だけで()(いぬ)(あい)()に、

(おく)(びょう)なイオスが(あたま)(うえ)(おこ)っている。



(いた)っ。」



(たた)こうと()ばして()ったイオスの(まえ)(あし)が、

わたしの(ひたい)()たった。



(いぬ)(くび)には(いた)()()げられて、

そこには()(まえ)()られている。



「ひと(なつ)っこい()ね。


 トゥルムスって、

 あなた(しょう)(ばい)(かみ)(おな)()(まえ)なの?」



(いぬ)にこの()(まえ)()けた(じん)(ぶつ)に、

(きょう)(よう)(ふか)さを(うかが)()ることができる。



(りょう)()(ほお)()で、(みみ)(うし)ろを()でる。



トゥルムスは()(まえ)()ばれると

(まる)まった尻尾(しっぽ)()って(よろこ)び、

()(めん)()(ころ)がるとわたしにお(なか)()せた。



(とう)()らしていた(ころ)には

(いぬ)(なが)めて(ほん)()んだ。



(ほん)によると(いぬ)()れを(つく)って()らし、

(しゅ)(じん)(たい)して(ちゅう)(じつ)(じゅう)(じゅん)(ちゅう)(せい)(しん)

(たか)(けい)(かい)(しん)()つ、と()かれていた。



(はじ)めて()れた(いぬ)が、

こんなに()(ぼう)()(こう)(ふん)する姿(すがた)()せるなんて

(ほん)からは(そう)(ぞう)もしなかった。



(ねこ)(くら)(けい)(かい)(しん)()せず、

どこを(さわ)っても(くち)()けて(よだれ)()らす。



()えるでも()くでもない、

(よろこ)びの(こえ)(あら)()(きゅう)(つづ)ける。



わたしもそれに(こた)えて、

(なか)(ぜん)()(ちから)()めて()でてやると、

(すな)(ぼこり)(かん)(もう)()(いぬ)()()った。



「わっ!」



イオスやアルは()(ぶん)(した)()(づくろ)いをし、

(さい)(きん)(まい)(にち)ブラシ()けをしていたので

これほど()()ったりはしない。



(ちか)くに()っていた(がい)(しょう)(たち)は、

()()(いや)がって(みせ)(さき)から(きょ)()()く。



「ニクスッ。()まれるわよ。

 グルグス。お(ねが)い。」



「え? オレ?」グルグスはなにもしない。



「これが()()ちいいの?


 (かん)(もう)()身体(からだ)(かゆ)いのかな?」



わたしは二人(ふたり)のことなど()にせず、

トゥルムスを()(つづ)けて()(げん)とも(おも)える()

(しゅう)()()()らした。



「サンサ、もしかして(いぬ)(こわ)いの?」



「こ、(こわ)いわよぉ…。

 (とう)(ぜん)よぉ。」



頭巾(フード)宝飾巾(ヴェール)(はさ)まれた()()らす。



(ふる)える(かの)(じょ)()(だん)()(ゆう)()せず、

グルグスの()(なか)(かく)れている。



「サンサ、(いぬ)(にが)()なんか。」



グルグスは(おお)きな身体(からだ)()らして

(わら)いを(こら)えた。



(おび)えたままサンサはわたしを(おとり)にすると、

グルグスを()して(てん)(ない)(はい)っていった。




 ◆




「ガロムっ!

 (いぬ)()うなんてわたしへの(いや)がらせ?」



「うおぉ! サンサ?

 なんだ(きゅう)にっ。」



(てん)(しゅ)らしき(くろ)(かみ)(おとこ)がサンサの(かお)()て、

(おどろ)いたのか(ちゅう)(ぼう)(おく)()った。



「ノーラー! (きゃく)だぁ!

