番外編14:『聖域の異教徒ハック(チェックメイト) 〜嫉妬に狂った足軽(モブ男)のバッシングと、世界崩壊前夜(ラストナイト)の比叡山進軍〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
理央の生身の本音によって、自分たちが信徒を縛り付けていた「綺麗事のマニュアル」の欺瞞をすべて暴かれかけたため、必死に『形式や手続きの鎖』をハメ直して主導権を奪い返そうとする牧師。
画面の向こうで男たちが一斉に大義名分の盾を構えて理央をバッシングし、牧師がルールを熱弁するのを聴いているメグミの瞳の奥は、これまでにない強烈な『冷徹な絶望』へと反転していた。
(……ほら、やっぱりこの人たちは、どこまでも卑怯で、去勢された臆病な怪物だ……。私を本当に一人の生身の人間として見て、孤独を救おうとしてくれたのは、クリスチャンでも何でもない、マニュアルの鎧を全部脱ぎ捨ててくれた神崎さん(理央)だけなのに。自分たちのプライドが傷ついた途端に、みんなで束になって教会のルールだの、信仰スペックだのの言葉の凶器を構えて、彼を排除しようとする……。なんて醜くて不潔な温室の監獄なんだろう……!)
モブ男たちが理央を攻撃すればするほど、メグミの心は相談所(教会)から100%退場し、理央のチェス盤(生身の信頼)の側へと完全に引き寄せられていくのが分かった。
その時だった。ZOOMの画面のグリッドが突如として激しく明滅し、システムアルゴリズムを力技で逆ハックした悪魔のシグナルとともに、もう一つのアカウントが電撃参戦してきた。
画面に現れたのは、黒いユナイテッドアローズのセットアップに身を包んだ47歳の男 ── ひややっこだった。
「な、何だお前は……!?」突然の不法侵入者に牧師が声を裏返らせる。
だが、ひややっこは冷たい目を微塵も動かさず、液晶画面の向こうの聖職者たちへ、最高峰の神学のファクト(トゲ)を容赦なく突き刺した。
「おい、去勢されたヘタレなオスども。相手がクリスチャンではないという『記号』の檻にハメて、一対一の生身の進軍をロスカット(排除)しようとするな。
あなたたちの崇める聖書のコリント人への手紙第一、7章を読め。
『なぜなら、不信者の夫は妻によってきよめられており、また、不信者の妻も夫によってきよめられているからである。もしそうでなければ、あなたがたの子は汚れていることになるが、実際はきよいではないか(コリント第一 7:14)』」
ひややっこの、伏見の底冷えする質量を帯びた声が、ZOOMの宇宙を完全に支配する。
「さらに重ねて言っておこう。『妻よ、あなたが夫を救いうるかどうか、どうしてわかるか。夫よ、あなたが妻を救いうるかどうか、どうしてわかるか(コリント第一 7:16)』
彼女がその真っ直ぐな労働への敬意(体温)を持って、この神崎という男を救いうるかどうか、お前たちのその臆病で浅はかな脳細胞でどうして勝手に否定できるというのだ? 資格だの教理だのという綺麗事の盾を構えて、人間の生身の信頼を圧殺しようとする……。正気ではない。実に愚かな偽善だ」




