番外編17:『深層の格付け(マーケットシェア) 〜欺瞞の盾を構えた世俗の男女と、聖域で完成した二人の合意契約(リアル)〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中のデータ分析や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
二、 紆余曲折のタイムライン ── 聖女の仮面が剥がれるまで
最初から、あの比叡山の暗闇で排泄物を貪り合うような究極のプレイ(契約)が機能していたわけではない。
世界崩壊の当日、大岩山のひややっこが放ったウイルスのノイズによって地上のすべてのインフラが一瞬で機能停止し、命からがら一真のお堂へと逃げ込んだばかりの頃、二人の防衛線はまだ強固に閉ざされていた。
メグミは物心つく前からハメられていたキリスト教の生体監獄(環境の檻)のプログラミングを必死にホールドしようとしていたし、理央もまた、スペックとヤリチンマニュアルの残像を引きずっていた。
引かれる恐怖、拒絶される過酷を超えて、二人があの究極の合意に至るまでには、日常的な過酷の中で磨き上げられた、決定的な三つの紆余曲折のステップがあった。
【第1段階:生存リスクの共有(最初の一ヶ月)】
水洗トイレもトイレットペーパーも消滅し、すべての綺麗事の文明が更地になった比叡山。
メグミにとって「排泄」は、誰にも見せてはならない聖女の仮面を最も脅かす、底冷えするような恐怖(恥辱)だった。
最初は隠れるようにお堂の裏の草むらで用を足していたが、水もなく、紙もなく、衣服も汚れていくという限界値を脳内アラームが検知したとき、彼女の精神は極限のパニックを起こしてフリーズした。
その絶望を透視した理央は 、「お前の汚さは、俺がすべて引き受けてやる」と、自らの生身の手で彼女の汚れを拭い、処理する側に回った。
ここでメグミは、理央という男が口先だけの綺麗事のモブ男ではなく、自分の最も醜い現実を命がけで支えてくれる『本物の助け手』であることを、体温をもって学習した。
【第2段階:無意識の反転(二ヶ月目)】
朝昼、二人は一真の元で必死に大八車を引いて泥を歩み、畑を開墾し続けた。
メグミは誰よりも真面目に、利他の聖女として機能して自分を殺し続けていたが、その脳細胞の裏側では、抑圧への反動(強烈なサディズムのエネルギー)が限界値を超えて膨れ上がっていた。
引かれるかもしれないという最強の防衛線を超えられたのは、理央への絶対的な安心感(全肯定される信頼)が確立されたからだ。
ある夜、彼女の脳内で「私はすべてを奪われたのに、なぜ理央はこんなに完璧な男でいられるの?
この全能のナンパ師を、私の足元で完全にひれ伏させ、私の生活を維持するためだけの無機質な家具(便器)に変えたい」という、神の抑圧の裏にあった真の無意識が、初めてカミングアウトを迎えたのだ。
【第3段階:阿闍梨のチェックメイト(三ヶ月目)】
夜のしじまの中、理央を自らの聖書を置きコーヒーとお菓子を楽しむための「生身のローテーブル」として支配し、そこからプルッと身体を震わせて「理央、おしっこがしたくなっちゃった……そして、ごめんなさい、うんこもしたくなっちゃった。家具から今度は便器になって私のすべて受け止めて」と命じるシステムを発動させたとき 、二人の間にはまだ罪悪感という迷いのノイズがあった。
特にメグミは、生まれた時からの宗教のプログラミングのせいで、「自分は汚い獣に成り下がってしまったのではないか」という恐怖に震え、2人だけの暗闇の世界(合意)だけでは、その羞恥心の防衛線を完全に突破するほどには腹が座っていなかったのだ。
世の中にはこの2人だけの世界を、自分たちだけで全肯定し、維持していける強者もいるが、
メグミにとっては、自分たちのこの歪んだ愛の質量を、無条件で赦し、全肯定してくれる絶対的な盾(免罪符)を、彼女の魂は狂うほど渇望していた。
その防衛線の揺らぎと、人間の業の深さを、生き神である一真はすべて冷徹に見抜いていた。
阿闍梨は顔色一つ変えず、密教の最高峰の方程式である『煩悩即菩提』の御言葉を持って、二人の前に進軍した。
「お前たちがやっていることは狂気ではない。文明のシステムが灰滅したこの過酷な新世界において、お互いの生存リスクすらも二人の合意だけで100%自給自足し、処理し切っている最強の生存戦略だ。お前たちは本当の男と女になったな」
自分が最も信頼し、畏怖する最高権威の友(導き手)から「お前はそれでいい」と100%の全肯定の承認データを与えられた瞬間、メグミを縛り付けていた最後の檻(神の抑圧)は完跡に更地へとリセットされた。
人は、絶対的な理解者に全肯定されたとき、どれほど臆病な足軽であっても、あらゆる迷いのノイズをロスカットして、1%未満の無敵の境地へと到達できる。
かつてのひややっこにとって、真美がそうであったように。
阿闍梨の一喝によって、二人の夜の契約は、後ろめたい変態行為から「神へ感謝を捧げるほどの聖なる儀式」へと完全に固定されたのだった 。