 ノーラーぁ!」



「またなにか(わる)さしたの?」



()(おく)にあっても、(こころ)()たりがないわ。」



(とう)()(しゃ)なのに…。」



サンサは宝飾巾(ヴェール)(おく)(おこ)って()せる。



(やかた)(しょく)(どう)(ちい)さくした(てん)(ない)には、

()(かく)のテーブルに(なが)()()(なら)ぶ。



(ちゅう)(ぼう)には(てん)(しゅ)ガロムの(ほか)二人(ふたり)



(なん)(にん)かの(きゃく)(ろう)(どう)(しゃ)で、

キャシュクやサンダルが(よご)れている。



(きゃく)(たち)はノーラを()()(てん)(しゅ)に、

(さら)(かお)()けながらも(みみ)(かたむ)けて、

()(しゃく)()めて(いき)(ひそ)めて(かの)(じょ)(とう)(じょう)()つ。



頭巾(フード)宝飾巾(ヴェール)をして

(がい)(しょう)(おな)(かっ)(こう)のサンサの(にゅう)(てん)に、

(きゃく)(たち)(べつ)(きん)(ちょう)(いだ)く。



()(ぐち)では二人(ふたり)()(えい)が、

(しい)()(ふだ)(あそ)びに(きょう)じている。



(かれ)らは(おもて)(きゃく)()きをする

トゥルムスより(はたら)いていない。



「ここのテマッサは

 ヤゴウの(りょう)()()けないくらい

 おいしいわよ。」



「なんならヤゴウの(だん)()(りょう)()より

 おいしいですよ。」



ガロムが(むね)()って()う。



グルグスやヤゴウほどではないけれど、

(にく)()きの()(わか)(くろ)(かみ)(おとこ)



挿絵(By みてみん)



(ひげ)()(あと)()い。



「テマッサを4()ね。


 グルグスは二人(ふたり)(ぶん)()べるでしょ?」



グルグスが(のど)()らして(へん)()をした。



サンサはアルを()ろして、

(くび)()げたの(かわ)(ぶくろ)から(きん)()を2(まい)()()す。



「いくらするの?」



(ひと)つたったの5ルース。」



「パンと(さけ)()わせたくらい?


 ちょっと(たか)めなのかな。」



(がい)(しょう)にとっては(たか)(ほう)だけれど、

 (ひがし)(がわ)(ちゅう)(りゅう)(かい)(きゅう)には()(ごろ)()(かく)ね。


 (いち)()でも()えない(こう)(きゅう)(しょく)(ざい)調(ちょう)()(りょう)も、

 (おお)めに()()れてみんなで()ければ、

 こうして()(がる)()べられるのよ。」



(せつ)(めい)()けて(きゃく)(そう)(なっ)(とく)がいく。



わたしの(なか)(あい)(まい)だった

(ぶっ)()というものが()えてきた。



(ぼく)(しゃ)(さま)ってば、

 またこんな(みせ)(さき)

 (べん)(きょう)(かい)(ひら)いてるわねぇ。」



「ノーラ。(ひさ)しぶりね。」



「サンサこそ。

 こっちに()るのは(はる)()(らい)かしら。」



ノーラと()ばれた(あか)(がみ)()(じん)

わたしを()つめる。



挿絵(By みてみん)



()(たか)(かの)(じょ)()(あし)がとても(なが)()える。



(かの)(じょ)()(まえ)(やかた)でよく(みみ)にした。



メノーよりもずっと(まえ)()めたドレイプで、

()(しょう)(しつ)には(かの)(じょ)(ふく)がいくつも(のこ)っている。



――(ぼく)(しゃ)(さま)だって。



()(ぜん)レナタが(ぼく)(しゃ)のことを(いぬ)(けしか)けるひと、

(ゆが)んだ(かい)(しゃく)をしていた。



今日(きょう)もまた(せん)(こう)(かい)

