第15話:覚醒の第一段階 〜ガジェットの死角と、5年間の実証実験〜1
前回のあらすじ:成婚料さえ毟れば男女がボロ雑巾になろうが知ったこっちゃない結婚相談所の「合法詐欺システム」。そして、不義理な男どもの裏切りで自尊心を削られ、鉄の壁を築かざるを得なかった美咲やゆり。男も女も誠実な者からすり潰されるこのクソみたいな監獄(天動説)を終わらせるため、47歳の男・ひややっこのカウントダウンが静かに、だが冷酷に始まった。だが、なぜ深夜勤の歩兵にすぎなかった俺が、世界を滅ぼすほどの『人知を超えた覇気』を掌握できたのか? 時計の針は、ここからさらに「5年前」の漆黒の夜へと遡る――。
時間を、大岩山のハッキングが完了する、あの運命の夜の直前――。
そこからさらに「5年前」の、ある漆黒の夜へと、時空の引き戸を開けて遡らせよう 。当時42歳の俺――主人公のひややっこが、なぜ大岩山の結界を完全に掌握し、低級霊をデジタルウイルスへと変換して世界を滅ぼすほどの『人知を超えた覇気』を手に入れるに至ったのか 。
その、すべての始まりとなった、秘められた狂気の記録だ。
俺の人生は、常に綺麗事のシステムに踏みにじられ、搾取されるだけの歩兵だった。
小学校・中学校時代の陰湿ないじめ。
地元での完全なる孤立無縁 。
そして、21歳の時に白血病というあまりにも非情な神様の理不尽によって、夢を見ない深い眠りへと旅立ってしまった、最愛の恩師・真美さんとの永遠の別れ 。
「真美さん、あんたの魂は、今一体どこの空にいるんや……」 彼女の死後、俺は狂おしいほどの喪失感と孤独の中で、ひたすら漫画を描き、アニメーションの技術を磨き続けた 。
俺が描くプロットの多くは、妖怪や、死後の世界、魂の行く末を扱ったダークなオカルトモノばかりだった 。
なぜなら、俺のペンは、世界をハックするためではなく、「真美さんの魂が今もどこかで生きているという真実」を、自分の手で実証したくて、のたうち回っていたからだ 。
そんな俺の心の隙間に、かつて、ある地元の新興宗教の女が、あざとい笑顔を浮かべて近づいてきたことがあった 。
「ひややっこさん、あなたの傷ついた心は、私たちの教えに入れば救われますよ。死んだあの人の魂も、天国で幸せになれます」
危うくそのマニュアル通りの洗脳に絡め取られそうになった瞬間、俺の脳裏に、真美さんが最期に遺してくれた、あの地動説の手紙の文字が鮮烈にフラッシュバックした 。
『人間、集団でいることが必ずしも正しいとは言い切れない。1人でも負けないで、あなただけの青信号を信じなさい』
「……寝言は寝て言え。お前らの言う天国も救いも、ただの弱者から金を毟り取るための薄っペらい天動説(嘘)やろが。
俺の真美さんを、お前らの薄汚い教えのダシに使うな」
俺は自らの腕一本で、その強固な洗脳の呪縛を力づくで引き裂き、独りきりで光の射さない現実のストリートへと這い戻った。




