番外編16:『終焉のツィゴイネルワイゼン(完全チェックメイト) 〜灰滅する京都タワー(ソドム)と、比叡山頂の聖域で“生体家具(器物)”に転生した全能ナンパ師の純愛〜』7
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
朝昼は共に泥にまみれて畑を耕し、大八車を引いて共同体を支え。夜は、人間の尊厳の極限(水分と固形物の排泄処理)すらも、二人だけの絶対的な合意の愛で融かし合う。
夜の冷たい静寂が明けていくお堂の朝、自らの手で大八車の梶棒を力強く握り締めながら、理央は昇りゆく朝日の光の中で、心の中のすべてのノイズを消し去り、静かに、しかし圧倒的な質量の感謝のログを自らの魂に刻みつけていた。
(……メグミ。そして、一真さん。俺は、お前たちとこのストリート(地獄)で知り合うことができて、本当に良かった──)かつて人をハックして消費することしか知らなかった全能のナンパ師は、今やもうどこにもいない。
(俺の磨き上げてきた工学のすべてを等価交換(評価)し、本当の男にしてくれた一真──。
あの人は、この崩壊した世界の荒野を生き抜くための、俺の生涯の友であり、絶対的な魂の導き手だ。
そして、俺のすべての傷痕を無条件で包み込んでくれたメグミ。
お前が俺を必要としてくれる限り、俺はどんな過酷が来ようが、この肉体のすべてを賭けて、お前の生活(命)を支え切る『最強の家具(足軽)』であり続けてやる)
そして理央は、ふと、この極限のチェス盤を裏から動かした因果の糸に思いを馳せる。
そもそも、俺がキリスト教の相談セミナーという全くの未知の海にエントリーし、こうしてメグミという本物の体温に出会えたのは ── あの夜、電話口でニヒルに笑いながら、俺のヤリチン工学を完跡に逆ハックしてくれたあの世界が滅びる前の友、ひややっこの言葉のトゲがあったからだ。
神崎理央はまだ知らない。この世界を一瞬で更地へとハメた悪魔のデジタルウイルスの創造主こそが、他ならぬその「ひややっこ」であるという、驚天動地の裏ログを──。
(おい、ひややっこさん。あんたの放った『環境の檻』の警告のおかげで、俺は最強の牙を捨てて、本当の愛にたどり着けた。感謝してるよ。
……だけど、このすべての通信も、中央システムも壊滅しちまった地獄のような世界で、あんたは一体どうしてるんだ?
あんたほどの圧倒的な知性と常識を持った男だ。
どこかのストリートで、ニヒルに笑いながら、この破滅した世界を誰よりも冷徹に生き抜いているんだろうな──)
姿の見えぬ「同盟の主」の無事を祈る、神崎理央の剥き出しのパッション(体温)。
スペックも資産もすべて消滅した更地の世界で、無敗のナンパ師だった男と、孤独だったクリスチャン女子は、比叡山の大行満阿闍梨という生涯の友の祝福を胸に。
そして、この世界のどこかできっと生きているはずの友に思いを寄せながら、嘘のない本当の「生命の体温」を響かせ、どこまでも対等に、この新世界の荒野をどこまでも力強く進軍し続けるのだった。
(神崎理央・メグミ編 ── 完)