 ()()(いん)()ってたのね。」



「この()(ちが)うわよ。


 (いぬ)()ったわね。

 わたしへの(いや)がらせかと(おも)ったわ。」



「あら。(いや)がらせをするつもりなら、

 ここには(しょう)(かん)()ってるはずよ。


 (くれ)(あい)(やかた)とでも()()けましょうか。」



(あお)(ぞら)(くっ)(せつ)する(こう)()(えい)(きょう)(あか)へと()わり、

(くら)くなる(そら)(よう)()をここでは(くれ)(あい)()ぶ。



ペタの()(だい)(りょう)(しゅ)(かた)るヘッペは、

ネルタとカヴァで()きた(なん)西(せい)(たたか)いを

(くれ)(あい)(せん)(そう)()んでいた。



「それに(いや)がらせなら、

 このお(みせ)(ぎょう)(しゃ)から(まい)(にち)()けてるわよ。


 (せん)(そう)()わっても

 お(にく)()(だん)()げられたし、

 (いや)がらせは()(けい)(ひど)くなったわねぇ。


 このお(みせ)がいまも(つづ)けられるのは、

 (かよ)ってくれるお(きゃく)さんのおかげよ。」



(はなし)()いていた(きゃく)(たち)(かの)(じょ)()かって

(さかづき)(かか)げたり、()()っている。



(いぬ)はガロムの(しん)(せき)から(もら)ったの。


 (ひつじ)(あつか)うのなら(いぬ)(ひつ)(よう)だもの。


 トゥルムスって()()でしょ。

 ガロムっぽくて。」



ノーラの(うし)ろで(てん)(しゅ)のガロムが()れている。



「あなたは()(ぶん)より(えら)いひとが

 ()きではないものね。」



「わたしはわたしよりも

 (すぐ)れたひとが()きなのよ。


 サンサとかね。


 それに(りょう)()って(かん)(かく)だもの、

 わたしは(かれ)()てないわ。」



サンサはノーラに、

()にしたテマッサの(りょう)(きん)()(はら)った。



しかし(かの)(じょ)(きん)()()()りを(こば)んだ。



「あなた、トゥルムスの()(ひど)いわね。


 (そと)(はら)ってきなさい。


 お(みせ)()だらけになるわ。」



「…あぁー。ごめんなさい。」



わたしは(みせ)()()(ぐち)(よこ)で、

キャシュクについたトゥルムスの()

(はら)()とす。



(となり)のトゥルムスも

身体(からだ)(ふる)わせて(たい)(もう)()ばした。



(みせ)(まえ)(もど)ってきた(がい)(しょう)(たち)が、

()()(とも)にまた(はな)れていく。



「トゥルムスとはまた、

 ()(みょう)()(まえ)()けたわね。」



(おす)だから(しょう)(ばい)(かみ)から()()けたの。


 ()でてあげると

 その()()れたものが(おう)(ごん)になるのよ。」



ノーラの(はなし)はトゥルムスに(かん)(けい)なく、

(しん)()(とう)(じょう)する()()れたものを

(おう)(ごん)()える(ちから)()(にん)(げん)(はなし)だった。



()べる(もの)(おう)(ごん)になるから、

 (しょく)()もできなくなる(おう)(しん)()だね。」



この(おう)(えだ)(いし)(おう)(ごん)して(よろこ)んだが、

()れた()(もの)(のみ)(もの)すらも(おう)(ごん)になり、

(むすめ)(ちょう)(ぞう)()えてしまい(みずか)らの(ちから)()いた。



「ただの(かん)(もう)()()いた()よ。」



(しょく)()(まえ)なのだから()(あら)いなさい。


 あなたもよ、サンサ。


 このお(みせ)()(かず)(すく)ない(きゃく)から、

 (しょく)(ちゅう)(どく)()すわけにはいかないもの。」



(やかた)()て4(ねん)もすれば

 もうすっかりお(みせ)(にん)(げん)ね。」



(きゃく)()けに(なが)(だい)(せっ)(けん)があり、

(せい)(けつ)(みず)(てい)(きょう)される。



ノーラは(くろ)(よご)れた()()(ぬの)()て、

(あたら)しい(ぬの)(よう)()した。



「ガロムの(うで)()いのよ。


 エルテルにお(みせ)()さないかって、

 タルヴォに(ちょく)(せつ)(さそ)われてるのよ。」



「タルヴォの(よく)()けて()えるわね。」



(りょう)()(うで)ではガロムには()けても、

 (しょく)(ざい)()()だけは()いのよ、わたし。」



「あなた(たち)なら(だい)(じょう)()よ。」



サンサに()われて(くち)(もと)(ゆる)めるノーラは、

()(あら)うわたしを()()ろす。



「あなた、フランジでしょう?


