第20話:狂気のエコー・チェンバー ~大動脈灰滅、逃げ場なき集団轢死のメロディ~1
綺麗事で塗り固めていた仮面を一瞬で剥ぎ取られ、最も醜い欲の皮を完全公開処刑される。霞ヶ関の官庁ビルが崩落を始めたその時、大岩山から解き放たれた電磁波ウイルスは、東京の大動脈・満員の通勤電車を標的に定めた。車内に響き渡る高周波のノイズとともに、乗客全員のスマホ画面が赤黒く明滅。エリートビジネスマンの幼女蹂躙ログ、清楚な女性の強欲な本音、身内への性的加害衝動が次々と公共放送のように車内へ強制共有されていく。絶望の過呼吸で一人、また一人と発狂のスイッチを押し込まれ、血飛沫が窓を染める狂気のエコー・チェンバー。だが、本当の地獄は、この狂い果てた列車が滑り込もうとしていた、乗車率200%の巨大ターミナル駅のホームで待っていた――!
霞ヶ関の官庁ビルが完全灰滅へ向けて崩落を始めたその時、
大岩山から解き放たれた電磁波ウイルスの怨念は、すでに次の「極上の苗床」を見出していた。
標的となったのは、夕暮れの超過密ダイヤを狂ったように走り続ける、東京の大動脈――満員の通勤電車である。
ウイルスのハッキングは、個人のスマートフォンという悪魔の端末を介して、数千、数万の脳細胞へ同時に牙を剥いた。
キィィィィィィィィィィィン!!
車内に響き渡る、鼓膜を引き裂くような高周波のノイズ。乗客たちが一斉に耳を押さえた瞬間、全車両のディスプレイと、乗客全員のスマートフォンの画面が、禍々しい赤黒い色彩に明滅した。そこに表示されたのは、人間という生物が「世間体」と「綺麗事」の裏に隠し持っていた、最も底深く、最も醜悪な、本音の脳内ログと性の生体データだった。
「ひっ……あ、あああああッ!!」
ある車両で、エリート風のビジネスマンが白目を剥いて泡を吹いた。
画面に映し出されたのは、彼が「子煩悩な理想の父親」を気取りながら、
裏ではSNSの裏アカウントで何十人もの小学生の幼女を値踏みし、
金と権力で肉体を玩具のように蹂躙し尽くしてきた狂気的な加害衝動の動画ログだった。
隣の車両では、清楚な身なりをした女性の「脳内報酬系の異常分泌データ」が公共放送のように鳴り響く。
《真面目な男なんて ATM の養分(笑)。強い浮気相手と避妊なしで狂ったように貪り合ってる時が、脳汁が一番出て最高に気持ちいいのよ笑 男は騙されて耐えてろ》
女も普段はゴム着用を望んでくるが、こと、強いアルファオスと呼ばれる男なら、自分からゴムなしを望んでくるのは本当のことだった。
彼女が普段、愛するパートナーに見せていた笑顔とは似ても似つかない、ただ純粋な強欲と性への異常な執着、そして他者を家畜のように見下す冷酷な本音が、超高画質の生々しい音声付きで車内全体に強制パージされていく。
逃げ場のない密室で、お互いの最もおぞましい「脳の深淵」が強制共有されていく。
それは、社会的生命の処刑宣告に留まらない。綺麗事で塗り固めていた仮面を一瞬で剥ぎ取られ、最も醜い欲の皮を身内に、そして見知らぬ他人に完全公開処刑された乗客たちは、恐怖と絶望の過呼吸によって脳圧が限界突破し、一人、また一人と「発狂のスイッチ」を押し込まれていった。
「いやぁぁぁぁ! 見ないで! 私の裏アカを見るなぁぁぁッ!!」
「ぶっ殺してやる! 俺の脳内を、これ以上覗くんじゃねえぇぇッ!!」
また別の車両では吊り革を掴んでいたエリート風の男が白目を剥いて泡を吹いた。画面には、彼が実の娘や身内に対して抱いている、おぞましい性的加害衝動の脳内シミュレーション映像と、それを実行に移すためのドロドロとした異常性欲データが、実名付きの超高画質で車内全体に共有されていたのだ。
その隣に立っていた清楚な女性会社員の画面から、彼女が遺産や保険金目当てで肉親をじわじわと精神的に追い詰めて自殺へ誘導した、強欲に塗れた脳内記憶と、その瞬間に脳内麻薬を異常分泌させてほくそ笑んでいた醜悪な生態データが、公共放送のように鳴り響く。
「違う、これは私じゃない! 私の脳を見るなぁぁぁッ!!」「ぶっ殺してやる! お前ら全員の目を潰してやる!!」