 サンサを手伝(てつだ)いなさいな。」



「…はい。」



(せっ)(けん)()って(あわ)()ててから、

サンサの(しろ)(ほそ)(ひだり)()()(くび)まで(あら)う。



サンサは(やかた)では、(かべ)(そな)()けた

ブラシを使(つか)って一人(ひとり)()(あら)っている。



わたしがサンサを手伝(てつだ)うのは、

(かの)(じょ)()った部屋(へや)(とびら)

()ける(とき)(かぎ)られる。



それでもわたしは(かの)(じょ)(みぎ)()ではない。



(ゆび)のあいだもよ。


 (つめ)はそっちのブラシを使(つか)って。」



「あの()(くち)(やかま)しいでしょう。


 (むかし)からあぁなのよ?」



()こえてますよぉ!」



ノーラに(しか)られながら

わたしに()(あら)われても、

サンサは(さい)(かい)(くち)(もと)(ゆる)ませていた。




 ◆




()れた()()()えると、

わたし(たち)(おく)(せき)(あん)(ない)された。



()()(いん)()(たち)はみんな、

 ノーラに(あこが)れて(よる)(やかた)()るのよ。」



()(ぞく)(こん)(いん)(むす)んだって、

 (うわさ)になってるのよねぇ。

 ふふっ。」



サンサの(こと)()(わら)うノーラでも、

(あい)()(てん)(しゅ)、ガロムは()(ぞく)には()えない。



ノーラの()(きょ)はサンサと(おな)じで(ひん)(かん)じる。



「これがテマッサよ。


 (やかた)()べたことあったかしら?」



トゥルムスの尻尾(しっぽ)のような(しろ)(いろ)の、

(ほん)(かたち)をしたパン。



(はん)(とう)(めい)(どろ)()えるソースがパンに()れ、

(はさ)まれた()(あつ)(にく)()()ている。



挿絵(By みてみん)



ノーラは(べつ)()(ざら)を、

アルとイオスの(まえ)()く。



「あなた(たち)にはこっちね。」



イオスは(こう)()(もら)ったソースのない(にく)と、

(こま)かくされたパンを(うな)りながら(かじ)りついた。



アルは(こし)()としてその(よう)()(なが)めている。



わたしもパンを()にして(くち)(ひら)いてみても、

パンが(あつ)くて(にく)(はし)しか(かじ)れない。



「この()(くち)には(おお)きかったね。


 (つぶ)して()べるのは(あさ)ましいわよね。」



パンは(つぶ)さずに()べなければ、

この(やわ)らかな(しょ)(かん)(うしな)ってしまう。



(くち)()れても(けもの)(しゅう)のない(にく)は、

(かる)()んだだけで(くず)れる。



(やかた)()てくる(よう)(にく)とは(ちが)って、

(あじ)(とく)(ゆう)(くせ)がなくて(やわ)らかく、

()むと(くち)(なか)()けていく。



(はん)(とう)(めい)(つや)のある(かっ)(しょく)のソースは、

(あま)(から)くてわたし(この)みの(あじ)がする。



(かす)かに(ふく)まれる(こう)(しん)(りょう)が、

(あと)から(くち)(なか)()いて(ひろ)がった。



今朝(けさ)()(ひつじ)()(はい)ってね。


 お(にく)(くせ)(ひか)えめで

 ()みやすいでしょ。」



(にく)(はい)った(くち)

()(かく)して()(しゃく)(つづ)けながら、

ノーラに()かって(ふか)(くび)(たて)()る。



(すこ)(あさ)ましい(こう)()だった。



(ひょう)(めん)(うす)(かわ)のある()しパンの(だん)(めん)は、

ソースが()みて(あじ)(しょっ)(かん)()わり、

()(すす)めると(しょく)(ざい)調(ちょう)()する。



()()じて(あじ)()みしめると、

ソースや(にく)(じゅう)(なか)にペタの(はち)(みつ)

(ふく)まれていることが()かってきた。



(たの)しく()べるわねえ。


 サンサの(かく)()?」



「おかしな(りゅう)(げん)(ひろ)めないでよ。」



「ナルシャの、ニクスよ。」



「ニクス?

 (よる)()(がみ)()(まえ)ねぇ。


 あぁ。ふぅん。」



()(まえ)()くと(かの)(じょ)は、

わたしの(しゅつ)()について

(たず)ねることはしなかった。



「また(みょう)()(ひろ)ってきたわね。


 今日(きょう)はレナタは?

 ()(うわさ)(みみ)にしたわよ。」



「あの()はアイリアの(こう)(ぼう)(かよ)

 (せい)()になったわよ。」



()(じつ)なのね。


 (こん)()わたし(たち)()(ぞく)(しょう)(ぞう)()

 ()いて(もら)おうかしら。」



(たか)いわよ。」



サンサがテーブルの(うえ)に、

()りずに(きん)()を2(まい)()く。



ノーラは(あきら)めて(きん)()を1(まい)だけ()にして、

もう1(まい)()(かえ)した。



「これでお(ねが)いね。」



(かの)(じょ)(きん)()をサンサに(しめ)す。



「この(まえ)スーを(いち)()()かけたわよ。


 あなたも(たい)(へん)でしょ。


 こんな二人(ふたり)()()(がかり)なんて。」



(ほん)(にん)(まえ)にして()えて(しゅ)(こう)せず、

()(しゃく)(つづ)けて(へん)(とう)にした。



「おがぁざまぁーん。」



(みせ)(おく)(かい)(だん)から()(ども)()(ごえ)(ひび)いた。



「あら、ハルルが()きたわ。


 ()りといでぇ! ハルルゥ。」



(かい)(だん)()りてくる(ちい)さな(あし)(おお)きな(でん)()



(かお)真赤(まっか)にした(あか)(がみ)(よう)(じょ)



挿絵(By みてみん)



(ほう)(せき)みたいな(かがや)きをした、

(くろ)()がわたし(たち)()た。



「ハルルも(おお)きくなったわねぇ。」



ノーラに()かれて()()むハルルは、

アルとイオスに(さわ)ろうと()()ばす。



「はいはい。(さわ)りたいのね。


 ニクス。お(ねが)いするわね。」



テマッサを()べていたわたしに、

ノーラに()(ぶん)(むすめ)()()けてきた。



「え…なにを?」



わたしではなくハルルに()()り、

(せっ)(きゃく)をするノーラ。



「いたずら()きは()わらないわね。」



「ここに(すわ)ってて。」



わたしは(おさな)()(こし)()いて、

(なが)()()(となり)(すわ)らせた。



「あなた、かよわいわねえ。」



ハルルに()(なか)()られた(しょく)()(ちゅう)のイオスは、

()(さか)()てて(うな)りながらも()(つづ)ける。



(しょく)()(さまた)げてはダメよ。」



イオスがハルルを(たた)いたり、

()みついたりしないか(しん)(ぱい)になる。



「ノーラはメノーより(まえ)の、

 1(ばん)部屋(べや)のドレイプだったのは

 ()ってるわよね。


 ネルタから()()(ぞく)(むすめ)でね。


 ()()かったから()ったのよ。


 ()(だい)()えない()で、

 (ぎん)(こう)()やあのユヴィルも

 ()(がみ)(おく)ってきたほどよ。」



()(ども)()()たから()めさせられたの?」



「ガロムを()れて()めていったのよ。


 (ねっ)(しん)なお(きゃく)さんなんて()()きもせず、

 ガロムの(りょう)()()()てにした(こん)(いん)

 ルービィも(なげ)いてたわね。」



「ルービィには(わる)いと(おも)ってるわよ。」



()ってノーラは

()げたてのお()()()ってきて、

(くし)()して()(ぶん)()べる。



「あっ! ハルゥもぉ!」



「ポッポの()()()ね。」



(よる)(やかた)()される(こん)(さい)のポッポは、

(ふと)るという()(ゆう)(ちゅう)(ぼう)では(にん)()がない(しょく)(ざい)



挿絵(By みてみん)



ポッポは()してから(つぶ)し、

ブレズの(こな)()ぜて()いたものは、

(しょっ)(かん)()くてお()()()すと(この)まれる。



デーンが(とく)()とするお()()で、

()(とう)()ったり(はち)(みつ)使(つか)えるのも

(にん)()()(ゆう)(ひと)つだった。



この(みせ)でのポッポの()()()は、

(かわ)()かずに(ほそ)(なが)()って()げ、

(あじ)()けは(つぶ)(あら)(しお)()っただけ。



ノーラに(うなが)されてわたしも欠片(かけら)(くち)にする。



――(しお)だけなのは(ろう)(どう)(しゃ)(ため)かしら。



(さい)(しょ)(から)いと(おも)えた(あじ)()けも、

ポッポ()(たい)(かん)()(きわ)()っておいしい。



(かわ)()いているのも、

(しょっ)(かん)(へん)()があって(くち)(なか)(たの)しくなる。



ヤゴウの(りょう)()にはない(ごう)(かい)さを(かん)じさせる。



ハルルもポッポを()(ぶん)()(くち)(はこ)び、

(あか)(やわ)らかな(ほお)(ふく)らませた。



「あなたはドレイプになるの?」



テマッサを()()えたわたしに、

(かの)(じょ)()(もん)()げかけた。



「いいえ。

 ドレイプにはなりません。」



ノーラはわたしの(へん)(とう)()()(ひら)いて、

(おどろ)いた()()りを()せてから

サンサの(かお)()(わら)う。



「ノーラはドレイプになりたかったの?」



「あははっ。

 そんなわけないわよっ。」



(かの)(じょ)(うつく)しい(こえ)(わら)うと、

(きゃく)(たち)()(せん)()(なか)()しに(かん)じる。



「こんな()()()げて、

 (もの)(どう)(ぜん)()られて(ぜつ)(ぼう)したものよ。


 ドレイプもやってみると(はな)やかだし、

 ()ぎてみれば(いや)(きゃく)よりも

 (まぶ)しい(おも)()ばかり。


 ネルタより使(つか)える(みず)(ほう)()にあるし、

 (さかな)(すく)なくても()(もの)はおいしい。


 (とく)にガロムの(りょう)()には(なん)()(すく)われたわ。


 (よる)(やかた)(なか)なら

 (ぼう)(りょく)()るわれる(しん)(ぱい)もない。


 (いろ)(いろ)()()(ほん)()めたから、

 (にが)()(せい)(ぶつ)(かい)(たい)(べん)(きょう)になったわ。


 あ、(べん)(きょう)(かい)はまだやってるの?」



(こん)()からニクスが(おし)えるのよ。


 ノーラも(せい)(ぶつ)(かい)(たい)で、

 ()からないことがあれば

 この()()きなさい。」



「んふっ!」



サンサが()()()()けて、

わたしは(あわ)てて(くび)(よこ)()る。



ポッポの()()()(のど)()まりかけた。



「レナタといい、(かしこ)いわねえ。


 わたしが(やかた)()(ころ)は、

 ルービィやサンサの(たくら)(どお)りに(はたら)くのは

 (いや)だったものよ。」



「わたしも(おな)()(けん)よ。」



ノーラの()(けん)(しゅ)(こう)して()()(しめ)す。



「わたしも(おな)じよ。

 (だれ)かの(たくら)みで(はたら)くのなんて。」



この()のサンサもなぜか(どう)調(ちょう)する。



「ハルルもっ! ハルルもぉ!」



(かい)()()ざりたがった

ハルルの(こと)()(わら)いが()きた。



「ふふっ。

 サンサ、どう?

 いまのわたし。」



(ほこ)りに(おも)うわ。」



サンサが(やわ)らかい(ひょう)(じょう)()せて(わら)う。



「でもこれはサンサに(おそ)わったのよ。


 ルービィにも(かん)(しゃ)してるわよ。

 ありがとう。」



ノーラが(ふか)(あたま)()げると、

ハルルが(かの)(じょ)頭巾(フード)()でた。



「ハルル。


 そんな()(さわ)ったら、

 ノーラの()(れい)(かみ)(よご)れてしまうわよ。」



ハルルを()()げて

わたしの(ふと)(もも)(うえ)(すわ)らせると、

イオスが()いて(こう)()してきた。



「ノーラもガロムも(いち)()

 (やかた)(かお)()せなさい。


 あなたの(きら)いなわたしの(たくら)みよ。


 ヤゴウもガロムに(りょう)()

 ()べさせたがってたわ。」



(たの)しみにしてるわ。


 ニクス、あなたもまたお(みせ)()てね。」



ノーラと(やく)(そく)はできなかった。



それでもわたしは(くび)(たて)()って、

いつか(おとず)れるその()(たの)しみにした。




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